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ごく普通の高校生の非日常  作者: 瀬川しろう(サイキック)
第一章
13/59

12 恋人の儀式

「お前、鮎川とはどこまでいったんだ?」

「・・・は?」


突然の質問。それをお前、よりにもよって今聞くのか。

試験前だよ、分かってる?


「・・・特に何もないが」

「何も? 手を握ったりとか、そんなのも何もないのか?」


無いな・・。手を握るどころか、二人で出かけたこともない。

一緒に試験勉強をしたことは数えるだけあるけども。


「まあ、付き合い始めだし、こんなもんじゃないのか」

「いいや、霧生。異常だ、おかしいぞ、霧生。霧生」


どれだけ僕の名前を呼ぶんだよ。

まさかこの男に異常と言われる日が来るとは思っていなかったよ。


「異常か? こんなもんじゃないのか」

「違うぜ霧生。高校生の恋愛って言うのは中学生とは訳が違うんだよ。

 大人の恋愛なんだよ、この意味が分かるか?」

「いいや全然」


何か違うの、それ?

ていうか何でそんな偉そうなの?

お前確か僕と同じで恋人とかいたことないよね?




 ・・・・




学校に着いてからも白瀬の話は続いていた。いつの間にか俊介も加わっている。

ねえ勉強。勉強しようよお願いします。


「な、俊介もそう思うだろ?」

「お前、霧生! せっかく可愛い彼女がいるのに何も発展してないとは何事だ」


僕は何か悪い事をしてとっちめられているのだろうか。

そんな疑問が浮かび上がってくるが、すぐに抹消される。

俊介はいつにない剣幕で言う。


「お前も男だろ! 彼女が出来たんなら一発やってやろうとは思わないのか!?」


すごい剣幕で語る俊介。

こいつらさっきからおかしい、熱がもう違う。

何をそんなに焦ってるの? 焦るべき箇所を間違えてるよ君たち、ねえ勉強。

そんなことを思う僕には構わず白瀬は諦めない。


「いいか霧生、直接的な表現は避けるが、もし鮎川の方がお前とやりたがってたらどうするんだ?」

「だいぶ直接的だなそれ・・・」


みなみが・・・?

・・・・・・・。

・・・危ない、一瞬そんな画が脳内に浮かんでしまった。

だが、それは無いな・・天と地がひっくり返っても無い。


「というか別に、今みなみと進展する必要はないだろ」

「いいや、あるね」

「なぜだ」


問うと、白瀬は腕組みをし堂々と答えた。


「霧生、正直に言おう。俺は、知り合い同士ががやったという話を聞いてテンションを上げたいんだ」

「待て、お前の欲のために今の今まで話していたのか?」


お前今すごいゲス顔だったぞ。急激に相手するのが面倒になってきた。

これならテスト勉強をしていた方が時間の無駄にならずに済んだかもしれない・・いや間違いなくそうだ。


「白瀬、もう時間があれだし話は後で―――」

「そうだ霧生」


僕の話を聞かず白瀬が続ける。


「いいことを思いついたぜ、あのな―――」

「おらー席に着けー。試験始めるぞー」


担任が入ってくる。

その瞬間、僕の中間試験は半ば終わったようなものと相成った。




 ・・・・




「で霧生、さっき前言ってた話なんだが」


おにぎりを頬張り、白瀬が話しかけてくる。

試験後の教室はほぼガラ空き、居るのは僕と白瀬と数人の生徒のみだ。

まあ当然かもしれない、試験後は誰だってすぐに帰りたいだろう。

僕も帰りたい。白瀬なんか適当にあしらおう。


「おう、そうだな。じゃ」

「いやいや待て待て、雑! あしらい方すら雑だぞ!」

「その話はもういいんだよ、だいたい―――」

「まあ聞けよ霧生。試験も終わったことだし、またこの前のメンバーでキャンプに行こう」


白瀬のその発言はまったく予想外のものだった。

何だ、その話と僕とみなみの話が関係あるのか?


「・・・キャンプ、この時期にか?」

「大丈夫だ、まだそこまで寒くないから外で寝ても風邪はひかないと思う」


確かにまだまだ晴れが続いているし、気温も高い。

そのあたりの心配は無いと思うが・・・問題はなぜ急にキャンプなどと言い出したのか。

それは聞くまでもなく、白瀬が話してくれた。


「これは試験中にいろいろと考えた結果なんだ」

「ねえ試験中は試験に集中しない? ・・で?」

「前回と違い、今回はお前と鮎川が付き合ってるというのが前提なわけだ。

 そんな二人が、夜の頂点を一緒に迎えるころにはどうなっていると思う」


僕は何も言わなかった。

こいつの言うことがもうほぼ分かったから。


「朝が来るころには二人とも経験済み、というわけだ! どうだ?」

「試験を無駄にした結果がそれかよ」

「無駄じゃないぞ。一応休み時間に最低限暗記はしたしな」


それはどうでもいいんだけど。

仮にそうするとしても上手くいく保証がない。

そもそも僕にそれをやり遂げる意思がないのだからして。


「もう決めた。俺はもう決めたぞ霧生、土曜日だ。当日の急な体調不良は認めない」

「お前の話を聞いた限りだと、僕がみなみとやりたがっているようにしか聞こえないんだが」

「違うのか? ほんの少しでも思ったことないのか? おい、ないのか?」


急にぐいぐい責めてくる白瀬。

いや、そりゃ全く考えたことが無いわけではないが・・・・・いや、しかし。


「ほら、そうだろ。じゃな、土曜日だぞ!」


そう言って白瀬は鞄を持ち駆け出して行った。

大方これからそのための準備でも始めるんだろうが・・・

待ってくれ、今回のキャンプ・・・謎の負担があるよ・・・。




 ・・・・




当日が来るのは早かった。結局僕は、キャンプを楽しめればいいというスタンスを無理に掲げて行く、そう決めた。

しかし今回もみなみのお父さんが送ってくれるらしい、良い人だ。

やはり挨拶とかちゃんとしておくべきだろうか。

そんなことを考えながら、荷物を背負って玄関へ行く。


「ん? 何その荷物。お兄ちゃん、どっか行くの?」

「ああ、ちょっとキャンプにな」


まさか半年も経たない内にもう一度キャンプに行く羽目になるとは。

まったく白瀬も余計な事をしてくれる。


「キャンプ? 夏休みにも行ってなかったっけ?」

「お兄ちゃん、最近ちょっと機嫌よさそうに見えるけど、何かあった?」

「そう見えるか?」

「まあ、ね。その様子だと、何かあったね」


妹に限らず、女ってのはこういう勘は鋭い。

華音は適当に「行ってらっしゃい」とだけ言い残すと、リビングへと入って行った。

そしてそのタイミングに合わせてチャイムが鳴る。

この扉を開いた瞬間より、一大決戦が始まる。

二度目のキャンプがこうして幕を開けた。




















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