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ペペロミア  作者: 桜桃
55/58

昔からの






櫻さんと藤谷楓。


山風さんと藤谷楓。



この繋がりで一つ、わかったことがあった。





それは、うちのおじいちゃんの弟子のこと。




藤谷楓は弟子の2人のうちの1人だということは、

お母さんから聞いている。



そしてもう1人は、山風さんだということ。




母に聞いてみると案の定、山風さんだった。




「あら、径くんのとこで働いてるの⁉︎

あーらそう、全然名前を聞かなかったから、てっきりやめちゃったのかと…

でもよかったわぁ、続けてくれてて。

本当に才能のある子だったから。」




そう言って、昔のアルバムを引っ張り出してきて


6年くらい前の、おじいちゃんもまだ元気で。


その横におじいちゃんを挟むようにして


山風さんと藤谷楓がいた。





ニカって笑ってピースを決める山風さんと

絶対ナルシストだっただろうなっていう表情の藤谷楓


贔屓目でみてるわけじゃないけど、


2人の性格が出ていて、なんだか可笑しかった。





そこで教えてもらったのは、

ちょっとした、2人の過去。



*******



「径くんが中学3年生のときに、おじいちゃんに、みそめられてお弟子さんになったの。

楓くんもそれくらいにお弟子さんになってね。

芸術的センスがあるとモテる!なんて言って来たわ。」


「はは…」



なんとも、"らしい"言葉だ。





「高校3年生くらいになってからかしら。

1人の女の子が訪ねてきたのよ。」


「え?」


「今日は雨が降りそうなのに、傘を持って行ってないので届けに来ました、って。

綺麗な女の子が。」


「それって、櫻さん?」


「そうそう!径くんと仲が良さそうで…

でも、その時いた楓くんが気に入っちゃって。」




…なんとなく、そうだろうなって思った。





「まぁ、楓くんはあの通り自分に自信があるしね、カッコよかったし…アプローチしまくってたんだけど、

櫻ちゃんの心には径くんしかいなくてね。」




…櫻さんは、その頃から山風さんのことが好きなんだ





「それである日…」


「…?」


「受験勉強で暫く2人のは来なくてね。

楓くんは来てたんだけど。

卒業式も終えて、また2人が来るわね、ってそんな時だった。

ある日、おじいちゃんが倒れて。

みんな病院に行ってた。

もちろん、径くんも。

だけど、楓くんが櫻ちゃんを呼び出したみたいで。

そこで…」




なんとなく、察しがついた。



それで、櫻さんはあの時尋常じゃないくらい


怯えた表情だったんだ。





「まぁ、間一髪径くんが来たんだけど。

それから何ですって、2人が付き合い始めたの。」


「そうなんだ…」








*******




突然の藤谷楓の登場に、

隣にいる櫻さんは平静を装いながらも、手が震えていた。





「アイドルかよ。」


「まぁまぁ…今圧倒的に人気だからね。

そんな彼が出品するってつい3日前にわかってファンが殺到したらしいよ。」


「ったく、馬鹿だよね。

対して良い作品を生むわけでもない、顔だけで持ち上げられてるだけなのに、何を勘違いしてんだか。」


「ちょっと和、聞こえちゃうって」


「別にいいよ。本当のことだもん。」




焦るように周りを伺うが、

先輩の言葉を気にとめる人はいなかった。





「まぁ、櫻ちゃんに会って、山風さんがこのコンクールに出品するって知って、勝負しようとか思ったんかね。

自分の魅力のなさを知りもしないで。」



先輩の悪態に、私も同意見だった。



プロならわかるはず。


藤谷楓と山風さんの実力の差がとれほどなのか。






「じ、実はね。」


「ん?どうかしたの、櫻ちゃん。」


「藤谷くんから、なぜかメールがきてて…」


「はぁ!?」




そうやって見せられたメールの本文




そこには、山風さんを貶す内容と

自分の過大評価。


そして、自分が勝ったらもう一度会ってほしい

という文面だった。



律儀に場所と時間まで指定してある。





「ばっかばかしい、自分が勝つとでも思ってんの。

櫻ちゃん、相手にすることないよ。」


「わかってるんだけど…」




次の言葉を述べようとした櫻さんをさえぎるように


コンクールの発表が行われることとなった。









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