彼にとっての彼女
「岩崎さんって…先輩のこと好きですよね。」
自分の傷ついた心をかくすように
話題を振ってみたけど…
あんまりいい話題ではなかったな…
「え!」
…でも、岩崎さんがビックリするくらいに顔を赤くして
わたわたと動揺するから。
最後まで聞いてやろー、なんて思う。
いつもは平気な顔して愛の告白してるのに。
「な、なんで?」
「見てて、なんとなく。」
「〜〜〜〜っ…そっかぁ、わかっちゃうかぁ。」
プシューッ
って音が聞こえてきそうなくらい
岩崎さんの顔は真っ赤になって、
へなへなと、デスクに頭を乗せた。
「あ、でも先輩は気づいてないと思いますよ。」
「え、あの超敏感な和が?」
「はい。」
…あれはどう考えても気づいてない。
「そかそか。なら良かった…」
「いいんですか?」
「うん。…幼馴染ってさ、距離感が近いじゃん。」
「はい。」
「何でも言い合えるし、家族同然で過ごしてきて…
俺の中の感覚では、もう兄弟みたいな感じなんだよね。
俺たちの距離ってあってないようなもんだったりするわけ。
遠慮も他の人と比べて、全然ないし。」
確かに、それは感じる。
お互い、言いたい放題だもん。
「だけど、1番遠いんだよ。」
「え?」
「告白一つで全部変わっちゃうんだ。
もし、俺が沙耶ちゃんのこと好きだったら、
俺のことを好きにさせよう、とかいつ告白のタイミングか…とかポジティブに考えられることの方が多いんだ。
…でも、和はそうはいかないの。
もしダメだったら。今まで通りなんて絶対に無理。
全部変わって、全部壊れちゃう。」
岩崎さんの手が震えてる。
先輩も岩崎さんのこと、多分好きだと思うんだけど…
やっぱり、すんなりいかないよね。
…面白半分で聞こうと思っちゃって、とても失礼なことしてしまったな…。
「すみません、軽い気持ちで聞いてしまって。」
「ん?いいのいいの。逆にスッキリしたし!」
明るく振る舞う岩崎さんだけど、
きっと、たくさん傷ついたんだろうなって…
私でもわかった。