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異世界戦記  作者: 日本武尊
第三章
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第三十八話 史上最大ノ巨砲、咆哮ス



 それから更に40分近く時間が経ち、グレートドラゴンはかなり第二防衛線に接近しており、防衛線守備隊は必死に攻撃を続けたが、全くグレートドラゴンの足止めにはならなかった。

 周囲ではグレートドラゴンが歩く度に揺れが生じてバランスを保っている帝国軍兵士と戦車もどきの乗員が歓喜の声を上げながら進撃する。


「どうだ!グレートドラゴンの前にはフソウは手も足もでねぇようだな!!」


「あぁ!やはり我が帝国軍が最強だな!!」


 戦車もどきに乗る戦車兵達は高笑い、大砲を放って塹壕付近に着弾してフソウの兵士の一人が吹き飛ばされる。


「どうだ!参ったか!!」


 戦車もどきの車長は高笑いを上げてまるで勝った気で居た。




 だが、メタい話ではあるが、人はそれをフラグと呼ぶ。








 ―――――――――ッ!!!!






「っ!」


 すると雷鳴かそれ以上の轟音が響き渡り、誰もが一瞬身体が硬直する。


「な、何だ!?」


「雷でも落ちたのか!?」


 しかし見上げても空は快晴であり、とても雷が鳴る様な天候ではない。


 さっきまで岩から出ている巨大砲と考えたが、それとは比べ物にならない爆発音であり、何よりどこにも巨大な大砲の姿は無かった。



 その直後、空から巨大な黒い塊が鈍い空気を切り裂く音と共に戦車もどきの真上に着弾し、乗員は塵一つ残る事無くこの世を去った。


 巨大な黒い塊によって四十一糎榴弾砲のとは比べ物にならない爆発と衝撃波が荒れ狂い、兵士や魔物、戦車もどきですら枯葉が風に吹かれて舞うように舞い上げられ、近くに居た者は衝撃波で原型が留めないほどに粉砕されるか身体のどこかが吹き飛ばされた。

 その衝撃波はグレートドラゴンですら仰け反らせ、進撃を止めた。


 その直後グレートドラゴンの右足付近に巨大な黒い塊が着弾して大爆発を起こし、更にもう一つが右脚に着弾し、四十一糎榴弾砲ですら目立った外傷を与えられなかったグレートドラゴンの強固な皮膚を粉々に粉砕し、グレートドラゴンはその激痛のあまり断末魔の様な叫びを上げながらその場に倒れ込む。

 その際に巨大地震が起きたかのような揺れが襲い掛かり、第二防衛線守備隊にも多少の被害が被った。




「な、何だこの揺れは!?」


 あまりの揺れの大きさに第二防衛線の守備隊の多くが足元を取られ尻餅をつく。


「見ろ!山の様に大きな龍が倒れたぞ!!」


 グレートドラゴンが地面に倒れ、『おぉ!!』と声が周りで上がる。


「四十一糎榴弾砲ですら損害がなかったというのに」


「海軍の紀伊型戦艦か?」


「いや、もっとそれ以上のやつだ」


「ってことは!」


「あぁ。間違いない」


 男性は確信を得ていた。


「ヴァレル基地にある、あれだな」


 ニッと笑みを浮かべると、右前足を失い地面に倒れうずくまるグレートドラゴンを見る。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「初弾遠!二発目は近!三発目は直撃です!あのデカブツの足をもいでやりました!」


「ふむ。初の砲撃で命中とは、これは幸先がいいな」


 巨大な黒い塊が空に向かって放たれた場所では、かなり巨大な物体が巨大な砲身を下げていた。


 その物体の形は知る人は知っている、旧ナチスドイツ第三帝國が開発した世界最大の列車砲『ドーラ』に酷似しているだろう。


 これこそ弘樹が浪漫の為にほぼ強引に個人の意思を貫き通して陸海軍の技術省に作らせた『試製八十糎列車砲』であり、このヴァレル基地に配備された3門が初めてその巨砲を放ったのだ。

 ちなみにこれをコストダウンされたのが『六十一糎列車砲』で、少数が別の基地に配備され、現在運用の為とある準備が施されている。


 しかし列車砲は史実ではレールの向きの関係上一定の向きにしか砲撃ができない使い勝手の悪い兵器であるが、このヴァレル基地には巨大な転車台をこの列車砲の為だけに建造しており、ヴァレル基地からのみではあるがこれによって360°全域へ砲弾を飛ばす事ができる。

 ちなみにこの転車台にはあの紀伊型戦艦の50口径51サンチ三連装主砲の砲塔旋回装置の技術が用いられている。


「次弾装填急げ!!」


 指揮官の指示ですぐさま次弾装填の作業が急ピッチで行われた。


 砲兵要員の迅速且つ正確な動きと自動化された装填作業で、史実のドーラでは40分以上掛かった装填作業も33分で終了し、巨大な砲身が再びその巨砲の咆哮を上げるべくゆっくりと上げられ、巨大な転車台が大きな音を立てずにゆっくりと旋回する。


「仰角良し!方位良し!射撃準備完了!!」


 狙いをつけていた砲兵の報告を聞き、指揮官はニヤリと笑みを浮かべる。


「総員遮蔽物の陰に退避せよ!」


 すぐさま必要な砲兵以外は近くにある遮蔽物の陰に隠れ、耳を両手で塞いで肺の中の空気を吐き出して口を大きく開ける。


「ふっ……撃てぇっ!!」


 と、大声で指揮官が叫び、紀伊型戦艦の51センチ砲と比べ物にならない大地を揺るがす轟音が大気を震わせ、巨大な列車砲自体が反動で後方に下がろうとするも太い鎖を何本も使って固定しているので反動による後退を阻止し、80センチの破甲榴弾が三つ空に向かって放たれる。




 放たれた80センチの破甲榴弾は地面に倒れうずくまっているグレートドラゴンの身体の各所に着弾し、その硬い体表を粉砕して体内に侵入して爆発し、巨大な紅い花を散らせた。それによってグレートドラゴンは辺り一面に血を撒き散らし、絶命する。

 爆発で飛び散った破片や血が周囲に居た帝国軍兵士に襲い掛かり、更に第二防衛線守備隊にも襲い掛かり、ある意味甚大な被害を被らせた。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「グレートドラゴン……沈黙を確認」


「……」


「凄い」


『……』


 もはやただの肉塊と化したグレートドラゴンを見て、辻が思わず声を漏らし、その場に居た誰もが息を呑む。


 雨の如く降り注いだ榴弾や徹甲弾、噴震弾の直撃を受けてもなんともなかったグレートドラゴンが、たった6発の80センチ破甲榴弾によって討伐された。


(無理矢理作らせておいてなんだが……とんでもない威力だな)


 試験の時である程度威力は知っていたが、使用した相手ではインパクトが全然違う。


(だが、今回は相手が良かったとも言えるな)


 グレートドラゴンが巨大で動きが鈍重だったので命中したが、これが動きが早く大きさがそれほど大きくなければ恐らく命中などしないだろう。


「ですが、あっさりとでしたが何とかあのデカブツを倒しましたね」


「あぁ」


 まぁ、倒せた事に変わりは無いのだ。それで良しとしよう。


「これより残存戦力を叩く。抵抗しない者以外は排除しろ!」


 俺の指示はすぐさま前線へと伝わり、第二防衛線守備隊が一斉に帝国軍へと攻撃を開始する。


「さて、帝国はどこまで抗うと思いますか?」


「さぁな。出来れば余計な犠牲が多く出る前に降伏してほしいが、そうはいかないだろうな」


 と言ってもちょくちょく降伏する者達が出始めているが、中には降伏しようとした兵士を別の兵士が殺害している光景が映し出されている。


「……」


 そんな光景に俺の中で怒りが煮え滾る。




『っ!?』


 すると突然基地が大きく揺らぐ。


「な、何だ!?」


「どこがやられた!」


 まさか取り逃がした飛行船が居たのか!?



「っ!基地内の列車砲3門の内1門が弾詰まりを起こして爆発したようです!現在被害を調査中!」


「な、なに!?」


「列車砲が暴発しただと」


 やっぱり試射した後の試作品を放置していたのが砲身の傷みを促進させていたのか。

 砲身を交換すればよかったんじゃね?ってなるんだろうが、ほぼ不採用になったから予備の砲身は作ってないから試験した時のままだよ


(とは言っても、一門だけで住んだのは不幸中の幸いか)


 これで三門全てとなったらどうなっていたやら……


 ちなみに残りの二発はグレートドラゴンを倒され動揺が走っている帝国軍へと落下して大爆発を起こし、多くの兵士と魔物を塵も残さずに粉砕する。


「ですが、グレートドラゴンを倒した後でよかったですね」


「まぁな」


 とは言えど暴発の危険性があるので、残りの二門が使えなくなるのは手痛いな。


「帝国軍は?」


「グレートドラゴンを倒された事で士気が低下しているようです。進軍速度が低下しています」


 切り札がこうもあっけなく倒されてしまっては、そりゃ絶望しかないよな。


「それに加え、グレートドラゴンの肉片や血によって帝国軍のみならず第二防衛線守備隊も被害を被っていますのがあると思われます」


「……」


 グレートドラゴンの死骸の周囲はある意味地獄なんだろうな……




「っ!総司令!魔力電探に感あり!グレートドラゴンの出現地点からです!」


「なに!?」


「まだ何かを送り込むつもりか」


 するとグレートドラゴンが出現した森の方から先ほどとは強くない光が発せられ、次第に光が弱まる。


「……」


「何も、無い?」


 しかし光が収まってもそこには何も出現していない。


「いや、森に隠れるほどの大きさしかないんだろう」


 そうなると歩兵か魔物、戦車もどきのどれかか。そうなるとかなりの数が送り込まれたか



『っ!司令部!こちら一〇〇式!新たな敵部隊が出現!戦車もどきです!』


 一〇〇式司令部偵察機の搭乗員の言葉通り、スクリーンには森から戦車もどきの大群が現れ、ヴァレル基地を目指す。


「戦車もどきか」


「しかも、かなりの数です」


 森から出現した戦車もどきの数はこれまでと比べ物にならない大群で、地面を覆い尽して進攻している。


「一難去ってまた一難か」


 向こうも向こうで懲りないなホント……




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