3
ガチャ
「ふぃ〜っ重たい！」
「お、おかえり〜おつかれ！」
「もう！ただでさえ重いのに増やすから！」
「あらあら、あんまり文句言ったら沙耶ちゃんが肩身狭くなっちゃうでしょーよ。」
「ごめんなさい、私がお昼あまり食べてなかったので…」
「沙耶ちゃんのせいじゃないよ！
元々買い出しが多かったから。」
「さっ、沙耶ちゃんは気にしないで！」
先輩はルンルンといった表情で袋からお弁当を取り出した。
「え、和、そのお弁当は…」
「いいから、あんたはこっち食べなさい。」
「でも…」
パキッと割り箸を割った先輩のお弁当は
野菜がたくさん入ったヘルシーなお弁当。
OLさんが好きそうな感じ。
一方、先輩におしつけられたお弁当をもつ岩崎さんのはお肉がたくさん入ったスタミナ弁当。
なにもおかしいことはないんだけど、
岩崎さんの表情からすると、当初の予定では2人のお弁当は反対だったんだろうか？
「あ、沙耶ちゃんはこれでよかった？」
「あ、はい！」
私にお弁当を手渡した岩崎さんは
「山ちゃん呼んでくる」と言って事務所を出た。
「…あの、先輩。」
「ん？」
「岩崎さん、なんか納得してませんでしたけど…」
「あーいいのいいの。
あの人には今肉が必要だから。」
よくわからなかったけど、
先輩は岩崎さんの体に気を使ったのだろうか？
「お、沙耶ちゃん来てたんだな。」
「はい！こんにちわ。」
「こんちわ。」
山風さんは、空いている私の前のデスクに座ってお弁当を広げた。
「おっうまそー。」
「あんたは何でも美味しいじゃん。」
「んなこたねぇよ。虫は食べらんねぇし。」
比べる対象が違うと思いますが。
「そういや、珍しいよね。山ちゃんがお弁当頼むなんて。」
「そりゃそうでしょ、櫻ちゃん今レポートで大忙しなんだから。」
「あ、そっか。だから最近来れてないんだ。」
「課題も多いみたいだし、山風さんの相手する時間もないんじゃないのー」
「うるへー」
ほっぺたがパンパンになりながら食べる山風さん。
リスみたいで可愛い。
「でもあれだねー、櫻ちゃんいないと覇気がないね。」
「溜くんの相手してくれるの、櫻ちゃんしかいないもんね。」
「和が冷たすぎるんだよ。」
「馬鹿を相手するほど暇じゃないんで。」
「もぉ、バカバカ言わないでよね！
ちゅーだってした仲なのにさぁ。」
「ち、ちゅー⁉︎」
「沙耶ちゃん、相手にしなくていいよ。
幼稚園の時の話だし、不慮の事故。あんなの犬に噛まれたようなもんだから。」
「ひどーい！」
とかなんとかいいながら、
すました顔する先輩の耳はびっくりするくらい赤い。
照れ隠しだということ、岩崎さんも山風さんもわかってるからか、ニコニコしながら先輩を見てた。
「何見てんの、変態ですかおじさん2人組。」
とても口が悪くなる先輩を…。
