表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ごく普通の高校生の非日常  作者: 瀬川しろう(サイキック)
第一章
25/59

24 純白の誘い

しばらく浴槽に浸かってくつろいでいると、横から何やら声が聞こえるようになった。

残念ながらその雑音の主は白瀬と俊介。


「喰らえ! ハイパークラレント石鹸!」

「効くか! 桶ディフェンス!」


見ると白瀬と俊介が、桶やら石鹸やらで遊んでいる。

小学生かよ……頼むから何か破損したりとかはしないでくれよ。


「やー、良いなこれ。やっぱ修学旅行の醍醐味だよなこういうの」

「なら修学旅行でやれよ…」


ま、修学旅行でやれば間違いなく叱られるだろうけどな。

俊介が桶を置いて再び浴槽へと入ってくる。そしてぼやく。


「しかしあれだな、やはり男だけじゃダメだな盛り上がらん」

「ああ、やはり女がいないと始まらないな。オレはそう思うぞ」

「入浴中は諦めろ、無謀なこと言うな」

「無謀…? ふっ、霧生よお前忘れているな」


悪役みたいな笑みを浮かべたまま白瀬は嘲笑気味に言う。

そして立ち上がった。


「…よし、行くぞ二人とも」

「…行くか!」

「もう出るのか? 僕はもう少し―――」


もう少し湯船に浸かっていたかったのだが無理やり連れだされる。

放せ! 僕はもう少しあそこにいたいんだ!




 ・・・・




「…なるほどな」


暖簾を見た瞬間にすべてを理解することができた。

白瀬と俊介に連れられてきたのはずばり混浴だ。

…別にこの際混浴自体は構わない。

でも来るなら初めからここにして欲しかった…体が冷めている…。

混浴に入るや否や湯船に浸かりのんびりしていると、なぜか遅れて白瀬と俊介が入ってきた。

なんだ、こいつらの方が遅いとは。


「遅かったな、何やってたんだ?」

「ああ、今この場に女が一人もいないだろ」


白瀬は周りを見回しながらそう言う。

確かに、今この空間には僕たち三人しかいない。

まあもともと客も少なそうだったし、こんなことじゃないかとは思っていたけど。

しかし白瀬の次の発言だけは予測できなかった。


「で、やっぱ女がいたほうがいいということで。あいつらが来ることになった」

「え、あいつらって夏菜たちか?」

「ああ」


平然と言ってのける白瀬。

待てよ、それって当然みなみもいるわけだろ。

そんな空間僕に耐えられるのか…部屋の中でもダメだったのに、体も火照っている今同じような状況になったら……。


「ああ、先に行っとくが鮎川はもう上がったらしい。残念だったな」

「…そうかよ」


いろいろと巡らせていた僕の頭を冷やすのには十分すぎる一言だった。

まあ、これは幸いなのかもしれん…みなみが居ないんなら問題は無いだろう…。


「さてと霧生。俊介が浅井とやる予定だってのは存じ上げていると思うが」

「あれ本気だったの?」


マジかよこいつ。勇気はすごいなと思うけどその勇気何か別のことに生かせないですか。

ずいぶんとデカい賭けだな…ま、相手は夏菜だし、そう簡単に行くわけないけど。


「今回はその伏線を張るために、女子群を呼んだんだ。意味が分かるか」

「意味は分かるが、理解できん」

「?」


どう違うの? みたいな目で見られていた。

いや…そこまですることなのかなぁ…と。

てかそれなら僕は関係ないだろ、男湯にいても良かったよね。

そして時は来た。

扉が開いたのは突然のことだ。

目をやると、タオルを体に巻いた夏菜と優の姿が見えた。

瞬間、思わず目をそらしてしまう。


なんだ! さっきはみなみじゃないなら問題ないとか思ってたけど、あれなんだ!

普通に考えれば分かるだろ、問題ないわけがない!

思えば美保のタオル姿を見た時でさえ取り乱していたこの僕が、より身近な存在の女の子のタオル姿を見て問題がないなんて、絶対にありえない!

さっきは冷静じゃなかった! 駄目だ、この状況は駄目だ!

しかし湯船から出ようにも、今出ることはできない…。

仕方なく、極力隅でじっとしていることにする…。

俊介も半ば似たような状況になっているが…むしろ白瀬は何も気にしていないようだった。


「いやしかし、やっぱ女子二人じゃ寂しいな」

「仕方ないじゃん、みなみもう上がっちゃったし」

「まあ贅沢は言うまい。のぼせるまでパーッとやるか!」


のぼせるまでこの状況が続くんですか。

しかし本当にみなみが居なくて良かった…居たら本当に耐えられなかったかもしれない。

僕の隣で俊介も、湯船に顔を付けたり出したりを繰り返していた。

…いや、湯船に顔つけるのはやめようよ。


「霧生……この衝撃は想像を越えていたよ…」

「僕もだ…なんで白瀬のやつ平然としてるんだ」


真の女好きは平凡なシチュエーションでこそ真価を発揮し、

異常なシチュエーション下ではかえって何も起こらなくなってしまう、

つまり女好きが女好きたる所以は普段の女の子の仕草などに異常なこだわりを持っているものであり、

異常な状況下ではそれも無いが故に女好きとしての感覚が―――もう分かんねえよ。


「…くっ、浅井を見たいのに見れない…全然見れない」

「僕と逆だな」


目を逸らせど逸らせど勝手に視線がそっちの方へ寄ってしまう。

逆に見たい時ってじっと見れなかったりするよね。

隣の席のやつがなんか変なことしてるの気になってすごく見たいときとか。

そんなどうでも良い事をずっと考えていたからか、少しだけ緊張が緩んできた。

そんなところに、


「あ、そういや渦木くん」


バシャバシャと音を立てて、優がこっちに近づいてきた。

足を踏み出すたびにヒラヒラと捲れるタオルはあまりに無防備すぎる。

見ないようにしよう…。

そう思った瞬間、バシャンと大きな波を立てながら優が僕たちに目線を合わせるようにしゃがんだ。


「ね、さっき白瀬くんから聞いたんだけど―――」


タオルは右手で抑えているだけ、そんな状態で俊介の方へ詰め寄る。

お前…そんな状態で動いたらはだけて……。

ふと見れば胸元は大きく露出しており、丸みを帯びたそれが視界に入る。

こいつ…絶対何も考えずに行動してんだろ…。

一方、俊介は優に対してはそんなに強張ってはいないようだった。

どうなってんだお前らの神経は…。


「今日夏菜と何かするんだってね」

「えっ、あ、ああ。まあな、一応」

「何するの、ゲーム?」

「あ、えっとだな…」


おいおい…。

さっきまでとは違う意味で僕と俊介に緊張感が走る。

可能かどうかは別にして、こいつがやろうとしてることは女の子に言って良いようなことじゃない。

下手すりゃ捕まる。いやいっそ捕まっちまえばいいんじゃないかとは思うけど。


「あ、でもゲームだと渦木くんに勝ち目ないよね。いいとこ見せられないか」

「そ、そうだよな。何か別のことにするかな」

「だねぇ……あ、季節外れの怖い話とか。夏菜そういうの好きだしさー」

「そうなのか…知らんかった」


二人で作戦会議らしきものを始めた。

なんとか修羅場は乗り切ったか…何事も無くて良かった。

今なら出ても大丈夫だろう。


「……ところで霧生くんはさっきからどこ見てるの?」

「明後日の方向だ」

「?」


すごく簡単に言えば天井だ。

そうでもしないと僕は湯船から出られなかっただろうしな…。


















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ