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短編集

fight&fight

作者: 川崎鉄馬

参考までに二人のスペックを記載。お手数ですが見たくないという方は本文までスクロールなさってください。


名前『鉄拳くろがね こぶし


 全体ランク:S

 体力:S

 知力:A

 攻撃:S

 防御:S

 運勢:D

 敏捷:A

 精神:S


 総評:退魔師見習いの作品『覇王の背中』から登場。身体能力が全て高水準。ただし超能力らしい能力がないので、そこが弱点と言える。


 キャラ:十六の時、日本全国を二年かけて歩いた。日本最強の日本男児。年齢は十八だが、2メートルはあるだろう長身と大岩のようにごつい身体付きは成人のそれを遥かに上回る。強い者と対決するのは楽しいと思う半面、一対一、一般人には手を出さない事を信条とする。口数は少ない。一人称は俺。髪は坊主に近い。


 特殊能力:

 『怪力』

 道路標識などを引っこ抜き、武器にする事ができる。


 『一撃昏倒の構え』

 俗に後の先と呼ばれる。相手が素手技及びただの武器振り回し(超能力の介入しない、人ができる常識的な動きに限る)だった場合、それをほぼ確実に見切り、急所にカウンターを繰り出す。しかし鉄拳本人は、あまりこの技を多用しない。



名前『香島かしま雅信まさのぶ

 全体ランク:S

 体力:C

 知力:A

 攻撃:S

 防御:B

 運勢:A

 敏捷:C

 精神:A


 キャラ:異能力バトル&恋愛モノ、『アザレア』の主人公の父。ルーン魔術を使う魔術師。身長は183cm。黒を基調としたダブルピースのスーツを着こなすダンディな親父。黒髪をオールバックにしており、やや白髪混じり。

 

 特殊能力:

『ルーン魔術』

 主にルーンを掘り込んだコインと靴の底に刻んだルーン術式を用いて戦う。

 コインの用途はおもに、投げつける・相手の懐に忍ばせる・地面にまいておく、など。一歩たりとも身動きできなくする「Rラド」、地面において地脈からのエネルギーを吸い取って時限爆破を起こす「U(ウル)」、所持者に不幸な結果をもたらす「Pペオーズ」がある。

 靴の方は右足にある程度の呪い(Aまで)ならば解呪できる「Tティール」、任意の相手を仮死状態に追い込む呪い「Yユル」がある。靴の使用方法はおもに相手を見据えながら鳴らすだけ。ユルの仮死状態の効果時間は特になし。一度発動してしまえば誰か他の人に解呪してもらう他は手立てがない。が、基本的に呪いであるため呪詛返しや発動前に手を打っておくことは可能。

その他ルーン文字を所持。


 バトルって良いよね。

 時間と空間から隔絶された神の、そんな思惑からキリングゲームはスタートした。

 まさに戦々恐々とした闘技場の一角。幾つか店が並んでいる中の、とあるおでん屋台で、一人の男が酒に湿気混んでいた。仕立てのよい革靴を履き、これまた質の良さが見えるダブルピースのスーツを着た男はおおよそこの場に似つかわしくない。異質な気を放つその男は、白髪混じりの黒髪を後ろに撫で付けながら、チビチビと熱燗を舐めている。目は備え付けられたブラウン管に釘付けだ。

《勝者、香島湊!》

 勝敗が叫ばれ、観客席からは盛大な賛辞が鳴り響く。男はフッと小さな笑みを浮かべて、視線をテレビから外した。

 自身が経営する靴屋の店終いをしていると、突然この珍妙奇天烈なコロッセオに連れて来られていた。主催者曰くあらゆる世界・時間から人物が召喚され、この地下闘技場で戦わなければならないらしい。甚だ遺憾でイカれた催しではあるが、とりあえず旨い飯にありつけるとあって現在に至る。加えて思わぬ特典がついていた事も理由として大きい。息子の存在だ。

 常の姿は見慣れているが、こうして戦う姿を見るのは初めてのことだった。ひ弱な幼少の頃とはうってかわり、堂々とした姿に親である香島雅信は嬉しさ半分、戦いになれさせてしまったことに罪悪感半分の心境を抱く。

「ソイツとは知り合いなのか」

 隣を見ると、大きな男がコップ片手に座していた。雅信自身は百八十三センチあるのに対して頭一つ分以上、男は大きい。ゆうに二メートル以上はあるだろう。まさしく岩石からその肉体を切り出したといってもよい程、筋骨粒々としている。顔も厳つい出来だが、何故だか服装は学生然としたシャツとズボン。首には青いスカーフを巻いてある。

 雅信は苦笑いを浮かべた。

「ええ、(せがれ)ですよ」

「なるほど。御子息だったか。……先の勝負は見事だった」

 男はあまり他人と語ることに慣れていないのか、自身の手に持ったコップを見つめたままにゆったりと、淡々と感想を述べた。そして中身を一口に煽ると、屋台の店主(おやじ)に冷やのお代わりを頼んだ。

「酒はお飲みにならないのですか?」

「……酒は嗜まん。元より、未だ成人していない身なのでな」

 これには雅信も度肝を抜かれた。どう見ても四十半ばは年の頃を回っていると思っていたからだ。下手をすると自分よりも年上だと勘違いしていたほどだ。

 疑っているのが表情に出たのだろうか。男は眉を潜めてこちらを向いた。不機嫌を露にしたその顔付きは肝を冷やすほど恐ろしい。

「あぁ、ハハ。いやこれは失礼した」

 雅信の謝罪に免じたのか元の強面に戻った。そして冷やを一口、口に含むと疑念を浮かべて問いかけた。

「それにしても何故録画放送を? 今行われているものを見て敵の力を知った方がよいのでは?」

 雅信はそれに対して今度は乾いた笑いと笑顔を溢した。目尻は平坦なまま。瞳は深い黒に染まっている。

「いやいや。息子の晴れ姿を見る方が余程有意義ですので。まぁ大概の相手ならば勝てますのでお気遣いなさらず」

 雅信の挑発に男が口角をあげて答えているとどこからかアナウンスが流れた。

《では次の試合、香島雅信vs鉄(くろがね)(こぶし)を開始しますので両選手はセットアップお願いしまーす》

 やっと出番かと雅信が立ち上がると隣の男も腰をあげた。もしやと男をみやると、男の方もこちらを向いている。心なしか、少し驚いているように見えたが--それはハッキリとした笑みに打ち消された。どちらからともなく手を差し伸べ、握手を交わす。

「これも縁か。よろしく頼む」

「あぁ、いやこちらこそ。お手柔らかに頼むよ」

《それではー、転送カウンダウンッ! スリー、トゥー、ワン――ゼロ》

 気づけば場所が移り変わっていた。どうやらコロシアムの入り口らしい。気を取り直し、親としても魔術師としても恥じない勝負をしようと磐石の心持ちでゲートをくぐった。

《さてさて、今回のフィールドは江戸城下町! とは名ばかりの某映画村デス。さぁさよってらっしゃい見てらっしゃい! Sランク同士の大一番だよ!

サマライムービーショーダゼィ! お二人様、ready? そいじゃまあ、れっつ! すとらごぉぉおおる!》

  ゲートをくぐった先にはどこまで続いているのだろうか、古い日本の町並みが再現されていた。あまりの出鱈目さにすこしばかり呆然としてしまう。そういえば昔はよく(息子)と遊びに来ていたことやあの頃はまだ車椅子に乗せていたこと、稜子さん()との最初のデートも映画村だったことなど思わず感傷に浸って現実逃避してしまう。一体どれ程の力を宿しているのか、このコロシアムに連れて来た少女を頭に浮かべるが、考えたところで詮無き事だとして一先ず佇まいを正す。雅信は長屋の影に隠れるようにして更に奥へと行く。とにもかくにもまずは敵の能力を推察するにかかった。

 少女のアナウンスや鉄君の体躯から想定して、明らかに魔術師等間接的な異能力を操るものではない確率が高い。勿論そうでないことも考えられるが、そちらの場合だとまず勝てるだけの装備があるので問題はない。厄介なのはむしろ物理的な戦術を主軸にしているタイプである。鉄君はこれに類すると考えられる。魔術、特に相手に害をなす交感魔術といったものは基本的にミサイルのようなものである。安全圏内から相手が気づかないうちに確実に仕留める。それが魔術や呪術の利点である。故に、直接面と向かって戦うにはやや分が悪い。雅信は生憎と息子のように格闘技は習得しておらず、霊力による肉体強化も可能ではあるが、それもそこが知れている。まずは隠れ、こちらが先に位置を把握せねばならない。概ね方針が決まると、魔術を行使するべく懐に手を入れて小さな金貨を三枚取り出した。

 両脇に店が立ち並んでいる、少々開けた道に出たとき上からなにか妙な音がした。まだ魔術は行使していない。もしや攻撃かと思い、見上げるや否や突如として雅信の横、三メートルにて道が弾け飛んだ(・・・・・)。突然のことにやや面食らいつつも、そこは冷静さに努めて、立ち上がる煙と破片に顔を隠しながら弾けた方を見る。そして、愕然とした。

 木製の看板が土に深々と突き刺さっていた。立っているのではなく、文字通り突き刺さっている。デフォルメされたキャラクター(蒔菜)の顔が半分ほど地面にめり込んでいる。

 雅信は敵の力量を想像して冷や汗を流す。迫りくる悪寒が、投げてきた方向に自然と顔を向けさせた。前方、距離にして七十メートルだろうか。大男がいた。肩に看板を担いでこちらに向かってくる。淡々と、そして堂々と。大虎が悠然とその足を進めるように、雅信との距離は縮まっていく。そうして距離が五十メートル程に差し掛かったあたりで、鉄が吠えた。慟哭のようなものではなく、ただ静かに声を張り上げた。

「さて死合おうか」

 魔術師としての未知なるものへの知識欲か、はたまた男としての闘争本能故か。いずれにせよ今から逃げて隠れるには遅すぎることから真っ向勝負に出ることにした。

「あぁ、その前に。折角だからお互い名乗りを上げておこうじゃないか。私は香島雅信。ルーン文字という力持つ言語を扱う魔術師だ」

「これは申し遅れた。鉄拳(くろがねこぶし)という者だ。我流で鍛えている。魔術か。にわかには信じがたいが……幸運にも先ほど経験したばかりなのでな」

 鉄鉄は獰猛な笑みを湛えて体をしならせる。そしてその手に持った看板を掲げる。再び投擲する体制に入ったようだ。雅信は、すかざず懐から三枚の金色のコインを取り出した。コインには「U」のような文字が描かれている。先ほど取り出したコインを含め計六枚のそれを、雅信は眼前五メートル先に無造作にばらまいた。

 鉄の手から標識が弧を描いて投げられる。人間が投げたとは考えられないような風切り音を伴って、看板が魔術師(まさのぶ)に差し迫る。雅信は自身に向かってくる看板(やり)をしっかりと見据えた。

 たったそれだけのことで、突如として看板が和紙を丸めるかのように潰れて宙を跳ねる。球状に丸まったそれはまるで鞠つきのように、雅信の頭上を通り過ぎていく。吹きすさぶ風に髪を靡かせながら、雅信は静かに微笑む。これには思わず鉄も目を向いた。

 しかして直ぐ様、鉄は側の茶屋にあった割り箸を十ほど掴み、投げた。確固たる速度を持って飛来するそれはもはや各々が手裏剣のようなものである。しかして雅信は動じる素振りさえ見せない。小さく苦笑いを浮かべるばかりだ。

「まるでハルクだねぇ」

 さらなる魔術で応戦する。懐から一枚のコインを取り出し、雅信は徐に空高く投げた。すると金属製のコインが火炎を上げた。次いでライフル弾のように回転、誘導爆撃のようにホーミング。空から割り箸手裏剣の群に突撃する。二つが交差した瞬間、焔が膨れ上がり、空中には塵だけを残した。

 ここぞとばかりに魔術師は攻撃に転じる。雅信は続けざまにコインを三枚投擲。刻まれた字は「U」である。

 鉄は直に触れることを避けたのか、首に巻いてあるスカーフを紐解き、鞭のようにしならせ、脇道へコインを叩き落した。コインが地面と接し、爆破。粉塵が舞いあがる。雅信はならばとばかりに大振りに両腕を交差させてさっと広げた。袖口から大量のコインが放出される。その数およそ二十。文字は「U」と「く」。爆撃と凶弾の雨が降り注ぐが、それでも鉄は恐れず退かず冷静さを保ち、体に当たるものとそれ以外をみて叩き落さんとした。空中にて軌道が変化する「く」のコインにその身を浅く焼き裂かれつつも、的確に対処していく。金属の雨は地面に落ちた端から爆風、粉塵を巻き上げる。雅信もこれには舌を巻いた。おおよそ異能力者の彼の目から見て、鉄という人物は微量たりともなんらかの能力を有してはいない。そんなものなどなくとも、あまりあるほどの状況判断能力とそれを基に建てられた思案を着実にこなす技量を持ち、それでもってここまで練り上げている。

 彼の真の恐ろしさは怪力などではなく、見た目に反して持つその知性と技術である。

 すると突如鉄は踵を返して離れて行った。まずいと直感的に悟った雅信は投擲をするが、ひらりとかわされてしまった。遁走にひた走り、いずこへかと消えていく。彼の速度には到底追いつけないことは明々白々であることから、雅信は整った髪をなでつける。策略を組まれることを危惧し、厄介なことになってしまったと靴音を響かせながら魔術師は独りごちた。

 香島雅信はルーン文字を扱う魔術師である。ルーン文字というのは古代北欧の民が用いていた文字であり、その文字一つ一つに意味がある。例えば、(ウル)は野牛・成功を意味する。ある程度の犠牲を払う代わりに成功を得るとされている。戦闘において主に地脈に流れる霊気を吸収して爆散する。(ケン)は火や解放を意味する。ルーン文字や魔術はその多種多様な意味を使用者のイメージに沿って解釈できるのが利点だ。雅信の知り合いにおいては剣や弾丸に刻み込む奴もいるが生憎武には疎いために使用していない。

 基本的に魔術は地脈から流れる霊気を活用することもできるが、主に用いられるのは体内に流れる霊気と魔力である。その点、文字その物に魔力が宿っているルーン魔術は持久性において優秀である。

 しかし決定打に足りないと雅信は杞憂する。戦闘用にイメージを定着させてはいるが、所詮は呪い。力無き人間が振るうには直接的殺傷能力としてはいかんともしがたいのが実状だ。それを解消するためのとっておき(・・・・・)はあるが現在使いづらい。これはどちらかと言えば戦いよりは「殺し」に重点がおかれているからだ。今の戦闘においてはあまりにも無粋すぎる。

 一つ溜め息をついて紫煙を焚いていると、鉄が姿を現した。仏頂面のままに、その手にはどこから調達したのか一本の槍を持っていた。

「かくれんぼは終わりかい?」

「ああ。十分に準備はできたからな。ここからは正面突破の一騎打ちとさせていただく。貴方も手加減無しで構わない」

「ん? いや手加減していたつもりはないよ」

 構えに入っていた鉄は怪訝な顔をした。不意打ちの可能性はないと見たかすぐに臨戦態勢を解いた。

「そうか? どうも先の攻撃が手の内すべてとは考え難いのだが」

「手心を加えてはいたが手加減はしていない。そも、力を抑えなければ勝負にならないからねぇ」

鉄もこれには眉を潜めるばかりか怒りの形相を垣間見せた。自身の力量が遠く及ばないと面と向かって言われては無理からぬところである。

「聞き捨てならんな。俺にも武人として誇りがある。挑む前からそのように罵るのは辞めていただこう」

「ん? あぁ、こりゃ失敬した。しかしまぁ、事実だからねぇ。現に今すぐにでも君を殺せるが?」

 事もなし気に雅信は語った。それには過去の経験に基づく力量が垣間見える。

 鉄は無骨な表情を戻し、大地を揺るがさんばかりに地を蹴って迫る。やはり来たかと努めて冷静にコインを三連投擲。空中で発火・炎上したコインは火炎を振りまきながら鉄に襲いかからんとする。刻まれた文字は「(ケン)」である。

 鉄はこれを槍術の要領で弾く。近接戦闘に切り替えるため間隔を詰める。右腕と右足、左腕と左足を交互に動かす。日常的にはあまり見慣れない歩法。俗にいうナンバ走りと言われる、明治維新以前の日本人の動きであり、日本武術にとっては基本となる動きである。速くはない。しかし緩やかに、早い。矛盾であるかのようなその動きは一歩辺りの間隔があまりにも早く、そして広い。加速度的でなく、等加速度的な運動による感覚のズレにより、圧倒的な速度で迫るように錯覚してしまうのが、この技法の恐ろしさである。

 あっという間に両者の距離は縮まる。鉄は勢いをつけたまま槍を突き出した。雅信は身をひねりなんとか回避しようとしたが脇腹を裂かれる。苦手とする近接戦闘が来たことに若干苦い顔をしつつも雅信は、再度「U」のコインを投擲。コインは弾かれるが、爆発する。その隙を狙うしかあるまい。この類稀なる怪力を持つ青年も人間のはず。であるならば当たれば相当な傷を負わせることができると思われた。

 しかし、それは叶わない。

 とっさに鉄が腕を振るった。それだけでコインの軌道は変わり、地に落ちる。さらには、雅信の目に激しい痛みを伴わせた。小石か砂か。見てくれからは考えられないが、鉄拳は頭が回る男であった。思いもよらぬ搦め手に雅信はやや怯む。そこから一秒にも満たぬ間が生じた。魔術を行使するにはあまりにも短く、死するには充分な時間。

 しまった。そう考えた時点ですでに遅い。鉄がその体躯を十全に活かして放った正鉄突きは雅信の胸を直撃した。藁束が空を飛ぶように吹っ飛ばされる。山なりの軌道を描いて地面を跳ねる。魔術師は動かなくなった。

 勝負は決したかに見えたが、鉄は依然として眉を潜めている。

 体が動かないのである。

「足元を観てみるといい」

 魔術師に言われるがまま足元に目を向けてみると一枚のコインがあった。

R(ラド)と呼ばれる文字でね。移動を意味する文字だ。戦闘においては相手を動かさなくする目的で用いている」

 雅信はゆっくりと起き上がると、体に着いた砂埃を叩いて落とした。その様子からダメージはさほどないようにも見える。

「た、確かに手ごたえはあったはず」

「ああ、直撃だったよ。今も痛みを緩和しているが肋骨四本ほど折れてるね」

 さて、と一言漏らす。

 魔術師はまっすぐに目の前の人間を見据えた。

「使わないと決めていたんだがね。ここは一人の大人として世界の広さを見せてやることにしたよ」

 雅信は鉄をまっすぐに見据えたまま靴を鳴らした。すると、鉄はたちまち苦悶の表情を浮かべ地に伏せた。

「苦しいだろう? Y(ユル)は死をつかさどる。相手が異形の者であろうとなんであろうと殺す呪いの言葉さ。まぁもっとも私は殺しが嫌いだから仮死状態にとどめているがね」

 魔術師は感慨深げに煙草をくゆらせて戦場を後にした。

 




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