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異世界戦記  作者: 日本武尊
第二章
25/79

第二十四話 西條弘樹のとある一日


 午前6:00


 その時間にセットした目覚ましの音で俺は目を覚ますと、上半身を起こしてあくびをしながら背伸びをして、ベッドを降りる。最初はこんなに朝早く起きるのに慣れてなかったので恐ろしく眠かったが、二年も経てば早起きは慣れたものだ。

 そのまま洗面所に向かって顔を洗い、歯を磨く。


 その後に朝飯を軽く食べ、軍服に着替えてから家を出る。


 俺は司令部の中ではなく、市街地の隅に一軒家に住んでいる。決して広くないが、狭いわけではない昭和の日本の一軒家だ。まぁ俺一人だと十分な広さだ。



 ちなみに余談だが、俺ん家にとある二人が押し掛けて泊まろうとした時があったんだよな。あの時は苦労したよ・・・・・・




 午前6:30


 家の前で制帽を被り直して待っていると、一台の乗用車がやって来る。


「お待たせしました、総司令」


 扉を開けて車から辻が降りてくると後部座席の扉を開けて俺が乗り込むのを確認して閉めると、すぐに運転席に戻って扉を閉め、車を走らせる。

 迎えは辻と品川の交代で行うようにしている。



 30分掛けて司令部に到着し、車を降りて司令部の執務室へ向かう。その途中で品川と出会い頭に会い、辻と品川の間で相変わらず火花が散らされる。

 本当に仲が悪いなぁ・・・・



 午前7:00 


 執務室に着いた後、俺のやる事・・・・・・




 ・・・・・・昼まで地獄の書類整理第一回目と報告書閲覧だ。



 今回の報告書は海軍の工廠からのもので、金剛型、扶桑型、伊勢型、装甲空母信濃の改装状況についてだった。


 扶桑型は4、5、6番砲塔を撤去し、史実で計画としてあった航空戦艦として改装が施されており、伊勢型は第4砲塔を撤去して飛行甲板の延長が施されている。

 そして両艦は同じくして搭載主砲を16インチ三連装主砲へと換装される予定だ。


 金剛型は他より大規模な改装であり、史実で金剛代艦型戦艦として計画されていた『藤本案』と『平賀案』の二つのいいところを取って既存の金剛型を強化する形となっている。

(主に艦首側と艦尾側を12メートルずつ計24メートルを延長し、主砲を45口径46サンチ連装砲四基八門に換装。機関を強化して速力を30ノットまでに上げると言った感じ)


 信濃は試作型のカタパルトの試験を終え、他の艦より早く近代化改修の為大幅な大改装を施されている。主に船体の全長延長と飛行甲板の改装等々といった、いわば現代の空母に準じた改装になる予定だ。


 その他軍艦や補助艦船の建造状況などが記載されている。




 正午12:00


 書類整理を終えて、この後の予定の確認をしながら品川と辻と共に昼食を取る。



 この後にある予定。それはとある戦艦の就役式だ。




 ―――――――――――――――――――――――――――――――――




 司令部横の軍港では今正に新型戦艦の就役式が行われており、海軍関係者で溢れ返って賑やかに近い雰囲気があった。と言うより、唖然とした異様な雰囲気と言うほうが正しいかもしれない。



 湾内には、目を疑うような光景が広がっていた。 



 誰もが一目見て思う事はただ一つだろう。




「・・・・何て大きさだ」


 海軍関係者の一人が思わず誰もが思っているであろう事を代表して口から漏らす。


 その湾内に停泊しているのは、恐らく現実においても空前絶後の超巨大な軍艦がその存在感をかもし出している。


 それこそが、大和型戦艦の建造を経て、試行錯誤の末に完成した、扶桑海軍が誇る最強の二文字こそ相応しい戦艦。


 史実では『超大和型戦艦』として計画されたものを扶桑海軍で更に拡大発展させた超戦艦・・・・・・その名を『紀伊型戦艦』と呼ぶ。



 大和型戦艦の設計を拡大発展させているとあって、造形は大和型戦艦に酷似しているが、何よりその大きさや、それ以外の全てが規格外に出来ている。



 紀伊型戦艦の諸元性能は以下の通りとなる。



 基準排水量:132000t

 満載排水量:150000t(大体)

 全長:353m

 全幅:49.5m

 速力:31.5ノット



 兵装

 50口径51cm三連装砲4基12門

 60口径20.3cm三連装砲2基6門

 12.7cm連装高角砲26基52門

25ミリ三連装機銃65基195門

 12.7cm三十連装噴進砲6基180門



 防御

 最大装甲厚:520mm

 最小装甲厚:430mm



 艦載機

 瑞雲7機




 ・・・・・・正に軍艦としては、全てが規格外だ。


 あまりの巨大さに、隣に停泊している大和型の5番艦と6番艦『近江』と『駿河』が重巡洋艦に見えてしまうほどだ。


 紀伊型戦艦には最新鋭の技術を惜しみなく投入されており、それらの技術は紀伊型戦艦のテストヘッド艦として完成した大和型戦艦4番艦美濃から得られた物が大きい。

 

 そして紀伊型戦艦の最大の特徴は巨体に合った頑丈さだろう。


 重要区画のみならず全周囲に渡って重装甲が施されているので、これまでの戦艦とは頑丈さの次元が違う。特に喫水下の装甲は特殊構造となっており、種類と強度の異なる鋼材を複雑に組み合わせて、空いた隙間に余す所なく特殊な衝撃吸収剤を注入、内側に固体化させたものを貼り付けているので、魚雷直撃時の衝撃を分散させて長く耐えられるようになっている。

 そのため、理論上では70本以上の魚雷の直撃を受けても浸水が発生するも戦闘続行に支障なし。少なくとも120本以上の魚雷がなければ致命的な損害を与える事は不可能、と言うのが紀伊型戦艦に要求された性能だ。


 さすがに諸元性能では信じ難かったが、海軍の技術省が何を狂ってか、完成して試験航行中の紀伊に対して魚雷の耐久テストを実施し、いきなり10本以上の魚雷を紀伊の左舷に向けて放ち、直撃させたのだ。

 しかし10本も集中して左舷に受けたにも関わらず、紀伊に損害といえる損害は無しと、信じ難い報告があった。大和型でも致命的なダメージが発生するような数だと言うのに。と言うか自信があるからと言って完成したばかりの戦艦に魚雷を撃つとか、正気の沙汰じゃないな・・・・


 しかもこれだけではなく、既に2番艦の建造も開始されており、試行錯誤を繰り返した1番艦の紀伊と違い、1番艦を建造時のノウハウがあるので二番艦の建造にはそれほど時間は有さないと言う。


「素晴らしい。この一言に尽きるな」


 軍港にやって来た俺は完成した紀伊型戦艦を見て、感嘆の声を漏らす。


「これほど巨大な戦艦は、見た事がありません」


「そうでしょうね。あの大和型戦艦を大きく上回る大きさな上に、尋常ではない防御力と攻撃力を持つ戦艦です」

「恐らく今後これを越える軍艦は無いでしょう」


 辻と品川も若干唖然とした様子で紀伊を見ていた。


 最も史実では構想のみだが、これを遥かに超える戦艦があったけど・・・・もはや呆れる領域だよなあれ・・・・さすがにあれを作る気にはなれないな。



「話しには聞いていたが、これほど大きなものとは」


 と、聞き覚えのある声がして後ろを振り返ると、海軍第1種軍装(紺色の方)を身に纏う男性二人が立っていた。


「これはこれは、大石司令長官」


「お久しぶりです、西条総司令」


 扶桑海軍聨合艦隊の司令長官である大石元帥と専務参謀が海軍式敬礼をして、俺と品川は答礼する。


「大石長官。トラックに居るのではなかったのですか?」


「あぁ。新型戦艦の就役式があると耳にしてね。二式飛行艇で遥々やって来たのだよ」


「それは、ご苦労な事で」


 品川の問いに大石司令長官はそう答える。

 ホントこの人は自由だな・・・・まぁ、それがあって様々な作戦を考える策略家だ。この前のテロル諸島の戦闘も長官が考案したものだし・・・・



「それにしても、本当にデカイですな」


 大石司令長官の専務参謀は全員の注目を受けている紀伊型戦艦に視線をやる。


「紀伊型戦艦一番艦『紀伊』と言います」

「恐らく今後ともこれを超える戦艦は無いでしょう」


「でしょうな。それで、紀伊はこれからどう動くのでしょうか?」


「近い内にトラックへ向かい、聨合艦隊と合流させます。そして旗艦を大和から紀伊へ移します」


「そうですか」


 俺の言葉を聞いて、大石司令長官は軽く頷いて紀伊に目を向ける。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――




 午後1時30分・・・・・・



 軍港を後にして、俺は品川と辻を引き連れて陸海軍共有の飛行場の隅にあるとある格納庫に向かった。



「お待ちしておりました、西条総司令」


 格納庫前では、スーツの上に白衣を羽織る少し太り気味の男性が待っていた。


「機体はこの中か?」


「はい。では、こちらに」


 男性に案内されて係員によって格納庫の扉が開けられ、中に入ると男性は壁のレバーを倒して明かりを付ける。


「こいつか」


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 格納庫の中には二機と異形な物があった。


「新型の艦上戦闘機・・・・・・『烈風』と、局地戦闘機・・・・・・『震電』です」


 今のところの俺達の視線の先には、若干翼が反った逆ガル式の翼を持つ艦上戦闘機烈風と、世にも珍しい前翼型やエンテ型と呼ばれる形状をし、機体後部にエンジンと八枚プロペラを持つ局地戦闘機震電が佇んでいた。


「烈風にはこれまでの陸海軍で培った航空機開発のノウハウを集結し、零式艦上戦闘機の正当な後継機として開発しました。すべてにおいても、烈風は零戦を超える戦闘機です」


「本当か?」


「えぇ。ベテラン搭乗員の乗る零戦と烈風の模擬戦を行った所、10戦中全てを烈風の圧勝でした」


「そりゃ凄い」


 俺は静かに佇む烈風を眺める。


 カラーリングは零戦の後継機としてか、緑にワンポイントに黄色と、カウル部分だけ黒く、プロペラが茶色に塗装されている。零戦52型以降を思わせるカラーリングが特徴的だった。

 そして翼と胴体には扶桑の国旗である黒地に白い満月の月の丸が塗装されている。


「震電は苦労しましたが、こうして完成にたどり着けました。発動機は過給器付きターボプロップエンジン式の星型発動機を搭載。高度一万メートルまでに約20分程度、ベテランパイロットで15分程度で到達できるほどの出力を誇ります」


「他は?」


「武装は30ミリ機関砲を四門に、翼下に懸架装置を四つ持っているので、噴進弾他の装備を搭載可能です」


「そうか。それで、この二機の量産は?」


「烈風はまだ本格とは言えませんが、ボチボチと。震電はまだ試験途中ですので、量産はまだ先の見通しです」


「・・・・ふむ」


 まぁ、今のところ震電の必要とする状況ではないので、良いとしよう。それに震電がいない代わりに雷電があるから、問題はないだろう。



「・・・・で、こいつが例の機体か」


 その二機の隣にある機体に目をやる。


「はい。まだ試験段階で、実用化の目処は立っていませんが、陸軍で開発中の特殊機・・・・・・『特殊蝶番(とくしゅちょうつがい)レ号』です」


 骨組み状態だが、その形は紛れも無く現代におけるヘリコプターそのものだ。


 それは旧日本陸軍からの依頼でとある大学が開発した、オートジャイロではなく純粋なヘリコプターであり、試作一号が完成し、本格的に飛行する事無く、試作二号が実物大模型を作られただけで終戦を迎えたものだ。


「カ号観測機で得られた技術から、何とかここまで漕ぎ付けました」 

「飛行実験こそ成功しましたが、それでも色々な課題を残す完全な成功とは言えない結果でした」


「・・・・・・」


「これからの開発状況次第で、採用か不採用が決まるでしょうね」


「そうですか」


 とは言えど今後の戦闘でヘリコプターの三次元戦闘は必要不可欠になってくる。

 まぁ、ボチボチと待つか。




 他にも新型の艦上攻撃機や陸軍の新型戦闘機と、陸海軍で開発中の新型機を現在状況の報告を聞いてから、俺と品川、辻は飛行場を後にして次の場所に向かう。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 午後2時・・・・・・



 次に訪れたのは陸軍の演習場で、今正に試験が行われていた。


「・・・・・・」


 俺が手にしている双眼鏡の先には、1輌の戦車が演習場を走り抜けていた。


 陸軍が開発した四式やティーガーに代わる新型戦車・・・・『五式中戦車 チリ』だ。


 砲塔が右へ旋回して、搭載している九九式八糎高射砲を長砲身化し半自動装填装置を搭載した『試製八糎戦車砲(長)』を盛った土に置かれた標的に向け、轟音と共に砲撃し、行進間射撃でありながら標的のすぐ横に着弾する。

 砲撃してすぐに二射目が放たれ、今度は標的に着弾する。


「さすがの命中率だな」


「えぇ。未完全ながら、砲身安定装置ジャイロスタビライザーが働いているようですね」


 行進間射撃での命中率に感心した俺が呟いた言葉に、陸軍の技術省の者が答える。


 五式中戦車には試作品の砲身安定装置を搭載しており、行進間射撃でも高い命中率を誇っている。半自動装填装置も異常なく稼動しており、発射の間隔が短い事がそれを表している。


「五式中戦車の量産は進んでおります。そして新型戦車の開発も順調に進んでおります」


 新型戦車は主に二種類あり、一つはいずれ訪れる戦いに向けて限定生産するやつと、今後の陸軍の主力戦車の一角を勤める物だ。


「そうか。ならば、このまま進めてくれ」


「ハッ!」


 陸軍技術省の者の返事を聞いてから、しばらく五式中戦車の試験風景を眺めた。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 午後4時・・・・・・


 陸海軍の視察を終えて、俺と品川、辻は司令部へ戻って再び作業に戻る。



 地獄の書類整理、その第二回目だ・・・・・・




 午後9時・・・・・・


 途中で夕食をとって、ようやく全ての仕事が終わり、俺は品川の車に乗って司令部を後にして自宅に戻る。

 



 午後11時30分・・・・・・


 寝る前に持ち帰った報告書を読んでから、就寝。




 色々と普段から無いような事ばかりだったが、それ以外は普段からこんな感じ、かな




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