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「まだかなぁ…」
「何が?」
「絵画のポストカード、すぐに売り切れちゃうの。
もうすこしで発売開始されると思うから…」
「だったら、売られるところで待ってれば?」
「並んだら、早めに行列ができができちゃうでしょ?だから、あらかじめどこで売られるかはわからないようになってるの。」
「なるほど。」
だったら、整理券みたいなの配ればいいのに。
入場券みたいにあらかじめ配られてたら行列になることもないだろうし。
「沙耶も周りに気を配っておいてね!」
「はいはい」
開始10分前にアナウンスで売られるところは外だとわかり、個展会場はガラ空きとなった。
なんとなく、歩きやすくなった会場をぐるりと見渡した。
陶器も置いてあるが、やっぱり魅力を感じない。
そんなとき、絵のブースにたどり着いた、
大きな絵が飾られてる。
多分、メインの絵なんだろう。
「上手いっちゃ上手いけど…上手いだけだな。」
その絵は、とても上手に「描かれていた」
その奥にも似たような絵が飾られている。
パーとみわたすと、一つの絵が目にとまった。
目立たない、端っこに描かれている一枚の絵。
茜色の空に照らされた海が赤から黒に近い青へとグラデーションされている。
暗く陰りをみせた砂浜を白いワンピースを着た女の人が歩いている。
全体的に暗くて重たいのに、
とても、見やすい絵だった。
赤と青。
対照的なようで、密接しあった色が
ぶつかって喧嘩することなく、程よく調合されている。
引き込まれるって、こういうことを言うんだ。
なんだ、こういう絵もかけるんじゃん。
感心しつつ、後ろに一歩下がると
後ろにいた人とぶつかってしまった。
「あ、ごめんなさい。」
「いや、こちらこそ…」
驚いた。
なにが驚いたって、
男の人がいたこともそうだけど、
ヨレヨレのTシャツとジーンズ、黒色のキャップを
深めにかぶった格好。
たしかに、美術館じゃなくて個展だが、
こんな格好で来た人は初めて見た。