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「だって、名前言ったら皆きょとんとするんだもん。
恥ずかしいったらありゃしない…」
恥ずかしくなるような名前…
鬼子、とか?
それとも、とんでもなくキラキラネームとか?
確かに、言いたくないかも。
「まぁまあ、怒るならあの人に怒ってください。」
肩が笑ってます、先輩。
「もぉ…。」
工藤さんは、もじもじして
下を向いたまま顔をまだ赤くさせていた。
よほど恥ずかしい名前なんだろう。
大丈夫です。
笑いません。
覚悟もできます。
笑顔の。
「沙耶ちゃん、笑わない?」
「わ、笑いません!」
「…く、工藤…」
工藤…
「工藤、櫻です。」
さくら?
「可愛い名前じゃないですか。」
「あら、沙耶ちゃん気づかない?」
「え?」
きょとんとしたのは、先輩のほうだった。
「うちの会社名。」
「えっと、Sakura…あー!」
「ほら、だから恥ずかしいんだよ、もう!」
また真っ赤にさせる櫻さん。
「いやー可愛いな〜櫻ちゃんっ」
「もー!」
「まぁまぁ、この会社名つけたのは山ちゃんだし仕方ないよ。」
「岩崎くんだって見たことあるでしょ?打ち合わせするときに名前言うときょとんとして、そのあと怪訝な目で見られるんだから!
どんだけ自分が好きなんだ〜みたいな!」
「そんなことないって!大体、そばに山ちゃんがいるじゃん。」
「そーそー、どちらかというと山風さんのほうに冷たい目がいくんじゃないの?どんだけ好きなんだ!みたいな。」
「うー…それもそれで恥ずかしい…」
「好、き…?」
「あぁ、沙耶ちゃんにはまだ言ってなかったね。
山風さんと櫻ちゃんはウザカップルです。」
「ちょっと!ウザカップルって!」
「まぁ、訂正すると、ウザいのは山風さんです。」
段々と体が冷えていくのを感じた。
頭がボーっとしてくる。
「まぁ、高校のときからラブラブだったよね。」
「山風さんがくっつきすぎなの。
私の櫻ちゃんなのに…」
「もう、そんなんじゃないってば…」
「お、噂をすればウザい人のおかえりじゃない?」
「ちょっと和!」
痛みが増した心に追い打ちをかけるように
思い人が登場した。