卒業祝い
「そんじゃ、卒業祝いと沙耶ちゃんの歓迎会を始めます。カンパーイ!」
山風さんの声を合図にザワザワと盛り上がる。
コンクールまで3週間をきったというのに、
ほのぼのと開催された。
「櫻ちゃん、沙耶ちゃん、卒業おめでとう!」
「ありがとうございます!」
「ふふ、お互い無事卒業できて良かったね。」
「はい!」
名門大学を出た櫻さんは本当にすごいと思う。
あそこは、ストレート合格が難しいなんて言われてるのに。
本当…優秀な人なんだろうな。
「はい、沙耶ちゃん。」
ぽんと山風さんに渡された細長い箱。
「卒業祝い。」
「えっいいんですか⁉︎」
「そんな大したもんじゃないけどね〜」
山風さんはお酒を飲みながら、
照れたように笑う。
箱を開けると、入っていたのは時計だった。
「も、もしかして…」
「あ、やっぱわかったか。」
ニカッと悪戯っ子のように笑う。
「え、なになにー?」
「これ、山風さんの作ったものですよね。」
「ははっそうだよ。」
カラカラと笑って、お酒を飲む。
動く男らしい喉仏にドキドキする。
コップを持つ、ゴツゴツとした手にも、
ドキドキする。
「えー!いいなぁ、俺も欲しい!」
「たしかに、私たち貰ってないもんね。」
「お前たちには、ほれ。」
「なにこれ…茶碗?」
「そ、夫婦茶碗。」
「ばっ…!バカですか、アンタ!」
「結婚したら使ってくれ〜」
カラカラと楽しそうに笑う。
「や、山ちゃん!からかわないでよ!」
「別にからかってねぇよ〜」
完璧からかって、楽しんでる。
「で、櫻ちゃんにはないんですか?」
「ん?櫻?」
「そ、そうだよ!一番大事じゃん!」
今度は反撃されてる。
だけど、狼狽えない山風さん。
つら〜としてる表情に、私は少しだけ心は痛まなかった。