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異世界戦記  作者: 日本武尊
第一章
1/79

プロローグ


 地面から岩が何本も突き出て荒れているキラル荒野と呼ばれる場所。



 そこはまさに地獄とも言える惨状だった。



 一斉に放たれる弓矢やマスケット銃の弾丸、魔法使いより放たれる炎や雷、氷が飛び交い、直撃を受けた兵士達は次々と絶命する中、剣や槍、斧と言った格闘武器を持った兵士達や、ゴブリンやコボルト、リザードマン、ゴーレム等の魔物達に対し、人の姿に獣の耳や尻尾を持つ獣人、額に角が生えたオーガやも人型で獣の姿をした妖魔族で構成された多くの者達が敵国の兵士に向かって走り、武器を振るう。




 この戦争の発端は『バーラット帝国』が『グラミアム王国』へ宣戦布告をし、侵攻を始めた事が始まりだった。


 元々両国の仲はかなり悪かったが、その原因は種族偏見がほとんどを占める。


 バーラット帝国は人間至高主義の塊とも言える国で、獣人や一部の妖魔族など人間の姿を模した存在は滅ぼすべき存在と周辺国に豪語するほどだ。

 一方のグラミアムは獣人や妖魔族を中心に構成された国家であるが、周辺の人間の国との関係は良好で、決して人間嫌いではない。が、帝国のみは例外だ。


 それ故に両国の関係は長きに渡って劣悪に等しい状態が続いていた。


 そして遂にバーラットは亜人と称する獣人と妖魔族を滅ぼすべく、グラミアムを含む周辺国へ宣戦布告をしたのだ。


   


 そうして数年の時が経ち、今に至る。




 ある獣人は敵兵と剣と剣をぶつけ合って鍔迫り合いをし、槍を突き出して獣人の腹に突き刺し、斧を横に振るってコボルトの首を跳ね飛ばし、ハンマーを振るい敵兵の頭を吹き飛ばす。


 ある者は生命力が強く中々死なないゴブリンに跨って剣を何度も腹に突き刺し、リザードマンが妖魔族に噛み付いたり、獣人が槍を投擲してコボルトの頭を突き刺す。


 帝国側の先込め式のカノン砲から撃ち出された砲弾や投石器より放たれた岩が着弾し、その下に居た妖魔族や獣人は潰されて辺り一面に血を撒き散らし、近くに居た人間を吹き飛ばす。


 至る場所で怒声や悲鳴、悲痛な叫びが上がり、死体の山が次々と出来上がり、阿鼻叫喚な光景が繰り広げられている。



「怯むな!亜人共などおそろろるに足らん!突き進め!!」


 バーラット帝国軍の指揮官の一人が大声で叫び、それに応えるように兵士達は雄叫びを上げながら突撃する。同時に馬に乗った騎兵隊、ドラゴンに跨り空を飛ぶ竜騎士たちも続く。


 獣人や妖魔族を中心に構成されたグラミアムの兵士達は人間より数倍優れた身体能力を持ってしても、その猛攻の前に劣勢を強いられていた。


 その要因は装備の違いが大きくある。

 帝国軍は最新式の武器防具ばかり。それに対してグラミアム軍は旧世代の武器防具ばかり。その上物量も圧倒的に向こうの方が上だった。


 誰もが帝国軍側が有利であると見て分かる状態であり、帝国軍側の兵士の一人もそう思っていた






 ――――が、ある異変に気づいた兵士が、空を見上げる。


 空は大小の雲がある以外は快晴の空があり、太陽の光が地獄絵図のような戦場を照らしている。



 太陽の光でまともに見る事はできないが、一瞬だけ太陽に黒い影がいくつか見えた。



 しかも、その黒い影はどんどん大きくなる。



 兵士が疑問を抱く間も無く、その辺りに投下された黒い塊が炸裂し、その兵士とその辺りに居た兵士達の命を一瞬にして奪う。





 この世界の者達は知る由もなかったが、爆弾を投下し終えた『九九式艦上爆撃機』15機は機首に搭載されている7.7ミリ機銃を掃射して地上に居る帝国軍の歩兵やゴブリン、コボルト等の魔物達を撃ち殺す。


 この謎の空を飛ぶ物体の出現に帝国軍側の兵士達は混乱を見せるが、すぐさま竜騎士達が迎撃に向かうべく高度を上げて九九式艦上爆撃機を追う。


 しかしその横から接近してきた『零式艦上戦闘機』25機が翼の20ミリ二門、機首の7.7ミリ二門計四門の機銃を掃射し、追撃に入ろうとしていた竜騎士をドラゴンごと撃ち殺す。


 零式艦上戦闘機の奇襲によって竜騎士は混乱を見せるがすぐに体勢を立て直して零戦を撃破しようと向かっていくも、その高い運動性能により動きを捉える事ができず、格闘戦を持ち込もうとしたら逆に零戦に背後を取られて機銃掃射を受けて蜂の巣にされる。


 ほんの僅かな時間にして竜騎士の殆どが排除されて帝国軍側の制空権が喪失すると、北北東の方角より九九式艦上爆撃機に続き爆装した『一式戦闘機』と『九七式戦闘機』が3機種合わせて50機が飛来し、次々と爆弾を帝国軍の軍勢へと投下する。

 投下された爆弾は地面に落ちると同時に爆発し、無数の兵士達の命や四肢のどこかを奪う。


 爆弾を投下し終えた一式戦闘機と九七式戦闘機は機首や胴体に搭載された機銃を地面に戸惑いを見せて動きを鈍らせている兵士達に掃射し、次々と兵士達を蜂の巣にしていく。


 この空を飛ぶ謎の物体の襲撃によって帝国軍の兵士の戦意は喪失し、我先にと戦場から逃げ出そうとする。


 指揮官が敵前逃亡する兵士達を止めようと怒声を上げるも、その瞬間一式戦闘機の機首12.7ミリ機銃が火を吹き、放たれた弾丸によりその指揮官は周りにいた兵士達と同じく声を上げる事無く一瞬にしてミンチと化して地面を自らの血で染める。


 逃げ戸惑う兵士達に止めを刺すかのように、その退路上に『一式陸上攻撃機』10機が丘の向こうから現れ、爆弾倉を開いて60キロ爆弾12個×10計120個をすべて投下して兵士達の命を一瞬にして奪う。



 ちなみにこの場に居た者は知らなかったが、ここから後方に待機していた帝国軍の増援部隊にも襲撃があり、『九七式中戦車 チハ』『一式中戦車 チヘ』『三式中戦車 チヌ改』や他装甲車などの車輌を中核とした機甲大隊によって被害は甚大なものとなった。

 そして指揮官が戦死したことにより、戦意を喪失した帝国軍兵士は次々とその軍へと投降するのだった。



「い、一体これは」


 一方謎の空を飛ぶ物体の攻撃を受けて無いグラミアムの兵士達は、目の前で起きている光景に呆然としていた。


 自分達では近代装備を持った上に圧倒的物量で攻める帝国軍に苦戦を強いられていたが、それがどうだ?大量に出現した空を飛ぶ物体の攻撃や投下した爆弾で帝国軍兵士は次々と殺されていく。

 こちらの兵士が持つ武器では攻撃が通じにくかったゴーレム等の硬い魔物ですら爆弾により粉々に粉砕されている。


「……」


 その中の妖魔族の兵士は自らの目の良さを生かし、戦闘機や爆撃機、攻撃機の胴体や翼に描かれた黒地に白く丸いマークに気付く。


「まさか、あれが噂に聞く……フソウ軍なのか」


 その黒地に白い満月のマーク……『月の丸』を見て、ある国を思い出す。



 数ヶ月前、劣勢を強いられていたグラミアムに協力をして、現在では協力関係を築いている人間達の国。




 その名は『扶桑国』。国としては小規模と言われているが、未知なる技術を持つ、この世界とは異なる世界から来た異邦人が築き上げた国、と言われているが全容は分かっていない。




 しばらくして更なる戦闘機と爆撃機、攻撃機の増援が飛来し、機銃掃射と爆撃機や攻撃機の爆撃により、辺りを埋め尽くすほどに居た帝国軍兵士はほんの僅かだけ生き残るほどしか残らず、その生き残った兵士達は降伏の白旗を揚げるのだった。

 白旗を確認し、扶桑の戦闘機と爆撃機、攻撃機はそれぞれ別ルートを通って線上を離れていく。



 その光景に、グラミアムの兵士達はただ呆然と立ち尽くして見ているだけであった





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