2
「うわー多いね〜、やっぱり。」
「さすが、藤谷楓!」
物凄い数のファンの行列。
なんかよくわからない、藤谷楓等身大パネルが
3つ、4つ…
それに群がって写真を撮る人たち。
…これ、個展っていうのか。
「そういや、個展って沙耶のおじいちゃんの時以来かも!」
「確かに…私もだ。」
「沙耶のおじいちゃん、すごかったよね〜
大きな木を切って一つの作品にしたりさ!」
「60を超えてチェーンソー振り回してたからね。凄いよ。」
そのおじいちゃんも、4年前に亡くなって…
すっかり芸術の世界は色味を失った。
そんなとき現れた藤谷楓。
若くてイケメン。
ただそれだけでここまできた男。
それが、まさか…
*********
「あら、個展の入場券?」
「そう、円に誘われて。」
「へぇ、お父さんが亡くなってから、すっかり芸術の世界からは興味なくしたのかと思ってたけど…
あら、楓くんじゃない。」
「え、知ってるの?お母さん。」
「えぇ、だって。
昔、お父さんのお弟子さんだったの。」
「おじいちゃん、弟子なんてとってたの⁉︎」
「そうよ〜10人くらい居たけど、お父さんが厳しくて何人もやめて…
結局残ったのは2人。そのうちの1人が楓くんだったの。」
「へぇ、根性あったんだ。」
「うーん…根性っていうか、打たれ強かったわ。
怒られてもへこたれないというか、動じないというか…。」
それって…逆にダメなんじゃ…
「ま、そんな彼もここまで大きくなったのね!」
「…あとの1人は?」
「そうねぇ…物凄い才能があって、お父さんからも一目置かれてたんだけど、名前が出てきてないからね。芸術家、やめちゃってるのかも。」
「ふーん。」
********
お葬式に来てたらしいが、
全くもって覚えていない。
まあ、おじいちゃんが亡くなったショックでずっと泣いてたせいかもしれないけど。
「沙耶!もう入れるよ、行こう!」
「あ、うん。」
おじいちゃんのお弟子さんだったんだもん。
顔だけじゃないはず。
と思って見てみたけど…
「見て、沙耶!素敵だね、このコップ。」
確かに綺麗なコップだと思う。
下は透き通るような青。
段々と上に上がるにつれて青は薄くなっているが、
鮮やかさは失われておらず、キラキラしている。
だけど、それだけ。
もし、このコップが10万で売られていて
隣に100円のコップが置いてあったら、
私は迷わず100円のコップを選ぶ。
わいわいと騒ぐ大勢の人。
円も含めて、彼が作ったものじゃなかったら、
コップ一つで、絵一つで…
素敵なんて感情一つも出てこないはずだ、
本当に素敵な作品は、言葉も出ないようなものなんだから。
藤谷楓には申し訳ないけど、
なんの魅力も感じない。
なにも、伝わってこなかった。