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ごく普通の高校生の非日常  作者: 瀬川しろう(サイキック)
第一章
26/59

25 二人はどこへ?

入浴を終えてすぐに僕たちは夕食を取った。

正直のぼせてしまっていて料理の味はよく分からなかったんだけど…。

食後、僕たちは旅館のロビーで休憩を取っていた。


「…ふぅ、もう八時半か。暇だし何かするか?」

「いや僕はもう少し休む…。夏菜とゲームでもしてたらどうだ」

「浅井は今、青野たちと語っててな。相手がいない」


やれやれと肩をすくめる白瀬。

ゲームくらい一人でやってたらいいんじゃないかとも思うが。

どうせ夏菜と対戦しても勝ち目はないんだし。


「横座るぞ」


缶ジュースを片手に俊介が会話に入ってくる。

僕の隣に座り缶を開ける俊介に白瀬が問う。


「俊介、お前マジでやんのか?」

「無論だ。やるなら今日しかねえ…こんなチャンスはめったにないからな」

「お前、順序間違えてるぞ絶対」


そんな僕の言葉もこいつには届いていないようだった。

駄目だな…こいつ完全に空回りしてやがる。

そもそも夏菜がこいつの想いを聞いてはぐらかしたのには何かしらの理由があると思うんだが…それが分からんうちは変な気は起こさん方がいいだろ。


「しゃあない、俊介。俺と霧生で今から作戦を考えてやる」

「え、僕もかよ」




 ・・・・




作戦会議が終わり、部屋に戻ることにはすでに十時を過ぎていた。

結局二時間もの間、同じことを繰り返していただけな気もするが…。

部屋に戻るとすでに布団が敷いてあり、みなみがその上に座っていた。

ただ座っているだけだった…何だろう、精神統一でもしているのかな。


「みなみ」

「……えっ。あ、霧生くん」

「大丈夫か、ボーッとしてたみたいだったが…」

「うん。綺麗だったから、ずっと景色見てたんだ」


みなみに言われて外を見ると、なるほど確かに綺麗だ。

山の上に浮かぶ星空はたぶん家からじゃ見られないだろう。


「…………」

「……あー」


みなみはなぜか黙り込む。やめてよ気まずい。


「…そろそろ寝るか?」

「あ、うん…。そ、そうだね」


どうもさっきから明らかに態度がおかしい。


「なんかあったのか」

「えっ。あ、えっと……あの、優がね。渦木くんが今夜何かやらかす予定だって、言ってて…」

「あの女…」


何をやる予定なのか知らないとはいえ優の奴、みなみに喋ったのか。

みなみは昼間に僕と俊介の会話を聞いているんだぞ、感づかれたらどうするんだよ…。

いや感づかれてるのか…?

それで意識してしまって何も喋れなく………おい、もしそうだったら気まずくなってるのあいつのせいじゃないか、恨むぞ俊介。


「……寝ないのか?」

「……あ、あっ、私やっぱり眠くないかな。みんなの様子、見に行こうよ」

「……まあ、別に構わないが」


僕たちはスリッパも履かずに、引き戸を開け部屋の外へ出た。




 ・・・・




部屋を出るや否や、ひとまず向かいにある一二号室の前へと向かった。

いや、目の前にあるわけだし向かったという表現はおかしいか。

しかしこの部屋、下手すると俊介たちがいろいろやらかしているかもしれないんだよな……中に入った時に気まずい事にならないことを祈るぞ。


「……夏菜たち何してるのかな」


みなみが呟く。みなみは俊介がやろうとしていることを把握しているものと思っていたが…違うのか?

いや、知っていたとしてもそれを直接口に出すはずがないか。


「……見れば早い」

「えっ…見るの……?」


取っ手に手を掛け、ほんの少しだけ引き戸を開ける。

中は真っ暗だ。

それに声も物音も聞こえないし何より…スリッパがない。

どこかへ行ったのか。


「いないみたいだな」

「うん……、どこに行ったんだろね」

「それは少し気になるな」


あれだけやる気満々だったというのにどこへ出かけたというのか。

今僕たちは俊介のせいで半ば気まずくなってしまっている、中に入ってもばちは当たるまい。

それにあいつらがどこに行ったのか分かるかもしれないし。


「入ってみるか。何か分かるかもしれん」

「…あ、うん」


さて、適当に部屋の視察から始めるか。

どこから見てやろうかと思っていると、みなみがしゃがみ込む。


「ゲームが置いてあるね」

「夏菜のだな…置いてあるっていうより落ちてるって感じだが」


よく見てみれば画面がフリーズして止まっている。

しかし電源は切られていないというのは不思議だ…どこかへ行くんなら切ってもおかしくないのに。


「これ……何だろ、白い…」


夏菜の旅行バッグの側でみなみが何かを見つけたようだった。

見ると何やら白い液体が辺りに飛び散っていた。

えっ、ていうか何これ。いかがわしいものじゃないよね。違うよね。

いやしかし俊介のあの張り切り様……まさか本当に……。

不安に駆られていると、みなみがその液体を指で拭い始めた。

待って! それが一体何なのかも分かってないのに駄目だって!

もし本当にいかがわしいものだった時の反応に困るって!


「……石鹸? の匂いがするよ」

「……せ、石鹸?」


石鹸の匂いってことは、ボディソープか何かか…良かった、僕は信じてたぞ俊介…。

いやこんなところにボディソープが飛び散っているのも変な話なんだけれども。

旅行バッグの周辺を見てみると、空になったシャンプーの詰め替え用の袋が落ちていた。

ふむ、たぶんシャンプーを詰め替えたときにこぼれたんだな。

するとまたしてもみなみが呟く。


「…ねえ、ゲーム濡れちゃってるみたいだよ」

「濡れてる? ゲームが?」


さっきは気付かなかったが、見ると夏菜のゲーム機は確かに濡れていた。

触ると微かにベタつきがある……ジュースか何かかな。

なるほど、ジュースをこぼしたことでフリーズを起こしたのか。


「…みなみ、あいつらスリッパ履いてどこかへ行ったんだよな」

「え? …うん、無かったし」

「つまりスリッパを履いて行くような距離…ということか」


そしてしばらくそこへ留まる、ということも考えられるな。

ちょっと出かけるだけなんだったら僕たちみたいにスリッパは履かなくてもいいだろうし。

俊介の奴、もしかして何か考えての上での行動なのか?

…もう少し調べてみる必要があるな、俊介たちがどこへ行ったのか。


















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