大切な幼馴染 side和
風邪を引いたのなんて、久しぶりだった。
最後に引いたのは、多分小学校5年生のときだと思う。
あのときも、熱が38度くらい出たんだっけ。
お母さんが、すりリンゴ作ってくれて
そのあと、プリントを届けてくれた溜くんが
玄関で叫んだんだ。
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「かずーーー!早く元気になって、あそぼーねーーーー!」
ビックリして、飛び起きたら
くすくすと笑いながらお母さんが部屋に入ってきた。
「溜くん、面白いわ〜あ、これ溜くんのお母さんからですって。」
渡されたのは、私の大好きなゼリー。
溜くんのお店で売られてるやつ。
溜くんの家は、洋菓子屋さんで
私が遊びに行くとケーキとかプリンとかくれるんだけど、私は果肉の入ったゼリーが大好きだった。
学校のプリントには下手くそな絵にふきだしで
「かず!早く元気になれ!」
と書かれてあった。
「溜くんのためにも、早く良くなろうね。」
「うん。」
「お、かず!おはよ!」
「おはよ、溜くん。」
「元気になっていよかったね〜
かずいないと、やっぱりさびしいもん!」
「溜くんは、私がいないとなんにもできないからね〜」
「そうだよ!」
ニコニコと、本当に嬉しそうに隣で笑う。
「はい!」と差し出された、
私よりもちょっとだけ大きな手。
幼ながらに、ドキドキしながら
その手に自分の手を重ねた。




