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「櫻。」
「なに?」
「明日からまた作業室に籠るわ。」
「わかった。」
週末は私の家か径くんの家に泊まるのが
いつものこと。
お酒を片手にTシャツと短パンでソファに胡座。
完全に一家のお父さんだ。
「あ、そういえばね、笹倉さんのとこに行ってきたんだけど、ほしい生地がなかったみたいなの。」
「まぁな〜あの布は事前に言えって言われてたし…
ダメ元で行ってみた結果やっぱダメだったか。」
「うん。それで、笹倉さんの知り合いのお店にあるかもしれないって。
笹倉さんに紹介されたお店に月曜日行ってみるね。」
「え?櫻が行くの?」
「うん。他の3人も径くんのコンクールとその先の個展に向けて動いてもらってるから。」
「個展?」
「径くんはきっといい賞もらうから、今から準備なの。」
「わ〜ぉ、プレッシャーだなぁ。」
大丈夫。
径くんなら大丈夫だよ。
「あ、でも櫻。」
「ん?」
「その店に行くときは絶対1人で行くなよ。」
「え?…なんで?」
「なんでも。とにかく、和でも岩ちゃんでも、沙耶ちゃんでもいいから1人で行くな。」
「…わ、かった。」
「あのさ、手空いてる人いる?」
「あ、ごめん。まだ資料まとめきれてないわ。」
「岩崎くんは?」
「俺もできてない!ごめんね!」
「ううん。沙耶ちゃんは…まだ、だよね。」
「すみません…」
「ううん、いいの。」
本当は径くんに行くなって言われてるけど
仕方、ないよね。
「なんかあったの⁇」
「ううん。何でもない。ちょっと笹倉さんのところに行ってくるね。」
「わかった。」
約束破ってごめんね。
それくらい、軽く考えた私が馬鹿だったんだ。