表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごく普通の高校生の非日常  作者: 瀬川しろう(サイキック)
第一章
27/59

26 モクテキ

耕也「やれやれ。しかし俺の作品が消えるとはがっかりだよ」


晃平「お前が主人公だったのか。お前も作品と共に消滅すれば良かったのに」


耕也「お前よく酷いとか言われないか?」


晃平「いやそんなことはないけど絶対に」


耕也「本当かよ……」





今のところ分かっているのは、ゲームがジュースか何かで濡れていること。

シャンプーを詰め替えていたということ。そしてちょっと離れた場所にいるということ。

あれ、大して特定できてないんじゃないのこれ。


「みなみ、鞄を調べてみないか。何か分かるかもしれない」

「鞄を?」

「ああ、僕は俊介のを調べるから、みなみは夏菜のを頼む」

「う、うん」


さすがに僕が夏菜の鞄を覗くわけにはいくまい。

少々大がかりな気もするが、一度気になると答えを知りたくなるのが人間というものだ。

だから鞄を調べる、誰にも邪魔はさせねえ。

俊介の鞄はこれだな……これといって変わったところは無い…な。

しかしあいつ、あれだけやるやる言ってたんだから準備でもしてきてんのかと思ったら…。


「こっちは特に何もないよ」

「そ、そうか」

「でもね、あの……下着が、無いよ」

「下着……?」


言った途端にみなみはうつむいてしまった。いや待って、そんな風にされると、僕が知ってて言わせたみたいになるから。

しかし下着がないとはいったいどういうことなんだ?

もう一度俊介の鞄の中を覗いてみる。

…ふむ、俊介の方も下着が、他にもタオルなんかも無くなっている。


「…分かった、あいつらがどこ行ったのか」

「えっ、どこ?」

「そうだな、確認ついでに行ってみるか」


そう言ってから部屋まで戻ってスリッパを履くと、僕たち二人は部屋を後にした。




 ・・・・




「さてと、詳しくは話せないんだが、俊介には今日ある目的があった、っていうのが前提になる」

「あ、うん。……そうなんだ」


この反応……やはりみなみはその『ある目的』というのを知っているようだな。

く、なんか気まずいような気がする。

しかしこれは俊介たちがどこへ行ったのか説明するために言わないといけないのだ。

頭の中で軽くまとめてから、僕はみなみに語り始める。


「あー、まず俊介は目的の達成のためにいろいろと考えていたはずだ。

 あの場でいきなり目的達成のために努める訳にもいかなかったんだな」


まあ誰かに覗かれる恐れもあったしな、特に白瀬とか。

俊介がもし本気でやるつもりだったんなら部屋は避けるだろうな…それよりも適した場所がありそうだし。


「そこで俊介はまず夏菜にジュースをかけた」

「…なんで?」


不思議そうな顔をするみなみ。さすがに飛躍しすぎたか。


「言ってしまうと、俊介は夏菜と風呂に行くつもりだったんじゃないか?

 だが普通に考えて一度風呂に入った人間ともう一度風呂に入るなんて少し無理がある」


そりゃよっぽど風呂好きなら問題はなかろう。

しかし夏菜は別に風呂好きというわけじゃないだろうし、俊介もそうは思っていなかったと思う。

しかし風呂に入った後で体が汚れてしまった場合なら、風呂に連れ込むことは可能だ。

水やお湯をかけても可能性は低いし、それでジュースをかけたんだろう。


「そのせいでゲームはフリーズしてたけどな…」

「そっか。じゃあ、飛び散ってたシャンプーは、その時に詰め替えて…」

「まあそうだろうな。風呂に行こうとすれば、その辺の確認はするだろうし。そのときにシャンプーが切れていることに気付いて詰め替えたんだろうな」


これでタオルと下着が無くなっていればもう行き先は風呂意外に考えられん。

それに風呂場なら目的達成に近づけると踏んだのかもしれないな。

僕の考えを話しているうちにあっという間に浴場へとついてしまった。


「……どれにいるんだろ?」


暖簾の前でみなみが呟いた。

『男湯』『女湯』『混浴』の三つの暖簾があるが、俊介の目的を考えれば混浴しかありえない。

わざわざ風呂場まで連れて来ておいて男湯と女湯に分かれて入っても意味がないだろう。


「さて、中に入って確かめてみるか」

「あ……うん。だ、大丈夫かな」


みなみの言わんとすることは分からなくもない。

もう絶対にありえないけどもし万が一、僕たちが入って俊介たちが行為に及んでいる最中だったら……考えるだけで背中が凍り付く。

気まずいなんてもんじゃない。

しかし正直なところ、二人が本当にここにいるかどうかも確かめたい。

一歩踏み出し、脱衣所へと入った。


「…夏菜の声だね」

「こんな時間にデカい声出すなよ、あいつ」


入った瞬間にいつも通り元気いっぱいの夏菜の声が聞こえてきた。

どうやら僕たちが懸念していたことは起こってはいなかったらしい。

いや良かった、本当に良かった。ナイスヘタレ、俊介!


「…さてと、良い時間だし戻るとするか」

「そうだね。あ……あの」

「な、なんだ…?」


声が詰まる。みなみがあまりにも潤んだ瞳をしていたから。

その表情は少し切なげにも見える…なんだ、何かあったのか?

それともやっぱり俊介たちのことを意識して……。


「……あ、そ、そこの自販機でジュース、買って行こ」

「あ、ああ。……あれ財布持ってきてたっけ」


俊介と夏菜がどうなったのか、僕は知る由もない。

しかしあいつらのせいで受けた影響はかなり大きなものだった。

その日の晩、僕はあまり寝つけなかった。

みなみはどうだったろう、僕と同じだろうか…。



















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ