2
「でもさぁ、藤谷楓は置いておいて、
その…山風さん?とこで働くんでしょ?」
「確定ではないけど、良さそうな雰囲気はあった。」
「じゃあ、それまでに外堀を深めておかないとね。」
「外堀?」
「山風さんのこと、徹底的に調べて山風さんをモノにしなきゃ!」
「モノにって…」
円らしいけど。
「恋愛しに会社行くわけじゃないんだけど。」
「じゃあ何しにいくわけ?」
「おい。
山風さんが世界一の芸術家になるためのアシストがしたいの。
どんなに辛くても、お手伝いがしたいの。」
「だから、結局は一緒になりたいってことでしょ?」
…そうなの。
え、世間一般ではこれが普通なの?
「アシストがしたい、ようは彼の助けになりたい。
それって妻になりたいってことじゃん。」
「それとこれとは…」
「違うの?仕事とプライベートって離れているようで近いんだよ。
特に、苦楽を共にした人とはより距離が近く感じる。
それが異性ならなおさら!
側で支えてくれた甲斐甲斐しい女だったらときめかないはずがないじゃない。」
「そ、そうかな。」
…って、私流されてない?
「ま、とにかく彼のことは私が調べとくから!
沙耶は芸術家の個人会社に勤めたらすぐにでも動けるようにそっちのほう調べとくんだよ!」
「あ、はい…」
「じゃあ、解散!」
っと言って、円は生き生きした表情でいなくなった。
…なんか、楽しんでない?
ま、いっか。
「芸術家の個人会社…って個人会社なんだから、一般的なこと調べたって意味ないよね〜…
スポンサーが居て、個展とか出せたりするんだ…。
そういや、山風さん抜いたら3人の従業員がいるってことだよね。
どんな人なんだろ。」
山風さんのことを考えてただけ動機が激しくなる。
やっぱり、恋…なんだろうか。
まだ、一度しか会ってないのに。
それとも、憧れなんだろうか。
彼の才能に惹かれだけなんだろうか。