異世界で婆さんが無双・・
いまとある病院の一室で1人の少年の命が尽き、天界に召されようとしていた。
少年の人生は、入退院の繰り返しで晩年は病室に籠りっきりだった。
少年のささやかな楽しみは、オカルト。
とりわけ、オカルトでは自作の御札を作ることが大好きだった。
特に漢字は、大好きで、これ以上の魔術文字はないと思っている。
漢字は、音と意味を一つの文字で含む。この世の理をリズムと例えるならば、音読みがリズムであり、訓読みがその理の内容を物語っている。
そして少年はいつも、自分が死んだら剣と魔法の世界に行きたいと願っていた。
そして今日、自身の体を魂だけになった自分が見下ろしているのをみて、少年は自らが死んだことを知る。
魂だけの自分はどんどんと上昇していき、雲の中に入ったかと思うと辺り一面の白い世界に佇む。
そして声が響いた。
「少年よ、汝の願いは聞き届けた」と
「あなたは、誰ですか?」
「私は、冥土の神、エツコ。汝の望みを叶えよう」
「ほんとですか、ありがとございます」
「叶えられる望みは3つだ。」
「では、世界に遍く法則を漢字で表してその力を使えるようにしてください。ちなみに、書く漢字は金文でお願いします。」
(金文とは、漢字の祖。古代中国の青銅器の表面に書かれた象形文字である。)
「いいじゃろう。お主にその能力と膨大な魔力、そして金文の知識と書道セットもおまけで授けよう。」
(以下、金文魔法と呼ぶ。)
「ありがとうございます。2つ目の願いですが、自分で寿命を決めるまで、不老不死にしてください。」
「面白いのう、よかろう。ついでに、身体も丈夫にしておこう。」
「最後に3つ目ですが、望む姿に変身できる能力を下さい。」
「限定的な、変身の能力なら授けてやれるが・・」
「どんな限定ですか?」
「まず、その世界に存在する。もしくは存在した者にはなれぬ。異世界か空想の中での者にはなれるぞ。ただし、能力はついてこない。姿形だけじゃ。そしてなにより、その姿になってからは、1000年は姿を変えられぬぞ。」
「はい、それで結構です。」
「それにしても、可笑しな願いじゃのう。もう能力は授けたから、頭の中で姿をイメージして変身と言えば、変身する。どう使うかみせてくれぬか?」
「わかりました、それではさっそく。”変身”」
変身という言葉と共に、身体を眩い光が包み込む。
一頻り光ったあとそこに佇んでいたのは、灰色の髪を肩で束ねた一人の老婆だった。
「・・・・・・ 人には、いろんな趣味があるからのう・・ 女装で老婆趣味とは・・・」
「いや、これにはわけが・・・」
「どんなわけがあるのじゃ?」
「実は、ロ〇の紋章のキャラでポ〇ンというキャラがいるのですが、そのイメージの最中に有名な戦闘の話しを思い出して、その時の光景ででてきたチ〇ンばあさんを最後にチラっと思い浮かべてしまいまして・・」
「それで老婆か・・。」
「はい・・・ ちなみにやり直しってできます・・・?」
「できぬのじゃ、とりあえず1000年その姿で過ごすがよかろう。」
「・。・・・・ わかりました・・」
「まあ、せいぜい自由気ままにやって我をたのしませてくれ。最後に餞別で、その世界の魔術師が使う装備と多少の金。そして目覚めたら適当な森の中にしておくのじゃ。」
「ありがとうございます。ちなみに異世界ヘの転移なんですが、少し待って頂いてもいいですか?」
「どうしたんじゃ?」
「行く前に、能力の確認や装備の確認をしたいんです・・」
「よかろう。準備ができたらまた声をかけるとよい。ちなみに、お金や魔法についてはしおりにしておいたから、それを読めばよかろう。」
◆ 以下、主人公の貰った能力や餞別まとめ ◆
名前:ミチル
能力:金文魔法・限定的な不老不死
装備:樫の杖・ただのローブ・ただの革靴・ただのチェニック・ただのケープ・霊符台帳・書道セット (消耗品は自動補給)・麻のリュック (四次元カバン)
容姿:ロ〇の紋章にでてきたチ〇ンばあさんに似ている。身長は、140cm。髪は銀髪で肩まで伸びている。
どもとりあえずは、荷物や能力の確認をしておきますか。
神様からもらった麻で出来たリュックの中を漁ると、書道セット・財布・旅のしおり(神様著)が。まずは、しおりを読む。
◆ 旅のしおり ◆
1:お金について
お金の種類は、金貨・銀貨・銅貨があり、それぞれ100枚づつで硬貨のランクが繰り上がる。
1金貨=100銀貨 1銀貨=100銅貨 ちなみに、1銅貨は、100円相当の価値。
2:金文魔法について
紙などに書いて、お札にして使ってもよし。装備に書きこんで、装備に付加価値をつける事もできる。
また、霊符台帳に考案した御札を登録しておくと、装備の前掛けからお札の形態で取り出すことができる。文字の組み合わせとしては、属性と形態を合わせて書くか、熟語を書くなど多彩な使い方ができる。
3:この世界の魔法について
この世界の魔法は、ルーンを用いる魔術式とルーンを使わない共感式との2種類が存在する。ちなみに前者を魔術師、後者を魔導士と呼ぶ。
ルーンによる術式は、長い歴史の中で培われた魔術語を用いて術式を組むもので魔力があれば、だれでも習得して使える。
それとちがって共感式には、、特定の呪文や魔法陣は存在しない。世界に満ちる魔力と己の魔力を共感させて魔法を行使する。故に、個人ごとに発動方法がことなり、呪文をつかったり、図形をつかったりと様々。
この2つの違いは、ルーンによる魔術式がソフトウェアをつかってパソコンを使うようなもので、共感式がソフトウェアを自ら組んでより高度にパソコンを使うようなものである。
ちなみに、金文魔法は魔術式と共感式を統合したような魔法形態である。
一通り荷物を確認したあと、火の系統で攻撃用の御札を何種類かと、支援用のお札を書いておくことにした。
◆ 霊符台帳に書き込んだ金文 ◆
火焔矢 火焔散舞槍 火焔陣 解毒 治癒
火の系統なので接頭を火焔、形態を顕す接尾を3種類書いてみた。矢は、魔法が矢のように飛ぶイメージで。散舞槍は、無数の槍が降り注ぐイメージで。陣は、敵を囲む壁の様なイメージでつくってみた。
(ちなみに、漢字のルビは意訳で厳密には漢字の音読みで魔法を使用する。)
結構かけたなあ。後は、装備の確認かな。リュックからローブなどを取出していく。
「ふむふむなるほど、はっきし言って初期装備だな。」
武器の樫の杖は、長さ1.6m・直径2cmの黒光りした棒に先端にアメジストの丸い珠が付いている。
防具の淡緑色のローブに、臙脂色のケープ。こげ茶の袋付の前掛け。ぶっちゃけたただの衣類だ。
「なんとも心もとない・・ いっちょ金文で強化してみよう。」
書道道具の矢立から筆をとりだし装備に金文を書き込んでいく。
書き込まれた金文は、金属などの硬い物には刻印となって、布などの柔らかいものには刺繍となって刻まれていく。
杖には、”魔力増幅・精神統一・沈着冷静・理力変換・強固”を付与。
防具類には、”俊敏・身かわし・自動防御壁発動・異常回復・体力回復”などを付与した。
「ざっとこんなものか。とりあえず、向こうについたら実践あるのみだ。」