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ごく普通の高校生の非日常  作者: 瀬川しろう(サイキック)
第二章
31/59

1  新たな仲間

ここから第二章となります!

第二章からは登場人物も増やして、

第一章とは少し異なったストーリーを楽しんでいただければと思っています!

作品向上のために感想・悪い点などがもしございましたら遠慮なくどうぞ!





新学期が始まる。

冬休みが終わったからといって天候が急変するわけも無く、まだまだ肌寒い。少し風が吹くだけで肌に冷たさが突き刺さるほどだ。

学生というのは毎度毎度、新学期が始まる度に何かを期待してしまうものだ。

たとえば転校生とか。

しかしそんなものは結局期待でしかないわけで、実現することはほぼない。

いや実現してもそれは他のクラスに起こることが多い。ように感じる。


「あーあー、ついにこの日が来ちまったかぁ」


隣の席に座る白瀬が机に伏せながら呟く。

新学期早々負のオーラに包まれているやつというのは珍しくない。

そのだいたいのやつが学校に行きたくないとかいう理由で落ち込んでいるだけなのだが。


「やべぇよ、結局宿題やってないし」

「お前やっぱりやってなかったのか。想像はしてたが」

「あ、そういえば今日ってテストあるんだっけ」


斜め前の席にいる夏菜が振り返って思い出したように言う。

その瞬間白瀬の負のオーラが倍増した。ように感じる。

いや、新学期始まってのテストは恒例だったろ…当然勉強してないんだろうなこいつ。

まあ僕もほとんど勉強はしていないが…大丈夫だよねたぶん。


「あーあー、ついにこの日が来ちまったかぁ」

「さっき聞いたぞそれ」


半ば侮蔑気味に白瀬にそう言うと、横から夏菜が口を挟む。


「まあまあ、そう落ち込まないで。なんかあるかもしれないじゃん」

「なんかって何だよ」

「そだねぇ…あ、転校生とかいるかも」


夏菜はそう言うが、やはりそんなもの妄想の中だけの存在だよ。

僕は今までに転校生なんてもんに遭遇したことが無い。

あんなもの都市伝説じゃないかとまで思ってるね。

しかし夏菜の一言で白瀬は急に明るい表情になり起き上がった。


「ほほう……確かに、そいつは盛り上がるな!」

「お前また何かやましいこと考えてるんじゃあるまいな」

「やましいとは失敬な。ただ、可愛い子だったらいいなーって思っただけだ」

「やましいだろ、それ」


別に何を期待しようがそれは白瀬の勝手だが、あんま期待しないほうが良いよ?

転校生自体そもそもやってくるか分からんのに、ましてやそれが美少女である確率なんか自動販売機で当たりが出る確率ぐらいだよ。

あれどのくらいの確率なんだろう。


「おっす。元気してたか」


突然横から声が聞こえる。見ると俊介が突っ立っていた。


「まあぼちぼち。…こいつは元気ないが」

「俊介よー、なんか転校生とかきてないのか?」

「なんだ急に」


頭にはてなを浮かべ俊介が首を傾げる。

だがまともに取り合っても無駄だと考えたのか、そんな表情はすぐに消えた。


「ふむ。転校生かは分からんが、見覚えの無いやつが職員室の前にいたのは見たな」

「なに、見覚え無いやつだと。それ本当だろうな!」


やけに興奮している白瀬。僕くらいにもなるともはや見覚えの無い奴しかいないもんだが、果たしてそいつは転校生なのかねえ。

単に俊介に見覚えが無いだけとも限らん。


「ああ、見覚えは無かった」

「どうだ、女子だったか。可愛かったか!」

「いや…男子生徒だったと思うが」


白瀬は舌打ちをする。いやお前最低だな…。

するとチャイムが鳴った。

同時に担任の教師が教室に入ってくる。


「あい、おはよ。ほら席に着け」

「もう来たか…じゃあな霧生、後で宿題見せてくれ」

「お前もやってないのかよ」


俊介は自分の席に向かった。

なんで僕の周りに限って宿題やってないやつが多いんでしょうか?

そういうものを惹きつける何かが僕の傍にはあるのかもしれない…いや怖いなそれ。


「おら静かにしろ。さーて、新学期早々なんだが、転校生が来ている」


その瞬間、静かになった教室が再びざわつき始める。

なんと、本当に転校生が来ているとは。

缶ジュースを買った時に当たりが出た時と同じような気持ちだ。当たったことないけど。

なんなんだよあれ、絶対当てる気ないだろ…だいぶ貢いできたよ僕。


「おら静かにしろ。じゃ転校生、入れや」


ずいぶんとガラの悪い呼び方で転校生を呼ぶ。

いや名前で呼んでやれよ。

いったいどんなやつが来ているんだろう…全員の期待を背負った扉がゆっくりと開いた。

僕たちとは違い学ラン姿のその男子生徒は教壇の前まで来ると皆の方へ向き直り言った。


「えっと、竹内耕也たけうち こうやッす。どうぞよろしく」


そいつの自己紹介はそれだけだった。

周りからパチパチと軽めの拍手が巻き起こる。


「…んじゃお前の席は霧生の後ろだ」

「はい」


んじゃ、って絶対今決めただろ。

そういうのってあらかじめ決めておいて席を用意しておくもんなんじゃないの?

というかあの転校生…なんだろう、妙な既視感が…。


「…はい、終わり。じゃあ十五分間休みを与えるから、始業式に備えて廊下に出て並んどけよ」


担任はそう言って教壇を後にした。それと同時にみんな席を立つ。

転校生が来るとなると皆よってたかって転校生のもとへ行き、

あーだこーだ話しかけるのかと思っていたのだが、実際はそんなもんではないようだ。

見れば『話しかけろよ』『やだ』『お前が行け』などといったようなやり取りがされている。

確かに、いきなり生じた違和に率先して関われるほどの勇敢さを現代人は持ち合わせていないだろう。

無論僕も持ち合わせていない。

だから僕は話しかけるつもりは無かったし、話しかける必要も無かった。

後ろから肩を叩かれる。


「おす、よろしくな」

「……よろしく」


僕がそう言うとそいつは歯を見せて笑う。

なんだろう、こいつどっかで見たような…思い出せん。

既視感というか、別世界で会ったというか…何言ってんだ僕。


「霧生晃平くんだっけか。じゃ晃平って呼ぶことにしよう。俺のことは耕也って呼んでくれて構わないぞ」

「ああ、別に良いけど」


…ん? 僕こいつに名乗ったっけ?

怖い怖い、何なのこいつ、エスパーなの?

僕が軽く怯えながら会話をしていると、白瀬と俊介がやってきた。


「駄目だ霧生、やっぱ宿題今日中じゃねえと受け付けないらしい」

「お前ら…」


すげぇよお前ら。さっきまであれほど話題にしてた転校生をガン無視して宿題の話だからな。

忘れてんのか宿題がよほど大変なのか…どちらにしても酷いものだ。

白瀬はようやく転校生、耕也に目を向けた。


「よ、お前らなんか仲いいように見えるけど…知り合いなのか?」

「んー…まあそんな感じじゃないかねえ」

「なるほど。あ、俺は白瀬浩太、よろしくな竹内」

「おう、よろしくな浩太。そっちは?」

「渦木俊介、よろしく」

「俊介か。よろしく」


それぞれ握手を交わし合う三人。

ふむ、若干の違和感はあるがまあいいか、さして気にするようなことでもあるまい。

何よりも僕が名前を覚えることができたやつが増えるというのは喜ばしいことだ。


「で竹内はもう部活はどこに入るかとか決めてんのか?」

「いや別に。前の学校でも特に入ってなかったしな」

「そうか。霧生、こいつ引きずり込もうぜ」

「それ本人の目の前で言っちゃうのか」


引きずり込むなんて言い方が悪いな。

白瀬が言っているのはおそらくゲーム研究部のことだろう。

狩村部長もいなくなって今や部員は三人のみ。

このままでは確実に次の文化祭の展示は酷い出来になるだろうしな。

しかしそう簡単にはいくまい、問題は耕也にやる気があるかだ。


「なんだ、何の話?」

「いや、ゲーム研究部って部活があるんだが、その話だ」

「ゲームねぇ……よし入る」

「………ん?」


思わず聞き返す。

耕也は変わらずこう答えた。


「聞こえなかったか? 入部するって」

「うそ、正気お前」


それでも耕也は頷く。マジかよこいつ、どんな部活かろくに聞きもせずに承諾しやがったけど。

大丈夫かな、将来何かの詐欺に引っかかったりしないか心配だわ。


「じゃオレも入る。いい機会だしな」

「お、俊介も入るか。仲間がいるとやりやすいぜ」


耕也は肩を組み喜ぶ。

いや俊介の場合はもう目的が明らかなんだけど…もういいや。

一緒に風呂入って何も起きないんなら同じ部活に入ったところで何か起きるとは思えないが…。

だが入部するならまずは部長に話をしに行かなければならないな。

まあ聞くまでもなく歓迎だとは思うけれど。




















晃平「しかし、お前がゲー研に入るとはな」


耕也「まあ、俺結構ゲーム好きだしな。バリバリやってたんだぜ昔は」


晃平「そうかよ。…………うーむ」


耕也「なんだ、どうかしたか」


晃平「いや、お前いつからこの空間にいたんだっけか…?」


耕也「…。何言ってんだ晃平よ、俺は今回初登場だぜ」


晃平「そうだったか? …うーむ」

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