いつも通りの
買い出しから帰ってきたら、
来客用のソファはまるで花畑のようだった。
嫌そうな顔で見ている先輩。
「仲直り、したんですね。」
「そうなんだけど…ご覧の通り、いつもの倍以上うざいわ。甘いわ。甘ったるいわー!」
「わっ和っ」
先輩が振り上げた腕が見事岩崎さんに直撃する。
「ちょっと溜くん!コーヒー!」
「えぇ、いつもはカフェオレじゃん。」
律儀にカフェオレをマグカップに入れて持ってきた
岩崎さんは、ブーたれる。
「こんな極甘な空気でカフェオレなんて飲んでられないの!」
いつものことだからか
ツンツンしてる先輩も可愛いのか…
岩崎さんはニコニコしながら、
コーヒーを淹れなおした。
…きっと両方だと思うけど。
「沙耶ちゃんはカフェオレでいい?」
「あ、はい!わざわざありがとうございます!」
「いーのいーの、ついでだし。」
「もぉ、コンクールまで3日もないのに
イチャコラして…あのおじさんは。」
「まぁまぁ、良かったじゃないですか。
いつも通りに戻って。
きっと、コンクール上手くいきますよ。」
「だといいけど。」
心が痛まないわけじゃない。
辛くないわけじゃない。
…でも、これでよかったんだ。
物凄く、幸せそうな山風さんの顔を見たら、
とてもじゃないけど
「好きです」なんて言えないから。
だから、本当に良かった。




