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異世界戦記  作者: 日本武尊
第二章
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第二十一話 帝国の新兵器




 青い空にちらほら大小の雲が点々と広がる上空。



 そこを巨大な重爆撃機『連山改』が独特のエンジン音と共に10機以上が編隊を組んで飛行し、その周囲を防空迎撃型連山改4機と『三式戦闘機』、『紫電』30機が護衛として就いていた。


 その中に、一際目立つ巨大な爆撃機が中央を飛行している。


 それこそが旧日本陸海軍が米国本土爆撃を計画して開発されようとしていた、B-29を上回る超重爆撃機『富嶽』である。B-29を上回る全長と全幅を持ち、六発のエンジンが連山改以上の轟音を放ち、その威圧感を放っていた。


 中でも『雷神』と通称される爆撃隊に配備された富嶽は最新鋭の電子機器と対空電探を搭載した電子指揮官機としての機能を持つ。


 多くの対空機銃を持ち、六発機のその威容はまさに空中戦艦と呼ぶに相応しい姿だった。





「しっかし、壮観な眺めですな」


「あぁ。最もこの富嶽が飛んでいるのも壮観だけどな」


 指揮官機兼で飛行する富嶽のコックピットでは機長と副機長が編隊飛行する連山改を観ながら話していた。


 富嶽の機内は予想以上に広く、最新機材を乗せていても普通に歩いて移動できるほどの空きスペースがある上に、爆弾搭載量が減っていない。


「電探。周囲に敵機はいないな?」


「はい。今のところ反応はありません」


「うむ。今の所順調だな」


「えぇ」




「機長。間も無く作戦領域です」


 と、電子機器の前に座っている乗員が機長へ伝える。


 今回爆撃隊の作戦目標は陸軍戦車大隊の援護であり、現在砲撃に晒されて身動きが取れないで居る。爆撃隊は砲撃陣地とついでに後方に控える帝国軍陣地を爆撃する予定となっている。


「分かった。指揮官機から各機へ。爆撃高度まで下げるぞ」


 機長の指令で各爆撃機は高度を下げていき、護衛戦闘機部隊も一緒に降下していく。




 少しして爆撃隊は爆撃高度まで降下し、爆撃コースへと入る。


「爆撃手。目標は見えているか?」


『えぇ。偽装も無しですから、ハッキリと敵の砲撃陣地が見えていますよ』


 爆撃手から見れば、予想以上に大きな後込め式カノン砲が砲撃陣地に多く並べられており、今尚戦車隊に向けて砲撃している。


「よし。微調整の指示を頼むぞ」


『了解。チョイ右!お願いします!』


宜候(ヨーソロ)!」


 爆撃手の指示で機長は操縦桿を少し右へと傾けてコースを変える。

 同じくして他の連山改も少しばかり右へと針路を変える。


「各機!爆撃用意!」


 指令を放った後に富嶽と連山改の爆弾倉が開き、50番陸用爆弾が40基以上がずらりと並んでいた。


「電探に感あり!!敵機が上昇してきます!!」


 電探員の言う通り、爆撃隊に気付いた帝国軍の竜騎士が多く上昇してきた。


 さっきまでの高度なら竜騎士は上がって来れないが、今いる爆撃高度なら竜騎士でも頑張れば昇って来られる。

 恐らくこちらが高度を下げてくるのを見計らっていたようだ。


「護衛戦闘機隊!敵機を蹴散らせ!!」


 すぐさま護衛戦闘機隊へ指令を飛ばし、紫電、三式座戦闘機は胴体に吊るしている増槽を切り離して急降下する。


 高度差もあり、護衛戦闘機隊は竜騎士を一気に次々と撃ち落していく


 しかし竜騎士もやられっぱなしと言うわけでもなく、魔法で放つ炎や氷、ボウガンなどを放ち、護衛戦闘機に損傷を負わせるなどの活躍を見せるも、戦闘能力の差は覆れずその数を減らしていく。



『よーい!ってぇっ!!』


 その間に爆撃目標を捉え、爆撃手は爆弾を次々と投下させると、連山改も次々と爆弾を投下する。


 多少風に流されたりはしたが、爆弾は陸軍の進攻を阻んでいた帝国軍の砲撃陣地へと落ちて爆発の花を次々と咲かせる。

 それと同時に大口径のカノン砲に使われている大量の火薬に引火し、大爆発を起こす。


 そのまま砲撃陣地奥の帝国軍陣地へと爆撃を敢行し、陣地は五分後に粉砕される。



『砲撃陣地及び敵陣地の粉砕を確認!』


「・・・・作戦完了。これで前に進めるだろう」


『あぁ。助かった。協力に感謝する!第三機甲中隊!前へ進め!!』


 その後機長は小さく見える戦車が前進を再開するのを確認する。


「よし。これより帰還す――――」





『9時方向!敵機接近!』


「っ!」


 機長がとっさに視線を向けると、竜騎士が数体飛んできた。


「くそっ!護衛戦闘機が降下したのを見計らって来やがった!」


 右側面の銃座に着いている銃手が三式重機関銃改のコッキングハンドルを引っ張って弾を薬室へ装填する。


「護衛戦闘機隊!すぐに戻って来てくれ!」


『無理だ!竜騎士の数が多くてそちらに戻れそうに無い!』


 下では護衛戦闘機と竜騎士が激しく飛び交っており、高度を上げて戻る余裕などありそうになかった。


「ちっ!防空迎撃機は配置を変えろ!!敵を近づけるな!」


 すぐさま防空迎撃型連山改が配置を変えて竜騎士が来る方向に二機が上下に配置し、爆弾倉を撤去して機体の各所に7基以上増設した20mm連装機銃と三式重機関銃改6基がそれぞれ竜騎士へ向けられ、一斉に火を吹く。


 展開された弾幕は大型の航空機と言えど、とても想像出来ると思えない程の濃さであり、爆撃隊を襲おうとしていた爆撃隊は一瞬にしてその殆どを失う。


 その弾幕の中を果敢に潜り抜けようとした竜騎士がドラゴンに火球を勢いよく吐かせるも、その直後に銃弾の雨に晒されてドラゴン諸共肉片と化す。


 火球は勢いよく防空迎撃機の間を通り抜け、富嶽の右側を飛ぶ連山改の右の翼の第一エンジンに命中し、黒煙を吹く。


『連山改三番機!右翼被弾!第一エンジン停止!!』


「大丈夫か!?」


『そ、操縦系統に異常はありません!何とかバランスを保っています』


 富嶽機長が窓から連山改三番機を見ると、若干機体は揺れているものも、何とか耐えていると見て取れる。


「よ、よし。三番機は編隊を外れ、先に帰頭しろ。防空迎撃機一番機が護衛に就け」


『了解!』


 富嶽の機長は安堵の息を漏らすと、すぐに指示を出す。


「連中もやる。これじゃ、気が抜けれん・・・・」


「総司令の言う通り、慢心と油断だけはしてはいけませんな」


「あぁ、まったくだ」


 機長と副機長は気を引き締めると、周囲に気を配る。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 上空の爆撃隊によって砲撃陣地を破壊させたのを確認した陸軍第三機甲中隊は一斉に動き出し、上に上げていた主砲から一斉に榴弾を放つ。


 榴弾は弧を描いて帝国軍の陣地を守る為の防衛陣地を破壊し、帝国軍兵士が逃げ戸惑う中次々とバリケードを破壊して突き進み、攻略目標である市街地を目指す。


「これより市街地に入る!周囲警戒を厳にせよ!」


 ティーガーに乗り込む『西竹一』中佐は首の咽喉マイクに手を当てて各戦車へ警戒を促すと、中隊は市街地へ侵入する。


 周囲警戒の為に、数人の歩兵をソ連軍の様に戦車に乗せた所謂タンクデサントで車体後部に乗せており、周囲を警戒している。



 戦車隊が市街地の中央の広場に侵入した時に、建物の陰から多くの帝国軍兵士が雄叫びと共に一斉に飛び出てきた。


 しかし、市街地戦での戦闘を熟知している西中佐はその襲撃など想定済みで、各戦車にはそれぞれ建物の角や入り口、窓に砲を向けており、帝国軍兵士が出てきた途端一斉に主砲から榴弾を放ち、榴弾が建物に命中して爆発し、多くの破片が飛び散って帝国軍兵士を殺傷する。


 ティーガーの同軸機銃と車載機銃より放たれた銃弾が次々と帝国軍兵士を撃ち抜き、キューポラから出てきた西中佐がキューポラマウントに設置された三式銃機関銃改を放ち、建物の二階に陣取っている銃兵や弓兵を文字通り粉砕していく。

 同じく四式中戦車と三式中戦車の車載機銃やキューポラマウントの三式銃機関銃改、タンクデサントしていた歩兵が持つ四式自動小銃や100式機関短銃を後方以外の方向より迫ってくる帝国軍兵士を撃ち殺していく。


 すぐに歩兵部隊を乗せた一式半装軌装甲兵車と九四式六輪自動貨車が遅れて到着し、降車後歩兵部隊が戦車を盾にしながら攻撃を開始する。


 奇襲が失敗して意表を突かれた帝国軍は一斉に後退し始めるが、中には武器を捨てて両腕を上げて降伏する者達も現れる。


「降伏か。最初からそれすれば無駄な犠牲が無かったものを・・・」


 西中佐は降伏する帝国軍兵士を見て呟く。


『どうしますか、中佐?この際射殺した方がこちらとしては楽ですが・・・・』


「総司令からの厳命を忘れたか、貴様」


 怒りの含んだ声で西中佐が口を開く。


 弘樹は人命を尊重にして、降伏した兵は全て捕虜として捕らえろと全軍に厳命している。


『も、申し訳ございません』


「・・・・第二歩兵小隊は捕虜を連れて市街地を離脱。後方陣地まで連行しろ」


 西中佐の指示で降伏した兵士は数十人の歩兵に任せて一旦市街地を出て後方に控える陣地へと連行される。



「歩兵部隊は先行して状況確認。三式五番から七番車が随伴しろ」


 捕虜を連行した歩兵が市街地を出たのを確認して指示を出し、歩兵150名と三式中戦車3輌が更に奥へと進む。


 しばらくして大丈夫であると確認できて西中佐へ報告すると、西中佐は前進指示を出し、部隊は奥へと進む。




 しかし部隊が前進したところで、後方の建物より壁を壊しながら何かが飛び出てきた。


「っ!?」


 いち早く気付いた西中佐は後ろを振り返ると、四つの車輪を持ち黒く四角い物体が出て来て、前面に固定されてある砲より火が吹き、三式中戦車の車体後部に命中して爆発を起こす。


「っ!戦車だと!?」


 それは鉄板を四角に繋ぎ合わせて大砲を載せた戦車の様なもので、それが次々と建物の陰より現れると、一斉に大砲を放ってくる。

 その内数発が三式と四式中戦車の車体後部やどちらかの履帯に命中して破壊される。


「ちっ!旋回急げ!」


 西中佐はすぐに車内に戻りティーガーが超信地旋回をして真後ろに向くと、戦車もどきの砲から砲弾が放たれるもティーガーの正面装甲に阻まれてゴーンッと言う音と共に弾かれる。

 やり返しといわんばかりにティーガーの88ミリ砲が火を吹き、榴弾でありながらも戦車もどきの砲身諸共貫通して車内で大爆発を起こして粉砕する。


 続けて砲塔を旋回させた四式中戦車と三式中戦車が一斉に主砲を放ち、次々と戦車もどきを正面から撃ち抜いて撃破していく。


 中には歩兵が九糎噴進砲を肩に担いで片膝を着くと戦車もどきに向けて噴進弾を放ち、偶然にも大砲の砲口から中へと入り込み、中で爆発を起こす。


 前では先行した部隊が帝国軍兵士の攻撃を受けていたが、防戦しながら後退していた。


「待ち伏せか。だが、そんな戦車もどきで倒せると思ったか!」


 直後にティーガーの88ミリ砲が火を吹き、戦車もどきの正面から徹甲弾が砲諸共貫通して内部で爆散する。


 不意打ちを受けたものも、体勢を立て直したティーガー以外の各戦車は続けさまに砲撃を行い、次々と戦車もどきを撃破していく。


 帝国側は不意打ちこそ成功したが、予想以上に扶桑側の立て直しが早く、形勢は一瞬にして扶桑側に傾いた。



 しばらくして帝国軍側の戦車もどきは殆どを鉄屑と化し、兵士も一部は玉砕して無駄に命を散らせたが、僅かに残った兵は全員武器を捨てて降伏した。


 その後市街地を調査した所、故障して動けなかった戦車もどきが数輌ほど無傷で放置されてあったので、扶桑陸軍は調査のため鹵獲することにした。



 そうしてしばらくして帝国に占拠されていた市街地を奪還し、帝国軍が進めていた戦線を大きく押し戻す事に成功した。




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