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「どうして、そんなこと言うんですか?」
「ん?」
「私…山風さんに憧れて会社に入りました。
わからないことだらけだったし、大変だったけど…楽しくできたのは、皆さんがいたからなんです。
ほのぼのした雰囲気が大好きなんです。」
櫻さんといちゃつく姿を見るのは
とてつもなく辛いけど…
でも、それよりも今の雰囲気が辛くて仕方ないんだ。
「だから、早く仲直りして欲しいです。
岩崎さんも宮野先輩も、心配してますよ。」
「…うん。」
「じゃないと、取り返しのつかないことになることもありますから…」
なんて、私が言える立場じゃないんだけど。
しょほくれた山風さんを見るくらいなら
痛む胸も気にならない。
「ね、沙耶ちゃん。」
「?はい、」
「ありがと。」
「え?」
山風さんは、ありがとうと私につぶやく。
その意味はわからなかったけど、
少し安心した。
山風さんと別れて
喧嘩中の円の家に押しかけた。
*********
「円、こめんね…」
「沙耶…私の方こそゴメン。」
「ううん…私、円に怒られること、またやっちゃったから。」
「怒られること?」
「そう。」
とりあえず家の中に入って、
ポツリ、ポツリと
言葉が口からこぼれ出る。
「今日ね、先輩が熱出して…岩崎さんが早めに帰って。櫻さんと山風さんが最近よそよそしくて。
それで、飲みに誘ったの。山風さんを。
2人っきりで飲んだの、さっき。」
「おぉ!」
「…でもね、私…なんにもできなかった。」
円の目は見れなくて。
私の視線はずっと、自分の膝。
「山風さん、物凄く落ち込んでて。
理由はわからないけど、櫻さんがいなくて
生気が失われてる、みたいな…
本当だったら、漬け込むところなんだと思うけど…
私、できなかった…
できなかったや…ははっ私、バカだよね…」
「本当にバカ…」と涙まであふれた。
「沙耶。」
「…。」
「私は沙耶が大好きだよ。」
「円。」
「ごめんね、私が沙耶のこと考えずにアレコレ言ったから、沙耶…パンクしちゃったよね?」
そんなことない。
円がいて、物凄く助かってる。
「沙耶。思ったようにしな。
後悔しないように。沙耶が一番傷つかない方法を自分で選んで?
沙耶が選んだ答えなら、それは絶対に間違ってない選択だから。」
「円…」
「大丈夫。きっといい方向になるよ。」
「うんっ」
ありがとう、大好きだよ。