2
「それでは、初女子会を祝して。
カンパーイ!!」
いつになく、明るい先輩。
きっと、盛り上げようとわざと声を大きくしてるんだ。
「さ、櫻さん!何か食べたいものありますか⁉︎」
「え?うーん…」
「遠慮しないで、ジャンジャン頼んでね。
経費で落とすから。」
「え⁉︎ちょ、和ちゃん⁉︎」
「経理は私なんで、思うがままです。」
それ、一歩間違えれば犯罪になるんじゃ…
「大丈夫。社長に許可はとってるから。」
山風さんではなく、社長と変えたのは
きっと、先輩なりの気遣い。
「…なんか、ごめんね。こんなことまでしてもらって…」
「そう思うんなら、笑ってよね〜
最近元気ないぞよ、櫻殿。」
「ふはっ…それはそれは申し訳ございませぬ。」
「うむ、反省してるならよろしい。
…何か悩んでることがあるのかな?」
「…うー…ん…」
ショート寸劇をして。
ノリノリだった櫻さんは少し眉毛を下げて
申し訳なさそうに微笑んだ。
「えっとまず…
ご心配おかけしまして。すみませんでした。」
ふかぶかと変えた頭を下げる櫻さんに吊られて私も頭を下げた。
そんな私を見て先輩が小さく笑ってる。
「あのね、実は…
…っていうことだったです。」
シュンっとしたように、下を向いた。
藤谷楓との、繋がり。
約束。
きっと、山風さんの嫉妬と
櫻さんの素直になれない気持ちが
複雑に絡み合ってしまったんだ。
「そっか。辛かったね、櫻ちゃん。」
「え?」
「不安だったでしょ、色んなこと。
嫌で嫌で、たまらなかったのに、突き放されて急によりどころがなくなっちゃったよね。」
「…っ」
「今日はね、泣きなね。
あの日から、泣いてないでしょ?
こういう日はね、泣くのが一番なんだよ。
ただでさえ、櫻ちゃんは我慢しすぎるんだから。」
「和ちゃん…」
先輩と、櫻さんのに絆の深さを感じた。
ポロポロと涙を流す櫻さんを見て、
「叶わないなぁ」と思う。
綺麗で、純粋で、頑張り屋さんで、
気をぬくことを知らない人。
どうあがいても、私には敵わない人。
「櫻さん。」
「?」
「私、山風さんが好きなんですよ。」
まさかのカミングアウトに櫻さんは驚いてて
先輩は気づいていたのか、冷静で。
それでも私は続けた。
「でも、櫻さんも大好きなんです。
だから、また2人には笑っててほしいんです。」
陽だまりのような暖かさで
私たちの周りを明るく照らしてほしいから。
「私も素直になったんですから、
櫻さんも山風さんに素直になってくださいね。」
「沙耶ちゃん…ありがとう。」
心がポカポカと暖かくなった気がした。




