秘書さん
事務所に戻って、
先輩と岩崎とお話。
…よっぽど暇なんだと思う。
ガチャッ
「遅くなっちゃった!面接の子帰っちゃった⁉︎」
「おっかえりー!まだいるよ!」
「こちら。松川沙耶ちゃん。」
走ってきたのだろうか。
肩で息をして、少し髪が乱れている。
長くて綺麗な髪。
大きな瞳にすっと通った鼻。
ぷっくりとした唇。
真っ白な肌。
この人が…秘書さん?
「どうもはじめまして!」
「は、はじめまして!」
「山風の秘書、というかマネージャーさせてもらってます。工藤です。」
工藤、さん。
スラッとしてるけど、身長は私とあまり変わらない。
思ったよりも小柄。
そんでもって、想像してたよりも
ほんわかした人だった。
「会えて良かった!どんな子なのか聞いても教えてくれないんだもん!
今日は早く帰ろうって思ってたんだけど、
よりによって教授に呼び出されちゃって。」
「なんか悪いことでもしたの?」
「もう、和ちゃんからかわないでよ。
そんなんじゃなくて、この会社で働いてること色々聞かれたの。
勉強に支障はきたしてないのか〜とか。」
「そういう文句、成績見てから言ってくださーいだよね!」
「なんでアンタが得意気にいってんのよ。」
「なんとなく!」
岩崎さんに工藤さん。
山風さんもそうだったけど、この会社にはホワホワした人が集まりやすいらしい。
違うのは、私と先輩くらいか。
「それより〜苗字だけ言うのはどうなの〜?」
「確かに!名前も言わないと、沙耶ちゃん気になっちゃうよ。」
先輩と岩崎さんは互いに顔を見合わせて
「ね〜」と言った。
確かに、気にならないと言えば嘘になる。
そんな2人の言葉に工藤さんは一気に顔を赤くした。
それはもう、茹で蛸のように。




