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「えっと、まずはこの事務所。
主に、私と溜くんがここを使ってます。
ここが私のデスクで、こっちが溜くん。
んで、沙耶ちゃんにはこのデスク使ってもらうね。」
「はい。」
「さっき座ってた椅子は来客用。
依頼を受けたり、打ち合わせのときに使うところね。
まぁ、基本的暇なんでベラベラしゃべってます。」
「…はぁ…」
「で、次はこっちの部屋。
向かいのドアは山風さんのアトリエ、で隣の扉は作業部屋。絵以外の作品はここを使ってるの。
んで、事務所の隣の部屋は会議室。
まぁ、私たちが会議するところ。」
「ま、入ってみよーよ、会議室。
アトリエと作業部屋はだめだけどさ。」
「ま、そだね。」
確かに、本人不在で無断に入るのはダメだよね。
わかってても、ちょっと寂しい。
…というか、山風さんがいないことが寂しい。
「会議室って言っても、テーブルにパイプ椅子を並べてホワイトボード置いただけなんだけど。」
「まあまあ。沙耶ちゃんが来るから、パイプ椅子一つ用意しときました!」
「あ、ありがとうございます!」
新たな一員として、ここにくること。
改めて実感する。
「んで、そのまた隣が秘書室。」
ドクンッ
「まぁ、俺らはあんまり入んないんだけどね〜」
「当たり前でしょうが。」
「まぁ、ここも本人がいないんだけどね。
入っちゃおうか。」
「え、いいんですか?」
「本人がいいって言ってたし、いいんじゃない?」
「そーそー!入ろう!」
「なんでアンタがワクワクしてんの。」
「だって、あんま入ったことないんだもん。」
「まあ、用もないしね。」
岩崎さんはワクワクした表情でドアを開けた。
私のほうはというと、胸の音がものすごくうるさい。
「まぁ、なんだかんだ秘書室が一番小さいんですけど…。」
たしかに、他の部屋に比べてちんまりしてる。
だけど、奥にある茶色のデスクと難しそうな本が入った本棚。
分厚いファイルがはいった棚。
そんで、いかにもできそうなパソコンと
その上に置かれた多分、パソコン用のメガネ。
「秘書っていうか、主に彼女は山風さんのマネージャーみたいな仕事してます。」
「バリバリ仕事できるからね。」
円の言ってた通りだ。
「一応、まだ現役女子大生なんですよ。」
「え、そうなんですか⁉︎」
出てきた大学名は、名門中の名門。
めっちゃ頭いいし、そんでもってお嬢様じゃないと入れないような…
「そこの経済学部だから、めっちゃ助かってるんだよね〜」
…円さん。
めっちゃ凄い人みたいですよ、秘書さん。




