プロローグ
この小説は自己満足です。過度な期待はしないでください。
アドバイス歓迎。中傷はお控えください。
―――闇夜に月明かりがうっすらと地上を照らす。
「はぁっ、はぁっ」
夜のビル街に響く荒い息づかい。
一人の女性が涙を浮かべながら必死にビルの真横、非常階段をカツカツとヒールが鉄を打つ音を鳴らして駆け上がっている。
「ちょっとぉ、冗談じゃないわ。まさか、あんな奴が現れるなんてっ」
下を振り向きながらその階段を上る。
夜の闇の中、階段の下から聞こえるもうひとつの足音。暗闇の中、その足音の主の姿を確認することすらままならない。
しかし、女性は、その存在を理解しているのか、ただ、恐怖という感情に押されるがままにその足を動かす。
彼女はやっとの思いで屋上へと到達した。
その足で後ろを振り向きながら、姿を見せない存在に怯えながら奥へと、恐怖でふらふらになりながら不規則に息を切らす。
「え・・・こ、こない?」
動揺しながらも安堵のため息をついた。
「・・・キャハ」
その笑い声に女性は勢いよく振りかえった。
そこにいたのは、着崩れたスーツを着た中年の男。
鮮血の赤に染まった瞳、血の気も感じないような真っ青な肌。開いた口からは唾液が滴り落ちている。両腕は力が入っていないようにぶらぶらと揺れている。
「いやぁ・・・こないでよ・・・・・・」
女性はゆっくりと後ずさりをして、視線をそらすこともできず、段差につまずき、その拍子にヒールが折れてバランスを崩し、転倒した。
「こないで・・・冗談じゃないわ・・・」
女性は折れたヒールを拾い、男に投げつけた。
しかし、男は折れたヒールが顔に当たったことすら気づいていないのか、見向きもせず、ただ、ただただ、不気味な笑みを浮かべ、その笑い声を響かせる。
「もう、こんな臭いだけの体イヤなの。その体と交換して・・・?」
中年の男が発する女の声。意味不明な言葉を投げつけ、首を肩を超えるところまで傾けた。
「い、いやよ!!こないでよ・・・”悪魔”ぁ・・・・・・」
「キヒッ・・・キヒャ・・・ヒャ・・・キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ―――ッ」
不気味な笑い声。男の両手が指を大きく開いて女性の首元に手をかけた。
「ちょーだい・・・その綺麗なカ・ラ・ダ・・・キヒィ」
「いやぁああああああああああ!!!」
女性の悲痛な叫び声。それと同時。視界が真っ黒に染まった。
「―――断斬符」
「キギャァアアアアアアアアアアアアアア」
別の若いであろう男の声が耳に入り、物々しい耳に残りそうな叫び声が響く。
すると、女性を取り込んだ黒い煙は空気に溶けるように消えた。
もどった視界で女性が見たもの、それは、自分を捉えた男の両腕の繋がる先、身体から離れ、宙に飛び、赤い血に紛れて2枚の札が通過した。
「闇祓いて、聖なる加護を―――」
女性の周囲に4枚の札が地面に張り付き、ガラスのような透き通った四角形の箱、壁を生成した。
カツカツと15,6の年齢であろう身なりの茶髪の少年が制服姿で箱の中へ。
「もう大丈夫ですよ。ここは結界の中です。あなたの安全は保障しますよ」
少年は優しく微笑んだ。
「あ、あんたは・・・・・・?」
女性の震える声に少年は、あー、と回答を保留し、
「答えるのは後。もう少し待ってて、すぐに終わるから・・・・・・」
と言って箱、もとい結界の外へと壁をすり抜けた。
「さぁ、”悪魔”さん観念してもらおうか・・・?」
両腕の切断部から血を流し、唸り声をあげている女声の男・・・”悪魔”に告げて、ポケットから数枚の札を取り出してトランプのように広げた。
「お前ら・・・”捨て駒”か・・・・・・」
「ご名答ー」
少年は口笛を吹いて余裕を見せつける。
「なぜ場所がわかった!!」
少年の手元で札が浮き上がり少年の体の周りにそれぞれ駐留する。準備完了と言ったところだろうか。
「うちには優秀なナビがいるものでね・・・・・・」
*
「くしゅん!」
町外れの山奥に佇む古い事務所。
事務所の暗い一室でパソコンの画面があやしく光る。
そして、パソコンの前で背丈の小さな少女がくしゃみをした。
「なになに?誰かウチの噂でもしてるのかなぁ・・・もぉ」
そう言ってキーボードを素早くたたき始めた。
*
「くっ―――」
悪魔が、歯を食いしばり、いかにも悪魔らしいであろう、黒い翼を背中からスーツの布を破り、勢いよく広げた。
「逃がすかよ―――!!」
少年が右手を前に出す動作と同時に、宙に浮いていた札の内6枚が悪魔目がけて飛ぶ。
だが、勢いよく悪魔が翼をはばたかせ空へと浮き上がり、札は後ろにあった鉄格子に突き刺さったもの、すり抜けたもの、貯水タンクからの供給用パイプに突き刺さり水が吹き出したりと標的をはずした。
「命あってのって感じね、別の体を探すわ!!」
悪魔は背を向け、翼を大きくはばたかせるとビルから遠ざかっていく。
「待て!!」
少年の周囲に浮いていたすべての札を空を飛ぶ悪魔目掛けて放つ。
「っ!?・・・ぐぅ・・・・・・」
1枚の札が悪魔の左の膝から下を切り落とした。
動きが鈍ると、飛行が不安定になり、徐々《じょじょ》に降下し始めた時。
少年が一枚の札を右手の二本指で挟み横に空を斬ると紫色に怪しく光った。そして、受話器のように耳に当て、声を張った。
「カラス!!」
*
更に高く、札を使う少年が立っているビルから4つ離れたビルのヘリポート。
ライトアップされたヘリポートのHという文字の中心に一人の少年。少年を中心に影がライトの数だけ伸びる。
腰まで伸びた黒い長髪。そして、腰の後ろには刃がむき出しの刀。まっすぐなら1.5mはあるであろう刀身は、剣先3分の1のところで直角に曲がり、まるで鎌のようだ。
『行ったぞ!!』
「へっ、逃がしたのかよ・・・ざまぁ」
札を使う茶髪の少年と同じく、”カラス”と呼ばれた少年は紫色に怪しく光る札を耳に当てて言った。無線機の役割を果たしているようだ。
『うるさい!そんなこと言ってる状況か!!』
「だぁー、もう耳元で騒ぐなよ・・・・・・」
札を使う少年のそのあとの発言を聞くことなく、札を頭上で手放し、風に乗り夜の空に消えた。
「さぁ、制裁の時間だ―――」
黒い長髪の少年は、ライトが当たるところからゆっくりと歩いて、端《はし
》へと移動する。
「―――3」
へリポートのぎりぎりに立って、ゆっくりとその体を前へ傾ける。
「―――2」
傾けた体が斜め45度を超えたところで少年の肉眼に、ヘナヘナになって飛ぶ悪魔の姿を捕捉した。
「―――1」
目を大きく開くと、血走った瞳で口元が緩み、笑みがこぼれた。すでに80度オーバー。
「―――0」
90度。
少年の体は落下するかと思われた。だが、ガラス張りのビル、中にオフィスが覗ける強化ガラスに足をついて重力に逆らうことなく走り、加速する。
「さぁさぁさぁさぁ―――!!!」
少年はガラスを蹴って飛びあがった。完全に何もない、周囲は空気。考えられない行動。脅威のジャンプ力。軽々《かるがる》と20mは飛んだであろう。・・・そして、
「オネンネの時間だぜ、あーくーまーちゃーん・・・・・・?」
少年は悪魔の背中に着地した。悪魔はバランスを崩して高度がガクッと下がると、一瞬立て直すも落下していく。
地上30m。
「なんで空から!?」
「なんでって、俺が空飛ぶ《フライング》審判者だからだよ」
そうビルから落下とは言わず、無表情に腰の鎌のような刀を抜いた。
「お前も偽善者共の《捨て駒》かぁあああああ!!」
落下の中、少年の鎌のような刀の剣先が悪魔の喉にかけられた。
「ぐっどないと・・・・・・」
不自然な英語を残し、
「くそぉおおおおおお・・・ぉ・・・・・・」
刀を引いた。
すると、刃は首をすり抜けた。そして悪魔は意識を失った。少年が忍者のごとく事務所などがある合同のビルに飛び移った。悪魔の体は車が数台信号停止している車道に落下。車から人が降りてきて大きな悲鳴と奇声が響いた。
「成仏しろよ・・・・・・」
微塵も思ってないであろうセリフを怪しい笑みを浮かべて言った―――
*
「・・・ったく、あのバカラス!!」
札を武器に変える少年が長髪の少年が悪魔を撃墜したのを見て憤りで怒鳴るように言った。
「やったの・・・?」
「ああ・・・・・・ええ、もう大丈夫ですよ―――解」
声を震わせながら問う。結界の中で恐怖に震えている女性に少年が冷静になって肯定し、指を鳴らすと結界が消え、結界を作っていた札が消滅した。
「―――終わったようですね」
「あ、マスター」
女性に近寄ろうとした足を止め、少年の向いた方からくる声の主に気付き、マスターと呼んだ。
「今度は誰よぉ・・・」
少年の緊張感のない声と現状の打破に気持ちが緩んだのか、泣きそうな顔で女性は背後を振り返った。
そこにはニコニコと笑顔を振りまくような、長身の青年がネクタイを締め直しながら近づいてくる。
「こんばんは、無事ですか?お怪我は?」
「え、はい・・・・・・」
ニコニコしながらの問いに戸惑いつつ頷いた。
「まぁ、あなたの逃走経路で何人か殺されてましたが・・・・・・。あ、あなたにも後ほどいくつかの事情とサインをしていただくことになり・・・」
「あの」
「・・・ます。はい、なんでしょう?」
話に割り込まれても顔色変えずにその表情を青年は崩さない。
「何者なんですか彼ら。”悪魔”を倒すことができるなんて・・・・・・」
青年は、見上げる女性の目線に腰を落とした。
「・・・我々は民間の方々を守るために”悪魔”討伐をする民間会社、”Sacred Crows”の者です」
女性の心情を察することなく自己紹介をした。
「じゃあ、”悪魔”討伐の専門家って・・・・・・?」
「ええ、少し特殊な訓練を積んだ人たちが集まる、悪魔退治のプロフェッショナル。世界各地にある”教会”に統括された”闇を殺せる武器”。そしてこの子達が我が社の”十字架を背負う者”、悪魔を討つ”剣”です―――」
見えない力、冷たい風が肌に吹き付ける。そして、車道から人の騒ぎ声と車のクラクションが夜の街に鳴り響いた。
連載内容ゎまとまっているので、ちょく②と進めていきたいなと思います(*´∀`*)