表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごく普通の高校生の非日常  作者: 瀬川しろう(サイキック)
第二章
38/59

8  Game Make Space

校門へ差し掛かったあたりで優が口を開いた。


「でもいいのかな」

「どうした?」

「いや、ゲーム持って学校にいたら何か言われそうじゃない?」

「…まあ、ここの校則はユルいから大丈夫だろ。たぶん」


絶対とは言えないが、うちの高校は他校ほど校則が厳しくない。

さすがに飲酒や喫煙とかが発覚したらそれなりの罰を喰らうことになるとは思うが。

どちらにせよ科学準備室に着くまで先生には会わなかったし、心配する必要は無かった。


「あい、御苦労」


部室の扉を開けるなり白瀬が手を掲げて言った。いや何様だよお前。


「しかし遅かったな。寄り道でもしてたのか」

「してたと言えばしてたな」


もっとも耕也がゲームを選ぶのが遅かったのが本質的な原因だが。

いや電話を取らなかった僕にも非はありますけれどもね。

さて、帰ってきたところで互いの進行度合いを確かめ合うとするか。


「で、どうだゲームの調子は?」

「絶好調だ。ストーリー的にはもうクライマックスに取り掛かってる」

「もう終盤なのか? めちゃめちゃペース早いな」


てっきり序盤でアイデアが枯れ果てて悩み詰まっているところかと思っていたのだが、白瀬の創造力を侮っていたようだ。

それによくよく考えればこいつにはゲームのプロ(自称)が味方に付いているのだし、作業が早いのも頷けるか。

そして今度はそのゲームのプロが僕たちに問う。


「晃平たちはどんなゲームを買ってきたの?」

「ふっふっふ。俺が買ったのはこのゲームだよ」


耕也は自信満々に袋からゲームソフトを取り出す。

タイトルは『ショートミステリーだよ』と書いてあった。なんでこんなにフランクなのこいつ。

しかし聞いたことの無いゲームだな、まあ僕はゲームに詳しいほうじゃないし仕方ないかもしれないが。

そう思っていたがどうやら夏菜たちも聞き覚えがないらしく首を傾げていた。


「聞いたことないね、それ」

「ああ。棚の隅の方にあった。984円だった」


微妙に安いなそれ。

でも1000円以下のゲームソフトって見るとなんとなく見てしまうし、それを手に取ってしまうのは分かる気がする。

耕也は力説を続ける。


「あんなに隅の方に置かれながらも廃棄されず!たくましく生きているあの生き様!俺は惚れ惚れとしたね」

「えっ何の話?」


夏菜の疑問にも耳を傾けることはない。


「とにかく。エロゲーもスポーツゲーも駄目だってんなら俺にはもうミステリーしか、たった一つの真実しか無かったんだよ…」

「格好付けてるようですごいアホなこと言ってるからなお前。それに一つ気になるんだが、ミステリーにしたら長くなるんじゃないのか?展示時間的な問題が発生すると思うんだが」


時間的な問題というのは、文化祭で展示したとしても最後までやりきれるような人がいないのではないかということだ。

ミステリーというクリアスピードにムラのあるジャンルを展示して問題ないはずはないと思うのだが…。

しかし用意してあったのか、意外にも耕也は僕の質問にすぐに答えた。


「ふっ。そこで『ショート』ミステリーなんだよ」

「つまり話が短いってこと?」

「そういうわけでも無いな。よし、今からちょっとやってみせる」


耕也は携帯ゲーム機を取り出すと、買ってきたソフトを入れ、起動した。

手慣れてるなぁ。数分が経ち、目的の場面へついたのか僕たちに画面を見せた。


「例えば、こんな感じで問題を出すとしたらどうだ?」


耕也が見せてきた画面には『第一の謎:春』と書かれており、その下には何やら問題文のようなものがあった。





 ――――――――――――――――――――――――――――


  四月二十七日 木曜日

  一人の少年が通常の時刻より遅れて登校してきました。

  少年は四階の教室を目指し階段を上がっていきました。

  そして少年は四階へ辿り着いたのですが、数秒後、

  何を思ったのか、突然少年は階段を駆け下りてきました。

  一体なぜでしょう?


 ――――――――――――――――――――――――――――





それを見て最初に声を出したのは夏菜だった。


「なるほど! 簡単なクイズ形式で問題を出していくってことだね」

「そういうこと! これなら時間も大して取らないんじゃないかと思ってな」

「結構ちゃんと考えてたんだな」


しかし気になるのはこの問題…。

あまりにもヒントが無さすぎるような気がするんだが、どうやって解いていくんだろう?

同じことを思ったのか白瀬が荒野に尋ねた。


「なあ、これヒントとか無いのか?」

「さあな。これチュートリアルみたいな感じだから俺もよく分からん」


実際開封したばかりだし仕方ないとは思うが…。

まあなんとなく答えの目星はついてるし今度確認させてもらうとしよう。

しかし周りの興味はすでにそのショートミステリーに移ってしまっていた。


「あれじゃない? 上の階に何かあったとか」

「いや、何かに追いかけられていたとかじゃねえか? 必死だったんだよ」

「トイレが四階にしかなくて、先にトイレに寄ったとか」


みんな思い思いに話しているが、僕の考えとは全部違うな。

おかしいな、僕の考えていることは誰しも経験ありそうなものなんだけど。


「晃平はどう思う?」

「ん、いや普通に『目的の階を通り過ぎたから』じゃないのか」

「? なんでそうなるの?」


優が顔を覗きこんでくる。毎度思うがこいつほんと近いよな。

焦るからやめてほしいですお願いします。

優から若干の距離を取り、説明を始める。


「たとえば新学期とかならよく話だと思うんだが」

「新学期?」

「ああ。問題文には『四月二十七日』って書いてあるだろ。だいたい新学期の時期だ」

「つまり?」

「要するに少年は進級したばっかりで、それで前居たクラスまで間違えて上がって行った。到着してからそのことに気づいて降りて戻ってきた。こういうことなんじゃないか」


耕也に目配せをする。耕也は少しの間ゲーム画面を見つめ、そして親指を立てた。

どうやらそれで合っているらしい。


「でもノーヒントでそこまで分かるのかな?」

「まあまだ買ったばかりだし、俺が家で進めておく。とりあえずこんな感じのクイズを作れればいいなと俺は思ってるけど」


悪くない意見だと思う。結局最終ジャッジを下すのは部長である夏菜なのだが、まあ反対意見は出まい。


「じゃあ決定! ゲー研今年の作成案は、サッカーの試合に勝つとやれるゲームとショートミステリー!」

「よっし! 盛り上がってきたなあ!」

「じゃあこれからがんばっていきましょう!」


前者のゲームの方に誰からも突っ込みの声が出ないのも不安だが、

さらに不安なことは文化祭までに間に合うのか、ということだ。

だが部員は増えたし、その分アイデアも増築されたと言っても過言ではないだろう。

そういえば俊介がさっきからじっと座りこんでいるが何かあったのだろうか。

そんな疑問がふと浮かんだが一瞬で消え去った。

















耕也「いやー、なんだかんだでいい感じにまとまってきたな」


晃平「まとまった? 何がだよ?」


耕也「ゲームだよ。なかなか面白くなってきたよな!」


晃平「確かに。まあ作業自体は割と楽なところもあるんだけどな」


耕也「ツールとか使ってるしな。だがしかし、そろそろなんじゃないか」


晃平「…お前はいつも主語が抜けてるよな。何がだ?」


耕也「何って決まってんだろ、修学旅行だよ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ