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異世界戦記  作者: 日本武尊
第四章
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第四十五話 


 バ号作戦開始から早半年が過ぎようとしていた。




「な、何なんだよこれ」


 帝国軍兵士は目の前の光景に呆然と立ち尽くし、言葉を漏らす。


 少し前まで多くの建造物が立っていたのだが、今となっては瓦礫の山と化し、炎が各地から上がって死体の焼ける臭いが鼻を突き、目の前の光景に兵士はさっきまで見ていた光景が一瞬にしてこうなってしまった事に絶望する。

 前方の海に数え切れない軍艦の数と共に。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 時系列は今から5時間ほど前に遡る。



 帝国領の中でも帝都『グレンブル』の次に規模が大きい副帝都『ヴァリア』は帝国一の港町であると同時に帝国にとっては最大の防衛線であり、各地への補給を行う為の生命線でもある。

 ここを落とされた場合、帝国軍の補給は完全に途絶える事を意味し、扶桑軍はいくつもの防衛線をショートカットして帝国領の最深部への進撃を許す事となる。


 それは帝国軍にとって、絶望以外の何でもない。


 そして扶桑軍にとっては陸海において戦略的に重要な場所であると同時に、帝国への心理的打撃を与える事ができる。



 それがバ号作戦における扶桑海軍の作戦の第二段階である。





「おいおい。何だよこの数は。冗談じゃねぇぞ」


 海岸線にある防衛線に居る帝国軍兵士は目の前の光景に顔を青ざめて身体を震わせていた。


 目の前の海には、一面に数え切れない数の軍艦や輸送船、揚陸艦が海を覆い尽していた。それが全てフソウ軍の軍艦であるのに気付くのに時間は要らなかった。


「フソウ軍がこのヴァリアまで来るとは」


「制海権は完全に向こうの手にあるみたいだな」


 扶桑側にとってはどうでも良い事だが、帝国側の上層部は兵士達の士気向上の為に連敗を連勝と偽って戦績を大々的に伝えている。

 まぁ誰も信じては居ないが


「海軍の基地が潰されたって言う噂は本当だったのか」


「上の連中の言葉なんぞ信じられるか。自分達だけ安全な場所に居て喚き散らすような連中だぞ」


「……だよな」



「だ、だが、俺たちの背後には市街地があるんだ。やつらとて簡単に攻撃は行えないはずだ」


 帝国にはフソウ軍が砲撃を行わず兵隊だけを投入してくると算段を立てていた。


 海岸の防衛線の後ろには市街地があり、まだそこに住む民間人は避難を行っていない。と言うのも、市民たちの殆どはフソウ軍と戦う為の民兵となっており、上陸したフソウ軍と一戦を交える覚悟でいた。


 これまでのフソウ軍の攻撃から民間人がいる市街地への攻撃を控えていると帝国軍は見ており、民間人を盾にすればフソウ群は砲撃と爆撃を行う事が出来ないと自信を持っていた。

 

 そして民兵と化した民間人によって上陸したフソウ軍を背後から奇襲を掛ける。と言うのが帝国軍側の作戦だ。





 まぁ、それは今までの人命を尊重する扶桑軍のやり方だったが、本作戦における扶桑軍は違う。



 

「……?」


 望遠鏡を見ていた兵士はフソウ軍の軍艦らの砲塔が旋回していることに気付く。


「お、おい。あいつらの軍艦の大砲がこっちを向いているぞ」


「は?何言ってんだよ。あいつらがこのまま砲撃をするはずが――――」



 その瞬間戦艦の主砲が火を吹き、轟音が砲撃から遅れて兵士達の耳に届く。


「う、撃ってきたぞ!?」


「そんな馬鹿な!?」


 兵士達が驚いている間に空気を切り裂く音と共にいくつ物砲弾が飛来し、いくつかの砲弾が空中で破裂すると焼夷弾や小型爆弾が拡散して防衛線や市街地へ雨の如く降り注いで次々と爆発を起こす。それによって市街地の建物は爆発で崩壊するか焼夷弾によって火事が発生して一瞬にして辺りは火の海と化し、各所から悲鳴が上がる。


「フソウ軍は民間人を巻き添えにしないんじゃなかったのか!?」


「知るかよ!そもそも上の連中の言葉なんか信じられるか!」


 と、兵士が言い終えた直後に放たれた零式弾がトーチカに着弾し、兵士達諸共粉々に粉砕する。



「死にたくねぇ!俺は逃げるぞ!」


「逃げるってどこに逃げるんだよ!?」


 小型爆弾が雨の如く降り注ぎ、次々と爆発が起きる中兵士が恐怖のあまり蛸壺から立ち上がって逃げようとして別の兵士が思わず声を上げるが、その直後に逃げ出した兵士に二式多弾から放たれた子爆弾が着弾して爆発を起こす。


「っ!」


 爆風で思わず兵士は顔を背けるが、その直後背中に何かがぶつかり、何かと兵士が振り向くと――――


「ひっ!?」


 それは先ほど逃げ出して爆発に巻き込まれ粉砕された兵士の首であり、兵士は思わず悲鳴を上げて後ずさりする。


「……何だよ。こんなのって」


 その直後に飛来する零式弾の一つが兵士へと落下し、もはや原形を留めずに粉々に粉砕される。





 海岸から離れた海域に居座る、今回の作戦の為に数隻以外の全ての戦艦を集めた戦艦部隊は次々と轟音と共に砲弾を放っていく。


「しかし今回の作戦、やはり気が引けますね」


「あぁ。帝国に心理的打撃を与えるとは言えど、民間人ごと攻撃するのはな」


 巡洋戦艦岩木の昼戦艦橋に居る艦長と副長は砲撃による轟音の中双眼鏡越しに砲撃地点を見ながら言葉を漏らす。


 この砲撃の殆どは大和型を始めとする46サンチの砲に加え長門型や天城型の41サンチ、紀伊型戦艦の51サンチなどの大口径砲ばかりで、一回の斉射で市街地は瓦礫の山と化して、強固な防壁も無残な姿に変貌している。



 これまで扶桑は人命を尊重して無差別攻撃を避けるために市街地への砲撃と爆撃を御法度として戦ってきた。

 

 だが、帝国側がこちらの人命尊重を逆手にとって民間人を盾に使うのではないかと弘樹は考えていた。


 あまりにも非人道的なやり方だが、追い詰められた帝国はこちらの行動を制限する為にどんな手段でも使うはずだ。


 仮にも砲撃や爆撃を行わずに上陸部隊を上げても、民間人が民兵として襲い掛かって来ないとも限らない。いや、ほぼ確実であろう。


 そしてその不安は現実のものとなり、この間帝国が市街地にわざと民間人を置いてこちらの攻撃を抑えたのだ。仕方なしに事前に行う砲撃と爆撃を行わずに歩兵と戦車の機甲部隊による攻略を開始した。

 しかし市街地では盾にされていた民間人が民兵として扶桑の前に立ちはだかり、扶桑側は予想以上に大きな被害を被る事となった。


 なので、弘樹は無駄な犠牲を増やしたくなかったが、苦渋の決断として民間人がいても市街地への攻撃を行うように全軍に命令を下していた。



 艦砲射撃はしばらく続き、次々と放たれた零式弾に三式弾、二式多弾は容赦なく市街地を破壊していき、攻撃に巻き込まれた民間人達は悲鳴を上げて逃げ戸惑い、瓦礫や砲撃に巻き込まれるて絶命するものが続出する。


「お、俺たちこんなやつらと戦おうとしていたのか?」


「あぁ神よ」


 扶桑軍と一戦を交える気でいた民間人らは強大な力を前にもはや戦闘の意思など綺麗さっぱりに吹き飛んでいた。





 そして時系列は冒頭に戻る。



 市街地は9割を破壊され、帝国軍は海岸線に市街地、城の防衛戦力も維持しているのかどうか怪しい状態だった。



「砲撃中止!上陸部隊を向かわせろ!」


 紀伊の昼戦艦橋で大石の指示で全戦艦の砲撃が止む。


「しかし、敵とは言えどこれには同情しますね」


 双眼鏡で艦砲射撃によって瓦礫の山と化した街を見ながら参謀が呟く。


「仕方が無いとは言えど、さすがにな」


「……」



 その後数十隻の強襲揚陸艦より海軍陸戦隊を乗せた多くの大発と装甲車輌を載せた特大発が発進し、海岸線を目指す。


 同時に伊勢型航空戦艦と扶桑型航空戦艦より彗星と流星、笠置と阿蘇より爆装した烈風に彗星、流星が飛び立ち、上陸部隊の援護に回る。


 浜辺に乗り上げた上陸用舟艇は装甲板を下ろし、大声と共に陸戦隊が走り出し、特大発からは61式戦車、四式中戦車や装甲車輌が降りて歩兵の前に出て進撃する。


 瓦礫の山と化した市街地に残る残存戦力の掃討と占領に時間は掛からなかった。あの攻撃を生き残った民間人は圧倒的力を見せ付けられて抵抗する気も起こらず、全員が扶桑軍に投降した。


 その後艦上爆撃機と攻撃機による城への爆撃が行われ、続けて戦車や自走砲による砲撃で城壁の防衛戦力を排除して城門を開放し、歩兵によって城内部の抵抗戦力を一掃して陥落させる。



 そうして周囲の安全を確認した後に輸送船から物資を揚陸させ、次の作戦に備えて体制を整えてヴァリアの完全占領を完了した。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 ヴァリア攻略から二日後




「ふむ。帝国の副帝都ヴァリアが堕ちたか」


 品川から報告書を受け取って内容を確認してテーブルに置く。


「これで最深部への侵攻が可能となったか」


「えぇ。現在進撃に向けて輸送艦隊がヴァリアに向かっています」


「そうか」


 深いため息を付いて椅子の背もたれにもたれかかる。


「現在陸軍の方で帝国軍の要塞を攻略中です。ここを陥落させれば、海軍陸戦隊と合流。連携して進撃が可能になりますし、陸軍にとっても大規模な拠点を手に入れます」


「ふむ。今のところ計画通りに進んでいるか」


 これなら帝国の最終防衛ラインまでの道のりは近いな



「しかし、本当に宜しかったのですか?」


「何を?」


「その、全軍に伝達した、民間人をも巻き込んだ無差別攻撃の許可を……」


「……あぁ」


「……」


「言いたい事は分かる。俺だって、民間人を巻き込む無差別攻撃をやりたいとは思わない。だがな」


 俺は椅子から立ち上がって地図が広げられているテーブルの方に向かう。


「こうでもしないと、連中は民間人と言う名の盾を得る事となる」


「盾、ですか」


「あぁ。だから本作戦における我が軍は例え民間人が市街地に居たとしても、攻撃を許可している」


「盾にしても意味は無い、と言う事を帝国に知らしめる為にですか」


「……酷な判断だが、仕方が無い」


 腕を組み、静かに唸る。


「戦争に犠牲は付き物だ。一人と犠牲者を出さない、何てのは無理な話だ」


「……」


「……戦争だから仕方が無い、か」


 ボソッと俺は呟いて言葉を漏らす。


「そう言ってしまえば、何も言えないよな」


「……総司令」


「……」


 この戦争。ただでは終わりそうに無いな……いや、そもそも綺麗な形で終わった戦争なんて無いんだ。


(何も、起こらなければいいのだがな)


 戦いに絶対は無い。分かっていても、そう願いたいものだ。


 



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――





 場所は変わり帝国領。その中でも大きな山の内部を刳り貫いて作られている帝国軍要塞。




「くそ。帝国のやつら、意外と良い装備持ってんじゃねぇか!」


 ゆっくりと前進するティーガーの後ろを歩く兵士は愚痴を溢す。


 要塞前の防衛線にはトーチカがいくつも設置されて、そこには古めかしい手回し式のガトリング砲が遅い連射速度で火を吹いていた。その後方の砲陣地には近代的なカノン砲が次々と火を吹き砲丸が進撃中の扶桑陸軍部隊に降り注いで被害を出す。


 しかしその中に一際目立つ存在が走行し、砲撃を多く受けるもその強固な装甲ですべて弾き返す。


 大型イ号車ことオイ車はやり返しといわんばかりに主砲より榴弾を放ち、トーチカの一つを粉砕する


「そういや、奥に進むに連れてやつらの武器が近代化しているような気がするんだが、気のせいか?」


「出し惜しみでもしているんじゃねぇのか?」


「この状況で出し惜しみって、あいつら頭おかしいんじゃねぇのか?」


「それほど追い込まれているってことだろうよ!」


 その直後にティーガーの主砲より榴弾が放たれ、トーチカに着弾して兵士諸共粉々に粉砕する。


 続けて五式中戦車に61式戦車からも榴弾が放たれ次々とトーチカを破壊する。


「しかし、爆撃隊の到着はまだかよ!」


「いくら制空権がこちらの手にあると言っても、このままじゃ敵の砲撃に晒され続けるぞ!」


 上空では陸軍航空隊の三式戦闘機、四式戦闘機、五式戦闘機が飛び交い、竜騎士を殲滅して扶桑側に制空権を握らせていた。

 その後は砲撃陣地への機銃掃射を行っているが、先のガトリング砲やマスケット銃による対空射撃によって近づくのが難しく、爆装していないとあって大砲事態の破壊が出来ず目標殲滅に手間取っていた。




「うーむ。敵も中々やるな」


 部隊後方には指揮車輌に乗る扶桑陸軍指揮官が静かに唸る。


「第三機甲大隊は敵の防衛線に足止めされて後方の砲陣地からの砲撃を受け被害が出ているようです」


「そうか。しかし山の内部を刳り貫いた要塞か。厄介だな」


 戦闘開始からずっと九六式十五糎榴弾砲と五式噴進弾砲による砲撃を続けているが、要塞の岩壁が予想以上に強固なのかそれほど被害が出ていない。


「これでは、爆撃隊による爆撃も効果は期待出来ないな」


 とは言えど、戦略上ここを必ず陥落させなければならない。


(さて、どうしたものか)




「……?」


 すると通信機の前に座り状況を聞いていた通信兵が通信機の感度を上げ下げをすると紙に何かを書いて確認する。


「隊長!暗号通信です!海軍からです!」


「海軍からだと?」


「おいおいここは奥地だぜ?何で海軍から通信が」


「……」


「それで、内容は?」


「ハッ!これより陸軍の援護に回る。艦砲射撃を行う為注意されたし、です」


「はぁ?冗談だろ?」


「どこに海があるって言うんだ。まさか陸上を走る戦艦でもあるっていうのかよ」


 まぁ当然の反応ではあるが……



「い、いえ。捕捉で、海からではなく、川からだそうです」


「……は?」


「川、だと?」


 その場に居た者たちはすぐには理解出来なかった。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 帝国軍要塞から南東へ12km先に川幅が広く水深が深い川はあった。



 川にはヴァリア攻略戦で参加していない大和型2番艦武蔵を先頭に、5番艦近江と6番艦駿河、その後方に金剛型1番艦金剛、3番艦榛名が続いていた。



「しかし、司令部も中々大胆な事考えますね」


「あぁ。最も今回の様な運用は大和型の優秀な注排水装置があってこそ出来るんだがな」


 武蔵の昼戦艦橋では艦長と副長が双眼鏡で周囲を見ながら呟く。


 この川は水深こそ深いが、大和型では艦底が川底にぶつかる可能性があった。

 しかしそこは大和型の持つ注排水装置によって解決されている。


 史実の大和型の何倍も優秀な注排水装置が搭載されており、瞬時にとは行かないが史実の半分近くの速さで注水、排水が可能となっている。更に水防区画を多く持つので潜水艦の様な動きを可能としている。

 それによって喫水線を低くしたり高くしたりとする奇抜な事も可能となっている。


 なので今回大和型3隻は通常より喫水線を低くしている為川底に当たらずに航行を可能としている。


 しかしこの状態では艦の安定性が落ち、ただでさえ反動が強い46cm主砲は1基1門ずつを時間を空けてしか撃てず、更に使用装薬量も弱装が限界なので射程距離も短くなっている。

 少しでも安定性を向上させようと、見るからに即席で作ったような安定装置(スタビライザー)を両舷に装備しているが、即席であるがゆえに効果はあまり期待できない。


 ちなみに金剛型は注排水装置を使わずとも川底に引っ掛かる心配が無いので川を航行している以外は通常通りだ。


「さてと、観測機からの報告も入った事だ。全艦砲撃用意!」


「ハッ!全艦砲撃用意!!」


 艦長の指示が下り副長が復唱する。


 すぐさま指示は砲術長と各砲塔に伝わり、測距儀が旋回して全砲塔が右へと旋回して警報が鳴り響く。


 同時に各艦も各砲塔を右へと旋回させ、砲身を上げ下げして微調整する。


「全艦!第一斉射!撃ち方始め!!」


 武蔵艦長の号令と共に一基三門の内一門から轟音と共に砲弾が放たれ、遅れて後方の近江、駿河、金剛、榛名の主砲一門から轟音と共に二式多弾が放たれる。


 計5発の46cm砲弾が空気を切り裂く音と共に弧を描いて飛翔し、その全てが空中で破裂して中から7つの小型爆弾が拡散して計35発の小型爆弾が要塞前の防衛線へと着弾して爆発を起こす。


 小型爆弾は多くのトーチカに着弾して粉々に粉砕し、砲陣地ではカノン砲が木の葉の様に空中に舞い上げられる。


 続けて第二斉射が行われ、武蔵、近江、駿河は時間を空けつつ残りの二門、金剛と榛名は残りの一門を放ち、砲陣地後方の要塞へ徹甲弾が撃ち込まれ強固な岩壁を貫通し一部の岩壁が崩壊する。




「おいおい。マジで砲撃が来たぞ」


 一時的に後退していた部隊は目の前の光景に唖然としていた。


「やっぱ戦艦の砲撃は半端じゃないな」


「あぁ。っつか川に戦艦を遡上させるって、海軍も大胆な事するよな」


「全くだぜ」


「俺たちには真似できないな」


「そもそも陸軍に軍艦ねぇだろ」


「潜水輸送艦ならあるぜ?」


「まるゆだったか?特殊過ぎるだろあれ」


「海軍にまるゆの設計を依頼したら『そう言う船じゃねぇから』的なこと言われたらしい」


「それでもちゃんと設計して建造してくれたんだよな」


「それなりに便利らしいぜ」


「俺の友人もそう言っていたな」


「っつか、何でこんな話になったんだ」


「お前が潜水輸送艦の事言ったからだろ」


「何で俺のせいなんだよ」




「っ!指揮所から通信!爆撃隊の到着だ!」


 無線機を背負う通信兵が叫び兵士達は後ろを振り返って上空を見ると、多くの重爆撃機がこちらに向かっていた。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 到着した爆撃隊は富嶽1機を先頭に連山改数機が続いていた。


「しかし、今回は試験を兼ねての攻撃ですが……使えるんでしょうか?」


「さぁな。何せ外見は狂気から生まれたあれだからな」


 富嶽の機長と副機長は搭載されているとある兵器を思い出す。


 富嶽と連山改の爆弾倉を改造して搭載されているのは、知る人は知っている太平洋戦争で作られた悲劇の兵器、その名を『桜花』と呼ぶ。


 史実では特攻兵器として開発された桜花だが、外見と名称は同じでも扶桑海軍では無線誘導を行う大型の噴進弾として開発されている。

 無人機として空いたスペースに燃料タンクを増設して航続距離の延長、無線誘導を行う為の機器が搭載されている。


 速度と破壊力は現代の対地ミサイル並みにあるが、史実より増えていると言っても航続距離は短いので、重爆撃機で有効射程距離まで運ばなければならない。


「機長!桜花の射程距離に目標を捉えました!」


 桜花の操作を行う操作員からの報告を聞き機長は軽く頷く。桜花は無線誘導が行えるのは半径25km圏内のみで、それ以降は無線誘導が行えなくなるので針路は固定されて飛んでいく。


「各機に通達!桜花発射準備に掛かれ!」


 機長の指示はすぐさま連山改各機に伝達され、桜花の操作員は発射準備に入る。



「投下開始!」


 機長の合図と共に操作員はスイッチを押して富嶽の機体下部に搭載された3基の桜花が投下されて、ロケットブースターを一斉点火させて飛んでいく。

 それと同時に連山改の機体下部に搭載されている2基の桜花も投下されてロケットブースターを一斉点火して飛んでいく。


 操作員は飛んでいく桜花の針路を調整し、要塞に向かうように固定する。


 音速並みの速度を出した桜花は短時間で無線誘導可能範囲を突破して帝国軍要塞へと飛んでいき、次々と強固な要塞の岩壁を貫通して内部で爆発を起こす。

 その直後に火薬庫に誘爆してか次々と要塞各所で大爆発が起こる。


 更に次弾装填を終えた戦艦部隊による艦砲射撃が再開され、43発の一式徹甲弾が要塞に降り注いで岩壁を貫通し、内部で炸裂して内部構造物を破壊していく。



 しばらく艦砲射撃は続いて要塞の防衛戦力はズタボロにされ、陸軍は一気に制圧するべく一斉に突撃を開始した。

 


 それから5日後には、要塞は扶桑軍の手によって陥落するのだった。





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