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誰にでも起こるかもしれない体験

螺旋階段

作者: ロミ
掲載日:2026/07/19

誰にでも起こりえるかもしれない体験






「ビク!」びっくりした。




皆さんは、寝ていたら真っ暗な空間に落ちる夢を見て、体がビクとなった事はないですか?


突然身体が勝手に動いて、飛び起きてしまう事。

心臓がドキドキして、目を開けて自分の部屋のベッドだったことに安心した事。


何故、このような現象が起きるのか、ネットで調べれば答えが載っているかもしれない。

でも、本当にその答えは正しいのでしょうか。






蒸し暑い日本の夏。


「今日も汗臭い」

今日も一日、仕事を終えて自宅に帰って来た。


俺は、短距離トラックの運転手。

朝早くから車で1時間かけて出勤、タイムカードを押してから、仕分け倉庫へトラックを走らせる。


仕分け倉庫では、すでに仕分けられた荷物を人の力で、4tトラックに詰め込む作業。


フォークリフトで、詰め込めばいいんじゃないと思うだろうが、俺の努めている運送会社は、様々な会社から依頼を受けた物品を、いろんな店舗に納品する。


例えば、お菓子の段ボールを小売店に納品した後、工場で使用する長さ2mもある反物を納品したり、幼稚園に新品の机や椅子を納品したりと、形や大きさ、重さの違う物品が多い。


そのため、フォークリフトが使えず、人の力でトラックに順番に荷物を積み込み、時間指定通り店舗に積み下ろす。


真夏の暑い時期の積み下ろしは地獄だ。



今日も汗だくの一日を終え、家に帰宅した。


そそくさとシャワーを浴びて、ビールで一杯。

「ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ、ぷふぁ~。体の染み渡る~」

ビールが喉を滑り落ちる。


仕事終わりの一杯はたまらない。

このために、一日頑張って来たと言っても過言ではない。


ビールのつまみは何でもいい。煮干しでも、サラミでも、裂けるチーズでも。

今日は、裂けるチーズをチョイス。


「スルー。スルー。スルー」避けるチーズを裂いていく。

気持ちがいい。避けながら線みたいになっていくチーズに「がぶっ」と、被りつくのもいい。


チーズ独特の甘さと塩気がビールに合う。


「ごく、ごく、ごく」ビールが止まらない。


俺は、500mlのビールを1缶飲んで、いつの間にか寝てしまっていたようだ。






夜中に、体がビクっとなり飛び起きた。

長い階段を踏み外し、真っ暗の空間に落ちる夢を見たのだ。


まだ心臓はドキドキしている。

周りは、真っ暗で何も見えない。


俺は、いつも頭元に置いているスマホを寝たまま手探りで探した。

「ないなー。何処にやったかなー」


俺は、上半身を起こし、蛍光灯の紐を掴もうと手を上に振り回すが、蛍光灯の紐が見つからない。

「おかしいなー。どこだよ」


俺は、立ち上がって壁の、蛍光灯のスイッチを押そうとしたが、壁に手が付かない。

というか、壁がない。


手をばたばたと、付き出しながらカニ歩きしても、壁に手が付かない。

「なんだ、これ」


真っ暗の中、俺はしゃがんで床に手を付いた。

床はタイルのようにつるつるしていて、明らかに俺の家の床ではない。


「どうなってるんだ・・・・。」


真っ暗の暗闇の中、俺は呆然と立ち尽くした。





どれくらい、こうしているだろう。


真っ暗の中、今、床をはいつくばって進んでいる。

本当に、真っ直ぐ進んでいるのかもわからない。

真っ暗闇の無音の中、何もしないなんてできなかった。


始めは考えてみた。

本当に家飲みしていたのか、店で飲んでたのだはないか。

だが汗だくのまま居酒屋に行くことはない。しかも明日も仕事だ、1人で居酒屋には行かない。

家飲みしていた時、誰かに連れ攫われたか。

これもない。家にはしっかり鍵をかけていた。中年のどこにでもいるおっさんを拉致って得するやつもいない。


「おーい。誰かいないかー」

大きい声で叫んでみたが誰からも返事がない。それどころか自分の声の反響がない。

一体どれだけ広い空間なんだ。


背中にぞくぞくと悪寒走る。自分の顔がこわばっているのがわかる。

真っ暗で無音の恐怖と、1人という恐怖。この先どうなるかわからない恐怖。


発狂しそうだ

「冷静になれ、冷静になれ俺。大丈夫、大丈夫だ」

両手を顔に押し当て、自分に懸命に言い聞かせる。


真っ暗闇を何度も立ち止まり、何度も自分を励まし歩いた。


気持ち悪い、吐き気がする。気持ちが限界に来ているのがわかる。


俺はもう立ち上がることもできず、這いつくばりながら進む




「カツン、カツン、カツン」遠くの方で音がする。

この、真っ暗で無音の空間で始めて聞いた音。


希望なのか、絶望なのかわからない。それでも音のする方へ俺は駆け出していた。



音のする方へ駆けていたら、「ガツン」と、足が何かにぶつかり思いっきり転倒した。


何もない空間に障害物。

俺は、足にぶつかった何かにおそるそろる触ると、それは階段だった。

上に登る螺旋階段。

上を見上げるが、螺旋階段は見えない。上に光もない。ただ暗闇があるだけ。


それでも、「カツン、カツン、カツン」という音は、この螺旋階段の上の方から聞こえる。


「おーい。誰かいるのか」


「・・・・」答えはない。


「よし、登ろう」

俺は意を決して登り始めた。



どれくらい登ったんだろう。


何時間も登ったようで、数分しか登ってない気もする。


真っ暗闇に中、「カツン、カツン、カツン」と規則的な音は続いている。


このカツンと言う音も、俺が作り出した幻聴ではないかと、思い始めた時。




「おーい、誰かいるかー」

どこからか、男の声がする。


俺は慌てて、「おーい、いるぞ。ここにいる」

大きな声で叫ぶが、男は聞こえていないのか、何度も問いかけてくる。


俺は大急ぎで、螺旋階段を降り始めた。


急ぎ過ぎて足がもつれ、螺旋階段から暗い空間へ落ちて行った。





「ビク!」びっくりした。


体がビクっとなり飛び起きた。

俺は確かに、長い螺旋階段を踏み外し、真っ黒な空間に落ちていた。

いや、夢だったのか?


まだ心臓はドキドキしている。背中は冷や汗でびっしょりだ。

周りは、真っ暗で何も見えない。


俺は、床をはいつくばった。スマホや飲み終わったビール缶が手に触れた。


すぐに立ち上がり、壁の蛍光灯のスイッチを付ける。


部屋の蛍光灯が点き、俺のいつもの部屋が目の前にあった。


「帰って来た」

俺は安堵ど、嬉しさで泣いてしまった。




その日から俺は、蛍光灯を消して寝れなくなった。


眠るときは、いつも腕時計を付け、スマホと懐中電灯、水とチョコレートの入った肩掛けバックをかけて眠っている。


あの時の、カツン、カツンと言う音は何だったのか、声の男がどうなったのかはわからないままだ。







読んでいただきありがとうございました。

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