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「じゃあ、今日はここまで。」
いつになく、今日の先生は熱かった。
おかげで、体力に自信のある私でさえも息切れ寸前で
汗も滝のように流れている。
「あ、男子も今終わったみたいだね〜」
「ほんとだ。」
同じように汗を流した額をタオルで拭く
溜くん。
何年も隣で見てきたのに、
知らない男の子のうようで、
ドキドキと胸の鼓動が鳴り止まなかった。
ふと、目が合う。
「和ーーー!」
「さ、叫ぶなバカ!」
周りの男子は
「イチャイチャすんなよっ」
と囃し立てる。
これだから嫌なんだ。
なんて思いながらも、頬が緩んでると
遠慮がちに肩を叩かれる。
「水谷、さん。」
水谷沙羅。
同学年で、部活仲間。
大人しい性格だからからレギュラーではなくて
私もあまり話したことのない子だった。
「か、和ちゃん。」
「は、はい…」
相手も緊張してるからか、こっちまで緊張がうつる。
「岩崎くん、今日貸してくれないかな?」
「へ?」
暗い夜道を、1人でトボトボ歩いた。
ーー沙羅、岩崎くんのことが好きなんだよ。
水谷さんといつも一緒にいる、
ちょっと気が強い子。
郡司由佳。
私と同じレギュラーだけど、
性格が合わないだろうな、つて思って
近くも遠くもない、そんな位置にいた。
水谷さんの言葉に私が戸惑ってると、
郡司さんがこっちにきて、話を進めた。
ーーただの幼馴染なんでしょ?
ーーそうだけど…
ーーだったら、沙羅が何してもいいよね?
ーーどういうこと?
ーー沙羅と岩崎くんが付き合ってもいいよね、ってこと。
何も言えなかった。
いや、何も言えないのは普通だと思う。
だって、私が口出しすることじゃないから。
溜くんがもし、水谷さんを好きなら
付き合うことを私は反対なんてできない。
溜くんが決めることだから。
水谷さんはほんわかした可愛い人で
私と同じくらいの背だからちんまりしてて
小動物みたいで。
溜くんとおに、あい。
なのに、何でこんなに涙が出るんだろう
どうしてこんなに胸が痛いんだろう




