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カチャ
「お、まだ仕事してたんか。」
「あ、はい。創作、お疲れ様です。順調ですか?」
「ん。まぁまぁかな。あとちょっと手直しして…
乾くのを待つのみ、ってとこ。」
「間に合いそうですね。」
「まぁね〜」
「沙耶ちゃんも飲む?」と私のマグカップを
あげた。
「はい、いただきます。」
うちの会社には専用のマグカップがある。
青色のマグカップは山風さん。
お揃いのピンクのマグカップは櫻さん。
緑に黄色の模様が入ったマグカップは岩崎さん。
オレンジに茶色のチェックが入ったマグカップは先輩。
茶色にピンクの模様が入ったマグカップは、私の。
「はいよ。」
「ありがとうございます。」
あったかい、ココア。
「ココア、ですか?」
「ん。俺好きなんだよね〜」
意外に甘党。
「ココアはやっぱり〜♬ってやつだよ。」
「ふふ、山風さんって歌上手いんですね。」
「おうよ、甘々ボイスよ〜」
ふざけて、森のくまさんとか歌い出す。
いい声。
「甘々って、自分で言っちゃうんですね。」
「誰も褒めくんないからね。」
「じゃあ、私が褒めてあげますよ。」
「上からきたな〜」
「ふふっ」
「ははっ」
少しだけ、柔らかい雰囲気になる。
コンコン
「あ、沙耶ちゃん、やっぱり居たんだね、明かりついてたから。」
「あ、はい!まだ仕事が遅くて…」
入ってきたのは櫻さん。
カバンを持ってるから、多分もう帰るところ。
「…径くんも、終わったの?」
「…おぉ、明日手直しして乾かす。」
「そ、っか…」
やっぱり、この2人にはなんかあったんだ。
「じ、じゃあ…私、帰るね。お疲れ様です。」
「お、お疲れ様です…」
パタンと閉まるドア。
山風さんは、ジッとドアを見つめていた。
きっかけはわからないけど、
どこかおかしくなった2人。
気がついたら、口が動いてた。
「山風さん、このあと用事なかったら…飲みませんか?」




