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異世界戦記  作者: 日本武尊
第一章
5/79

第四話 陸軍と海軍の状態



 その後陸軍の工兵部隊が送り込まれて建造物は大幅な改装が施され、同時に鉄道連隊によってレールを建造中の前哨要塞基地まで敷かれた。



 ちなみに、あの彗星に乗っていたのは予想通り江草少佐であったが、無理な機動をしたせいで機体に損傷が見られたらしく、開発部の人間にこっぴどく説教を受けたとか何とか。

 しかし調整が完全ではない試作機でピンポイントに急降下爆撃を成功させる方も化け物染みているが・・・・



 あの時の戦闘での負傷者は19名で、死者は8名であった。

 魔物の大群の不意打ちを受けた上でこの被害だとむしろ幸運と呼ぶべきだろうが、やはり部下が死ぬのは気持ち良いものではない。

 ゲームと丸っきり違うと言うのは、この二年間で嫌と言うほど味わった。



 ちなみに陸軍の増援部隊が早く到着したのは、辻の命令で増援要請の前に出撃準備をしており、増援要請があったと同時に出撃をさせていたという。



 海軍の爆撃隊の到着も、ちょうどその時江草少佐率いる急降下爆撃隊が訓練中であり、実弾による投下訓練を行おうとした時に増援要請がありってそのまま攻撃に向かわせていたらしい。

 ってか、模擬弾でも十分だと思うんだが・・・・





 ――――――――――――――――――――――――――――――――





「……」


 俺は重たい目蓋を開けて目を覚ます。


(思い出しているう内にいつの間にか眠っていたみたいだな・・・・)


 内心呟き、椅子から立ち上がりながらあくびをして窓を見ると、外は真っ暗で基地や軍港、市街地の電灯の光が辺りを照らしている。


 その光景を見ていると、執務室の扉がノックされる。


「入れ」


 入出を許可すると「失礼します」と二人の男性が入ってくる。


「海軍及び陸軍技術省の者です。新兵器に関する報告書を持って参りました」


 二人の内一人が代表して言うと、手にしている陸海軍の報告書を執務机に置く。


「海軍は局地戦闘機の開発状況の報告書を出したじゃないか?他にもあったのか?」


「はい。先に揃っていた局地戦闘機の開発状況を先に報告しました。ですがその他の軍艦の項目がまだ揃ってなかったので、ご報告が遅れて申し訳ありません。ですがこれで揃いました」


「そうか。まぁ、ごくろうだった」


 執務机に向かい、まず陸軍技術省の報告書を手にして表紙を捲り、目を通す。


(『三式中戦車 チヌ改』の製造を開始。随時各部隊へ配備予定。『五式十五糎自走砲』の配備も着々と進み、次第に訓練を開始しているか)


 三式中戦車は史実の仕様ではなく、後に開発される四式中戦車が搭載している『五式七糎半戦車砲』を搭載した改良タイプで、五式十五糎自走砲は史実では『試製五式十五糎自走砲』と呼ばれた自走砲の設計を改めて扶桑陸軍で正式採用した自走砲である。


(陸軍航空隊の方では、『三式戦闘機 飛燕』の製造を開始。海軍の全面協力の下、陸上攻撃機『連山改』の量産は『一式陸上攻撃機』と『銀河』『四式重爆撃機』他中型爆撃機と共に量産に入っている、か)


 報告書には連山改の写真と、他の爆撃機の写真の他、以前に行われた試験内容と結果が記述されている。


(連山の設計は史実と違って更に大型化しているから爆装量と安定性がかなり高い。はっきり言えば『B-29』に匹敵する爆装量と固さと防空性能を得ている)


 史実では完成こそしたが実戦に出る事がなかった重爆撃機で、外見こそ酷似しているが、一回り近くかそれ以上に大きく、その諸元性能は丸っきり違う。言うなれば日本版B-29である。


(尚、現在開発中の超重爆撃機『富嶽』の先行試作機の完成は二週間半を予定か)


 史実ではアメリカ本土を空爆する為に、B-29を超える超重爆撃機として計画されたが、技術面や戦況から試作機も作られること無く終わった幻の機体。


(色々と難儀したが、ゲームで他国の技術を多く取り入れていたから、何とかなったがな)


 ゲームでは他国の良い所をゲームで取り入れていたので、旧日本軍の技術力では不可能に近い事だって、可能になるのだ。


 しかしはっきり言うと連山改と言う重爆撃機があるのでそれを上回る富嶽は作る必要があるのかって思うが、富嶽には新技術を扱う試験的な面が大きいので、限定した数で量産する予定である。


(富嶽と他の重爆撃機と共にあの場所へ爆撃で吹っ飛ばせば、今後魔物の出没は激減するはず・・・・)


 その時の光景が思い出され、静かに唸る。



 今から俺がこの世界に来て、半年も経っていない時だった……


 当時は魔物が多く、土地拡大に難航の色があった。

 そんな中、偵察機が逃げる飛行型魔物の逃走ルートから、ここから北に65キロ先に魔物の巣窟があるというのを確認した。

 俺は今後の活動を考え、巣窟の破壊をするために陸軍と海軍共同で爆撃機による殲滅作戦を立て、実行に移した。

 だが、魔物の数は予想以上に多く、無数の飛行型の魔物によって護衛の戦闘機隊は苦戦し、足の遅い爆撃機は次々と落とされ、僅かに巣窟に損傷を与えただけで、攻撃隊は撤退。完全なる敗北だった。


 魔物への過小評価もあったが、当時の軍事力は低く、航空機も複葉機がほとんどで、爆撃機も爆装量の少ない、頑丈さが無い等、技術面が未熟だった。

 それが敗因の要因となっている。



(だが、次はそうは行かんぞ)


 内心リベンジを誓うような感じで呟くと、次の書類に目を通す。 


(で、前哨要塞基地の建造も残り一ヶ月弱で完成か。本当に作業が早いな)


 相変わらずの建造の早さかと思うが、前哨要塞基地はいくつも聳え立つ巨大な山の内部を掘削した上で、内部は膨大且つ複雑な構造をしているので、これでもこの二年間の中で一番長い建造時間を有している。


(完成すれば鉄壁の防衛線になる。同時に外の世界への拡大を広める為の拠点としても使える)


 そう内心で呟きながらも粗方陸軍技術省の報告書に目を通し、次に海軍技術省より送られてきた報告書を手にして表紙を捲り、目を通す。


(軍港の工廠では戦艦として『長門型戦艦』『天城型巡洋戦艦』『加賀型戦艦』、空母として『飛龍』『蒼龍』『翔鶴型航空母艦』、巡洋艦として『青葉型重巡洋艦』2隻、『妙高型重巡洋艦』4隻、『高雄型重巡洋艦』4隻、『長良型軽巡洋艦』6隻、『川内型軽巡洋艦』3隻、夕張型軽巡洋艦1隻、駆逐艦として『吹雪型駆逐艦』を全型合わせて24隻、『初春型駆逐艦』6隻、『白露型駆逐艦』10隻の建造が先週から開始。

 現在は長門型戦艦一番艦『長門』と二番艦『陸奥』が共に就役し、試験航行を開始。残りの軍艦も順次進水して艤装を施し就役する予定、か)


 いきなり多くの軍艦が増え、中でも戦艦が増えるのは戦艦好きである俺としては嬉しい限りだが、戦略を考えるとなるとバランスの偏った戦力は後の行動に影響する。


 戦艦の艦砲射撃は打撃能力が高く、頑丈に出来ている要塞攻略には不可欠だ。だが、射程が長いとは言えど行動範囲が海のみと言う戦艦では内陸部の奥深くへ攻撃ができない。

 かと言って航空母艦のみだと、航空機による行動範囲は増えるが、要塞攻撃に対する打撃能力に欠けてるし、母艦を失えば航空機は他に余裕のある母艦に着艦するか、もしくは不時着をしなければならなくなる。


 そこで史実どおり、天城型巡洋戦艦二番艦『赤城』と加賀型戦艦一番艦『加賀』と、更に史実では空母として改装される予定だったが、震災によって竜骨を破損し、廃棄処分となった『天城』と船体のみが完成して標的艦になった『土佐』も空母として改装し、残りは戦艦として就役させるように指示を出している。

 ちなみに史実では建造途中で解体された天城型巡洋戦艦三番艦『高雄』と四番艦『愛宕』も建造しており、高雄型重巡洋艦と名前が被ってしまうので、その二隻の名前は重巡に受け継がせ、天城型の三番艦と四番艦は新たに『飛騨(ひだ)』と『常陸(ひたち)』と命名された。


 ちなみに他にも『紀伊型戦艦』が建造予定にあったが、今後建造されるある戦艦があるので、紀伊型戦艦の案は棄却、十三号巡洋戦艦に関しては『岩木型巡洋戦艦』として採用し、今は建造待ちの状態である。


 そして報告書の最後には『A140-F6計画に関する報告』と記述されている。

 内容は『18インチ砲試験砲撃結果』と現在状況とあった。


(結果は上々。現在は進水した船体に艤装を施しているか。そしてそこから更に『20インチ砲』の開発に入る予定。海軍も本腰だな)


 


「ふむ。陸海軍両方とも開発は進んでいるようだな。このまま続けてくれ」


『ハッ!』


 陸海軍技術省の二人は陸軍式と海軍式に分かれて敬礼をすると「失礼します!」と言って踵を返し、執務室を出る。




「しかし、軍備も最初の頃とは思えないほど充実してきたな」


 技術省の者達が出てから少しし、俺は再度窓の外を見つめる。


 軍港では電灯が付けられ、夜間哨戒の為に駆逐艦と軽巡合わせて5隻ほどが沖に出ている。


 必要最低限の軍備設備があるだけで他には何も無かった頃と比べると、その差は歴然だ。


(ここから先どのくらい発展していくか、楽しみだな)


 夜景を楽しみながら将来の軍港の姿を想像する。


「だが、これからが忙しくなるぞ」


 そう呟くと、執務室の扉よりノックの音がする。


「誰だ?」


『私です』


「品川大将か?入れ」


 入出を許可すると、扉が開いて品川が入ってくる。


「どうした?何か忘れ物か?」


「えぇ。そんな所です」


 と、ゆっくりと姿勢崩さぬ歩きで執務机を挟んで俺の前まで歩み寄る。


「今日のお昼頃のお話しは、覚えていますか?」


「?昼頃と言うと、俺の用事が無いかって言うやつか?」


「えぇ。またの機会と言いましたが、今夜は何もご用事は無いですか?」


「……特に無いな」


 首を傾げて特に用事が無いのを確認して品川に伝える。


「そうですか。宜しければ、夕食をご一緒にどうですか?」


「夕食?あっ、そういえばまだだったな」


 壁に掛けられている時計に目をやると、八時を回ろうとしていた。


「俺は別に構わないぞ」


「そうですか。では、参りましょう」


 と、品川の表情に喜色が表れて俺の左側に来ると、左腕に自身の右腕を回す。


 少し戸惑うも、特に意味は無いと思ってそのまま執務室を後にする。





 ―――――――――――――――――――――――――――――――――





「……」


 正直俺はこれほど気まずい雰囲気の中で食事をするとは思いにもよらなかった。



「……」

「……」


 俺の両側には品川と、辻が夕食を取っていたが、かなり機嫌が悪く、雰囲気が重い。




 ことの始まりは、品川に連れられて食堂に着いてからだ。

 そこでなぜか辻が待ち構えていた。


 その瞬間二人の間で火花が散り、こんなやり取りがあった。



『なぜ辻大将がここに居られるのでしょうか?陸軍省に戻ったのでは?』


『それはこちらの台詞です。あなたも海軍省に戻っていたのでは』


『たまたま総司令に用事があって戻りました。そこで総司令がまだ夕食をとっていないと言っていたので私が誘ったのです。そういう辻大将はなぜここに?』


『私も夕食がまだだったので、やってきたのです』


『その割にはまるで私たちを待ち構えていたように見えましたが?』


『それはあなたの気のせいです』


『……』

『……』



 んで、今に至ると言うわけだ。


(陸海軍全体は仲が良いのに、なんでこの二人だけ仲が悪いんだ?)


 疑問に思いながらも漬物とご飯を一緒に口に運ぶ。


(俺としては二人には仲良くして欲しいんだが、どうしたものか)


 仲の悪い原因が自分にあるとは思いもしない弘樹は内心で呟き、ため息を付く。 




(くっ。またしても私の邪魔を。何度邪魔をすれば……)


(あなたの好き勝手にさせはしない)


 そんな弘樹をよそに、二人の間では静かな攻防戦が繰り広げられていた。



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