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もったいないお化け登場

〈1話〉【3秒ルールで食べる人】

〈2話〉【鉛筆って最後まで使いきれなくね?】

〈3話〉【節水プロ】

〈4話〉【消さないのも大事】

〈5話〉【それはさすがに…】

〈6話〉【食べる?食べない?】

〈7話〉【掃除は盛大に】

〈8話〉【最高に贅沢な過ごし方】

〈9話〉【どこまで食べれるか問題】

〈10話〉【舐めたい辞めたいもったいない!】

【番外ワンコマ・手洗い】


••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••



〈1話〉【3秒ルールで食べる人】



私の名前は「そねこ」

ただ今学校が終わり、絶賛空腹でヘトヘトです。



「あぁーーーつかれたーーもう空腹で動けないよ……飴ちゃん食べ………ん、か、固っ…あ!!」


それ入った小さい袋は、両側にギザギザの切込みがあり、左右どちらからでも開けれるようになっている。


ただこれが時々邪魔をする。


まん丸い玉がピッタリに入った袋は、開けようとすると稀に玉に引っかかる。それを力づくで開けようとすると……勢いよく袋から飛び出す。


袋の開け方でどこにどう飛ぶかなどわからない。


「あ〜もったいない」


無惨に転がる飴玉。


「もう一個あったは、ず、、あったあった」


今度は言うことの聞く袋だった様だ。

新しく開封された飴の玉をパクッと口にほおりこんだ。


「落としたよ」


後ろから女の声が聞こえ振り返る。

転がっていた玉を拾ったのだろう、指でつまんで差し出してきた。

そこには、ロングヘアの女の子が立っていた。背丈が小さいせいでだいぶ小柄に見えるが、学校の制服を着ているので同じ学校の生徒だろう。


「それもう落ちちゃったから食べれないよ〜」

「じゃあ貰っていい?」

「え、あ、うん…いいよ(?)」


(えっ、何するの!?)


スタスタ歩くロングの彼女。


(どこに行くんだ)


彼女の姿を目で追うそねこ。


(あっ、水道、まさか)


・・ザーーー


(洗った…)


・・パクッ


(た、食べたーー!)


「ね、ねぇそれ落ちたやつだよ??」

「3秒ルールって知ってる?」

「知ってるけど…もう3秒以上たってた思うよ…?」

「ううん」


何を根拠にか、首を横に振る彼女。


「落ちたのを見て一歩踏み出したのに1秒、摘むのに1秒、拾い上げるのに1秒、ほら3秒でしょ」


(えぇ……)


「洗ったから大丈夫!」


こちらの表情で悟ったのだろう。安心してと言わんばかりのドヤり具合だ。


「でも、知らない人が落としたのだけど大丈夫?」

「知ってるよ、だって同じクラスだもん」

「えっうそ気まづ、席ってどこ?」

「君の後」

「まじ?」

「まじ」

「気まづ」

「大丈夫よくある事なんだよね、小さくて視界に入らないこと」

「な、なんかごめん」


・・グ〜


彼女の虫の腹がなった。


「お腹すいてるの」

「(こくっ)」


飴を舐めてるのだろう、口をモゴモゴさせながら、小さい頭を縦に振った。


「飴食べたいなーと思ってたらさ、転がってきたから、ほらだって、あんまり喋ったことない人にいきなり飴ちょうだいって言うのもなんかあれじゃん?」

「まぁ確かに(?)」


妙に納得してしまった自分が不思議だ。


「落ちろ落ちろーー、て念じてたら転がってきたんだっ」

「絶対あんたのせいじゃん、袋から出ようとするの抗ってたの」

「ううん」

「違うの」

「不可抗力だよ」


・・グ〜


再び腹の虫がなった。これも彼女の腹からだった。


「飴あるけど、いる?」

「(こくこくこくこく)」


ちょっと可愛い。目を輝かせて飴を見ている。餌を目の前にしっぽを振る犬のようだった。


これが(そねこ)と彼女の出会いだった。




••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••


〈2話〉【鉛筆って最後まで使いきれなくね?】




「プリント配るぞ〜後ろに回してくれ」


列の人数分先生がプリントを渡し、前から後ろに送られていく。


そねこが後ろにプリントを配ると、ロングヘアの彼女が何やら工作をしているようだ。


「なゆたちゃん、何してるの?」


ロングヘアの彼女は(落とした)飴玉を食べた本人であった。「なゆた」という名らしい。


「この小さくなった鉛筆、捨てるのもったいないから使わなきゃと思ってさ」


見ると5センチほどの背丈になったHBの鉛筆に、長い棒が取り付けられようとしていた。


「ちっちゃ、凄いね、そこまで使ったんだ」

「美術で黒く塗りつぶす専用にしたんだ」

「なるほどね、それでそこまで短くなったのか」

「流石に使いずらくなってきたから、長くしようとしてるんだ、け、ど、…ほら」


不格好に取り付けられた鉛筆位の太さの長い棒がふにゃっと無惨に折れていた。


「力入れると曲がっちゃうんだよ」

「あぁ〜、可哀想なことになってるね」

「でしょ?」


はぁとため息をつくなゆた。


「これは?」


そう言って筆箱から取り出したものを見せるそねこ。取り出したのは〈鉛筆延長ホルダー〉だった。


「何これ?」

「鉛筆延長ホルダーて言って、短くなった鉛筆をはめると、ほら」

「おぉなにこの画期的なアイテム」


予想以上の良い反応に少し嬉しくなった。


「書ける書ける!すごいねこれ」

「ね、便利だよね」

「これ貰っていい!?」

()()()()()()

「ありがとう!」


(聞いてたかなこの子)


そねこは貸したつもりだったが、なゆたは貰ったと思っているのではないかと少し不安だった。


(まぁいっかまだ持ってるし)


一旦授業に集中しようと教卓に姿勢を戻そうとした時、変な音が後ろから聞こえてきた。


・・ジャラジャラ


(!?)


「何それ」


どこから取りだしたのか短くなった鉛筆たちが机にぶちまけらていた。


「これでようやくこの子達を供養できるよ」

「供養って…それ集めてたの?」

「捨てられなくってさ」

「物持ちいいんだね」

「よく言われる」


短くなった鉛筆をちゃっちゃと装着するなり、なゆたは呟いた。


「もっと前からこのアイテムあったらあの子たちも報われたのに…」

「あの子たち?」


机にぶちまけられた小さい鉛筆の量と、湿っぽい表情をされたら、いくら何でも何の話が気になりすぎて、授業に集中できない。

と言いつつ、授業に集中している時間の方が短いのだが。


「小学生の時って鉛筆強制的に使わされるじゃん?」

「シャーペン禁止だったよね」

「あれってもったいないと思うんだ」

「なんで?」

「シャーペンって耐久性高いから、長く使えるし、この子達(小さくなった鉛筆)見たく途中で捨てられることもないと思うんだ」

「そこまで短くなるまで使ってる人なゆたちゃんが初めてだよ」

「なんで鉛筆なんだろうね」

「それは筆圧が上手くコントロール出来ないからじゃない?」

「ほうほう」

「筆圧が安定しないと、ポキポキ折れちゃうんじゃないかな、だから、しっかり濃ゆく書ける鉛筆なんだと思う」

「それで言ったら、シャー芯の方が折れやすいから、コントロール訓練としては良さそうだと思うんだよね」

「まぁ一理あるか」


(コントロール訓練って…)


突っ込んでいたらキリがないと思い、話を進めることにした。


「鉛筆って丈夫すぎるからついつい力入っちゃうでしょ?するとさ、ここら辺が真っ黒になるんだよね」


なゆたは小指の下のふっくらした部分、字を書く時に机に着く部分を指して言った。


「分かる〜あれを消しゴムで消してたわ」

「やってる人いた」

「それ私だわ」


鉛筆を使う理由がもうひとつあったことを思い出した。


「そういえば、とめ・はね・はらい、を上手く書けるようになるためもあるらしいよ」

「やらされてた」

「言い方」

「中学生になって注意されたことある?」

「ないな」

「ないよね」

「まぁ、色々事情があるんでしょ」

「そういう事か」


私たちは何かを悟った。


「後ろ〜聞こえてるぞ」


(やべっ)


勉強に集中出来るようになるのはやはり、先生の一声が一番説得力があるなと感じた。



••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••


〈3話〉【節水プロ】



今日はなゆたの家でタコパをすることになった。


そうすることになったのはなゆたの一言がきっかけだ。


「タコ食べたい」

「タコ美味しいよね」

「なんかこうさ、無性に何かを食べたくなる時ってない!?ラーメンとか…肉とか」

「あるある」

「タコパしない?」


たった30秒の会話だった。


そう言う(そねこ)は、炭水化物が食べたい気分であり、見事に利害が一致した。


「そねこ〜帰ろー」

「あ、こめこ」

「そねこが私意外と喋ってるの珍しい〜!早速?お友達!」

「聞こえてる聞こえてる」


こめこはそねこの友達であり、声がでかい。


「始めして」


ぺこりと頭を下げるなゆた。


「わぁ〜かわいぃ〜!ちっちゃい〜!」


こめこはついでに、テンションが高い。

こめこはなゆたに急接近。こういう時の女子の距離感の近さは計り知れない。


「なになに〜?なんの話ししてたの?」

「タコパしないかって」

「うわっ!タコパ!うちもした〜い!ねぇねぇいつする!」


こめこはすっかり、参加人数に加わっていた。


そして早速日程が決まった。今週の土曜昼に、なゆたの家でタコパをすることになった。


「もう今から楽しみ〜!一品入れたい具持ち寄りね!」


足を躍らせながら、こめこは歩いている。


「なんかこう、真逆だね」


なゆたは呟いた。


「真逆というか生きてる次元が違うって感じする」


当然そねこも自覚があった。


そんなこんなで土曜日がやってきた。


・・・・


「最初に持ってきた好きな具!見せ合いっこしよ〜!」


なゆたとそねこは流れに身を任せることにした。


具を広げた瞬間、視線が一点に集中した。


「こ、こめこ、それって…」

「グミだよ!私グミ大好きなんだ〜!」

「それは知ってるけど…見てよなゆたの顔」


開いた口が塞がらず、〈真実の口〉そっくりな顔をしていた。


「だ、大丈夫だよ!グミって何にでも合うから美味しいと思うんだ!もし美味しくなくても私が全部食べるから!」


「そねこは何持ってきたの?」


・・ドンッ


何故か聞こえるはずの無い鈍く思い音がした。


「米」

「「米?」」

「なんか無性に炭水化物が食べたくって」

「ラーメンと米、お好み焼きと米みたいな、炭水化物を炭水化物で食べるあれじゃん!」


なゆたの口が塞がらなすぎて、顎が外れそうだ。


「私も食べることあるよ!炭水化物で炭水化物」

「そりゃ私もあるけど、たこ焼きだよ?入れる具だよ?炭水化物の過剰摂取だよ!」

「そうかもしれないけど、不味くはならないと思うんだ」


一瞬なゆたとそねこの視線がグミに行ったのは不可抗力だ。


「タコライスとかもあるし案外良いかもよー!」

「それタコ入ってないよ…!」


なゆたの突っ込みはキレキレだ。


「じゃあ最後なゆた」

「よくこの流れで私にパスできたな」


やれやれと行った感じで机に置いた。


「普通だね」

「結構普通だね」


なゆたが持ってきたのは、チーズ、ソーセージだった。


「こういうのがなんだかんだ一番いいんだよ」


私も他にも持ってくればよかった〜という、こめこの独り言は触れずに早速タコパが始まった。


・・・・


「こめこちゃんストップ!」


慌てた様子で声をはりあげるなゆた。

見ると袋ごとグミをぶちまけようとしていた。


「1個ずつにしよ!美味しかったらまた入れればいいし!」

「うーん、それもそうか」


なゆたとそねこは胸をなでおろした。


「じゃあまずはそねこのから〜!」


・・パクッ


「米だ」

「米だね」

「米だったね」


感想、米だっだ。


「次はグミ、だね」

「いただきまーす!」


勢いよく口にほおり込むこめこ。暫くモグモグと噛んで、噛んで、噛んだまま喋らなかった。

不思議に思ったなゆたとそねこは2人同時に口に入れた。

2人は噛んで、噛んで、黙った。


「なんか…スイーツとご飯は一緒に食べちゃダメだね」


最初に口を開いたのは、一番最初に食べ始めたこめこだった。


「うん…」

「なんか…想像してた以上に…」

「美味しくないね」

「うん…」

「1個ずつにしといて良かった」

「「そうだね」」


自称グミ大好きなこめこでさえ、この反応だった。


感想、全員一致で不味い。


「ん〜!なんだかんだやっぱりこれが一番だね!」

「美味しい」

「なんだかんだより一層美味しく感じるよ」


3人はチーズとソーセージ入のたこ焼きを沢山食べた。


「すっごい伸びる」


そねこはたこ焼きの半分を噛み、中からビョーンとチーズが伸びるのを見せた。


「上に乗せても美味しいよ!」


各々自分の好きな食べ方で楽しんだ。

こめこも先程とは打って変わって満面の笑みだ。


「お米もそのまま焼いても美味しいね〜!」

「焼きおにぎりみたいで美味しいね」

「もういっそ焼きおにぎりにしちゃお」


完全敗北したのはグミだけだったようだ。

3人の頭からグミのことはもう消えていた。


・・・・


「あぁ〜お腹いっぱい、美味しかった〜!」

「食べた食べた!あ、私洗い物するよ」


なゆたはせっせと手際よく机の上を片付けていた。その様子を見てそねこは洗い物を勝手でた。


「助かるよ」


・・ザバー、キュッキュッキュ


洗い物をしていると、ヌンっと背後になゆたが現れた。そねこの肩越しにじーっと何かを見つめていた。


「うわっびっくりした」


・・ザバーーーー


声をかけるが反応はない。


・・ザバーー


「なんか背後霊みたいになってるよ」


ようやく目線が合う。


「机の片付け終わったから代わるよ」

「あ、ありがとう」


恐る恐る洗い場を代わった。


・・ピタッ


「お客さんはゆっくりしてて」


そう言ってなゆたは洗い物を始めた。

何を見ていたのか気になったそねこは、確認すべくなゆたの肩越しに洗い場を眺めた。今度はそねこが背後霊のようになった。


「なんか少なくない?」

「何が?」

「水の量」

「通りで静かだと思った!」


くつろいでいたこめこが話に割って入る。


「これくらいがちょうどいいんだよ」


・・ジョーー


「洗い物の時ってついついオーバーに水を使いがちなんだ、流れ落ちる大半の水は無駄になってるんだよね」

「へぇーそうなの?」

「ただの持論」

「持論かい」

「でも実際この位の水の量で事足りるんだよね」

「そうなんだ」


・・ジョーーサッ、ジョーーサッ


なゆたの手つきは慣れたもので、洗っている最中に次に洗う皿を片手に用意し、洗い終わるなりサッと次の洗い物の泡を流し始めた。

全く無駄がない動きについつい見入ってしまった。

一方そねこは格好が完全に背後霊だ。


「洗う前にこうやって浸け置きしておけば、油汚れも落としやすいよ」

「家政婦ですか?」

「ニート」


大きい洗い物の中に小さい洗い物を入れ、水で浸しておく。すると、たわしで擦らなくてもサッと撫でるだけで簡単に汚れが落ちていった。


「ほんとだ、なゆたって器用なんだね〜!」


反対の方にもう一人背後霊がついた。いつの間にか皆それぞれ呼び捨てになっているのは誰も気にしない。


見事な手さばきで一瞬にして洗い物とキッチンが綺麗になった。


・・・・


その後しっかりゆっくり寛ぎ、休日を満喫した。



••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••


〈4話〉【消さないのも大事】



本日日曜日、そねこ宅で3人でゲームをしている。


「そねこ、借金…!笑」


そねこの借金額を見て我慢していた笑いが込み上げついに吹き出してしまうこめこ。我慢する気があったのか怪しいくらいだ。


「こんなはずじゃ、でなんでなゆたは富豪なんだ…!」

「(どやっ)」


(顔で語るな顔で)


こめこは転げ回りながら爆笑をかましている。


3人は人生ゲームをしていたのだった。


「一旦休憩!!」

「そうだね、休憩」

「そねこ…借金5億…ぶっはは!」

「はいはい…」


まったくこめこの腹の虫はどうなっているのかと思うそねこだった。


「ごめんジュース無くなっちゃった、お茶しかないや」

「今日暑かったもんね〜」

「どっかの誰かさんは寝坊して走ってきたもんね」

「(ぽけ〜)」


そねこ宅は初めてだったので待ち合わせをしていたのだが、見事に寝坊し、律儀に猛ダッシュで来たなゆただったり


「全然言ってくれれば大丈夫だったのにね!あ!私アイス食べたい〜!」

「じゃあコンビニ近いし買いに行く?」

「そうしよ!」

「(うんうん)」


皆が賛成したところでコンビニに向かうことになった。そねこ宅からコンビニは徒歩5分くらいの所にあった。近くて便利とはこの事だ。


・・ピッ(電気を消す音)

・・ピーッ(エアコンを消す音)


「え?」

「え?」


なゆたに釣られたそねこ。


「なんで消しちゃうの」

「外出するから」

「もったいない」

「え?」

「え?」


2人の疑問が見事に交差する。

山びこでもしているのかと思った。


「電気をつけるのってパワーがいるんだ。30分程度の外出なら、付けっぱなしの方が電気代少なくて済むんだよ」

「そうなの?」

「うん」

「あ!それ、テレビで聞いたことあるかも!」

「知らなかったの私だけ?」


目を合わせかと思ったらこちらを見て頷く2人。

そねこが唯一こまめに付けたり消したりしていた電気だったが、この日を境にそれを辞めた。


・・・


「ほんとだ」


信じられなかったそねこは後にコソッと調べるのであった。




••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••


〈5話〉【それはさすがに…】




「お腹空いたーーー」


放課後でかでかと空腹宣言をしたそねこはバックから小袋を取りだした。


「そねこっていつも飴持ち歩いてるの?」

「うん、小腹がすいた時用、いる?」

「(うんうん)」


嬉しそうに食べるなゆた。


「ちょっと溶けてるかも…うわっこれまた固っ…!」


・・ポンッ!


勢いよく飛びだす玉。


「そねこって袋開けるの苦手?」

「袋苦手とかあるのかな」

「うーん」


そう言って地面に落ちた玉をつま見上げる。

なんだかデジャブのような光景だがひとつ違っていた。


・・ネチョ


今回落とした玉は、中にガムが入っているタイプの大玉で、飴が溶け、ガムがネチョッとしていた。


「もったいないなぁ」


そう言ってそねこは洗い場に向かった。

その後ろをなゆたはついて行き、動向を伺っていた。


ガムを洗い始めるそねこ。


「まって、そねこそれ食べるの」

「うん、最近なゆたに感化されてさ、私も色々大事にしようと思って。ほら、洗えば大丈夫でしょ」


似ても似つかないなゆたのドヤ顔をして見せた。


「な、ど、どしたのその顔」


口はシーサーの様にあんぐりと開き、ムンクの叫びの様な表情と雰囲気が漂った顔でこちらを見ていた。


「やめた方がいいと思うよ」

「え、なんで」

「だってガムだよ?砂ついてるよ?洗ってもベタベタには勝てないよ?」


信じられないと顔が必死に訴えていた。


「そねこってもしかしてバ…」


電気に続き2度目の失敗に恥ずかしくなり、スタスタと勢いよく席に着いた。新しい飴の小袋を開けるのに力が入る。


・・ポンッ!ペチャッ


「開けてあげようか?」

「(…うん)」


こくっと一回だけ頷いた。



ガムが入ったものは買わないようにしようと思うそねこであった。



••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••


〈6話〉【食べる?食べない?】




今日はなゆたとそねこ2人でファミレスに来ている。



「あぁ〜〜夏期講習しんどかった…」

「地獄」

「あじー(暑い)…お腹空いたしファミレス寄ってかない?」

「わかる」


空腹と冷房と暑さから逃げたいという様々な思いが交差していた。


「「涼しい〜…!」」


入店するなり冷房の快感に包まれた。


「何食べよ〜」

「私はミックスグリルにしようかな、肉が食べたい肉が」


なゆたの目は肉になっていた。


「私はーー、冒険したい気持ちもあるけど…やっぱり唐揚げ定食にしようかな」

「冒険したいけど結局安定の美味しさ求めちゃうのわかるよ」

「わかってくれる?量もあるし、味噌汁と漬物も付いてるから圧倒的満足感が好きなんだよね」

「わかる」


何だかんだ気の合う2人だった。


「そういえば今日こめこちゃんは?」

「こめこは部活だってさ」

「夏期講習の後に部活とはご苦労さま…」


(その手はご愁傷さまじゃないか?)


なゆたは両手を合わせて拝むポーズを取っていた。


「ぁぁ〜、お腹いっぱい」

「もう食べれない」

「・・食べ終わったけど出たくない、な、デザートでも食べようかな〜、なゆたもデザート…あっお腹いっぱいか」

「ふふ、デザートは別腹」

「だよねぇ」


ふたり仲良くメニューのデザートページを見る。

すると、なゆたのお皿にあるものを見つけた。


「エビのしっぽ食べないの?」

「うん食べない」

「もったいなくない?」

「昔は食べてたんだけど、最近は食べなくなった」

「なんで?」

「聞いたら後悔するよ」

「そんな残酷なこと?」

「(ううん)食事中だから」

「今食べてないしいいよ」

「テレビで、エビのしっぽはG(ゴキブリと同じ成分だってのを見てなんか、食べれなくなった…」

「なんだそりゃ」


なゆたの予想では、うわっまじか!イヤだ!私も食べたく無くなった!なんて反応を期待していたのだが、実際の反応はと言うと、成分が一緒なだけでGじゃないんだから食べれるでしょ何言ってんだこの子、みたいな顔をしていて一人勝手に寂しくなった。


「…許して欲しい」


寂しくなった末に許しを乞うた。


「食べていい?」

「いいよ」


エビフライのしっぽを食べるそねこ。


「美味し〜このパリパリがいいんだよね」

「ただそのパリパリが、ゴ…」

「今食べてるから」


食べてる最中に光沢の背中…これ以上はやめておこう。Gの姿が頭に浮かんんだのをなゆたのせいにし、冷ややかな視線を送った。


「しっぽ貰ったし私もデザートのトッピングなんかあげるよ」

「じゃあそれ頂戴」


指を指した先には唐揚げ定食に添えられている、薄くスライスされたレモンだった。


「んどれ?」


なんかあったっけ?と自分の皿をキョロキョロするそねこ。


「レモン」

「えっこれ食べるの」

「うん」

「い、いよ(?)あ、でも箸つけちゃった」


そう言ってレモンが乗っている皿ごとなゆたに渡すが、なゆたには箸が着いたことなんかどうでもいいみたいだ。


嬉しそうに目を輝かせていた。


「じゃあもらうね」


皿に乗っているレモンを自分の箸でつかみそのまま口に運んだ。


(えっ!?、そのまま行くの!?)


皮ごと口に消えていった。


(えっ!?、皮だけ出てきた)


綺麗に身だけ削がれた皮が口から出てきた。


(うわっ酸っぱそう)


口が梅干しのようにすぼんだ。


「レモン食べる人初めて見たかも」

「あんまりいないよね、お陰でオードブル食べる時とか、レモンを独り占めできる」

「よかったね(?)」


2人のお皿はきれいスッキリ何も残っていなかった。

あまりに綺麗なWinWinであった。


••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••


〈7話〉【掃除は盛大に】



今日はプール清掃の日だ。


「もうすぐプールかー」

「やりたくなくても強制的にやらさらるプールの授業をするために生徒自らの手で洗わせるってなんてスパルタなんだこの学校」

「まぁそういうな」

「そねこはプール好きなの?」

「私は好きかなー、座学と比べて楽だし、運動好きだしね」

「最後の流れるプールだけやってたい」

「子供かっ」


「なゆた運動得意そうなのに嫌がってるのなんか意外かも」

「私天パ(天然パーマ)なんだよ、プール入ると濡れた髪が爆発するんだよね」

「なゆた髪長いしそんなに目立たなそうだけど」


じとっとした目でこちらを見てきた。


「まぁ色々あるんだ」

「色々あるのか」


色々あるんだろうと思いそれ以上踏み込むことをやめた。


お喋りもそこそこにプール掃除が始まった。


大体のエリアと人数配置で分担された。プール外周、プール中、水道、更衣室、トイレなどなどだ。


役割分担は挙手制で行われた。


クラスの陽キャな女子と陽キャな男子はみんなでプールの中に入っていった。まだ始まってないが、ホースで水遊びをする光景が目に浮かぶーー。


なゆたとそねこは、最後に残った場所。


トイレ掃除だった。


(特に希望無かったし、なゆたと一緒で気が楽だ)


個室であるトイレは先生からの死角なっており、更に自由度を広げていた。


(そういえば…)


そねこの頭に浮かんだのは、とある日のなゆただった。


(なゆたって節水にこだわってたよね、てことは)


チョロチョロゴシゴシ、チョロチョロゴシゴシ…水を少しづつ丁寧に無駄なく要領よく掃除する姿を想像した。

見違えるほど綺麗になるかもしれないが、時間はかかるかもと思ったそねこだった。


(まぁ時間あるしゆっくりやるか)


・・ドバーーー!!


(何事!?)


ホースから勢いよく水を出すなゆたの姿があった。


「なゆた!?」

「どったの」

「い、いや、節水してたから意外だなと…」

「バカだなぁ」

「ば、」

「掃除でチマチマしてたら落ちるもんも落ちないでしょ、それこそ本末転倒だよ」


やれやれといった顔で首を振る。


「水を出した方が水の勢いで広範囲の掃除が一気にできるじゃないか、それに洗剤を使うと泡立ちが良くなるし、水で流れた泡が汚れを絡めとってくれるしで、一石二鳥だよ、洗浄効果も上がるってわけ、わかったかねそねこくん」


何故か博士口調になるなゆたとぐうの音も出ないそねこであった。


「ぐぬぬ…恐れ入りました」

「よろし」


エッヘンと小さい背をのばし胸を張るなゆた。


「なゆたって意外と考えてるんだね」

「地球を愛してるからね」

「どゆこと」


••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••


〈8話〉【最高に贅沢な過ごし方】



今日はなゆた宅で勉強会をすることに。


・・ピンポーン


なゆた宅のインターフォンを押すそねこ。


「・・・あれ?寝てんのかな」


・・ピンポーン


何回も押すのはあれかと思い、しばらく様子を見ることに。


・・ティロン


スマホの通知音が鳴る。


「なゆたからか」


ライーンの通知が来ていた。


・・(ついた?)

・・(ついたよ)

・・(上がっていいよ〜誰といないから大丈夫)

・・(わかった)


「お邪魔しまーす」


不用心にも玄関の鍵は開けてあった。

なゆた宅には何度か遊びに来たことがあるので、真っ直ぐなゆたの部屋へ向かった。


・・ガチャ


「お邪魔しまーす…サムっ…て、何してんの」


部屋に入ると、布団にくるまってミノムシみたいになっているなゆたがいた。

ついでに部屋はエアコンがガンガンに効いており、ぶるっと来るくらいには寒かった。


「やっほーいらっしゃい」

「どしたの、もしかして寝てた?」

「いまさっき起きた」

「だろうと思った」

自分家(じぶんち)が集合場所の時の特権だよね、時間になるまでダラダラできる」

「なゆたはダラダラしすぎ、そんなに寒かったらエアコンの温度あげればいいのに」

「わかってないなぁそねこは」


出迎えもなくライーンで部屋へ呼び出したかと思えば友達が来たというのに布団でダラダラしている上でよくその言葉が言えたなおいっ。

と思うそねこだった。


「クーラーの効いた部屋で布団かぶって寝るのが最高に気持ちいいんだよ」

「異議なし、それは同感だけど…なぜ今」

「いやぁ、本当は今日早起きしたんだよ、待ってる間時間あるから漫画でも読むかと思って布団でゴロゴロしてたらさー」

「布団とエアコンの最高のマッチに気づいてしまって抜け出せなくなった末に寝落ちしたか」

「そゆこと」


幸せそうな顔で今だに布団にくるまったままのなゆた。


「ほらー、勉強会するぞー」

「もうちょっとだけ」

「先に始めるよー」

「うぃ」


隣で寝ている人がいることで逆に集中力が働くのは何故だろう。なんだか危機感の様なものを感じるからかもしれないと思うそねこ。


最初は得意な数学に手をつけて正解だった。

スラスラと解けることで集中力に勢いがついた。

そして、その高めあげられた集中力のせいであっという間に数学が終わってしまった。


次に英語に手をつけたのは失敗だった。

勢いに乗ったそねこはこのままの勢いで苦手を制してやろうと思ったが、微塵も内容が頭に入ってこない。


「うーん、」


行き詰まったそねこは別のことに気を取られる。


なんともまぁ気持ちよさそうに3度寝をかましている奴がいた。


(数学終わっし、ちょっとだけ)


そう言ってカーペットの敷かれた床に座布団を置いて枕替わりにし、横になった。


ベッドに余っていた薄い布団をついでに被ってみることに。


(わっ気持ちいー…)


クーラーがガンガン効いた部屋のおかげで冷えた体を、布団が優しい温かさで包み込んだ。


(これは寝れる…)


そのまま2人は寝落ちした。



・・・


「ただいま〜なゆたお友達来てるのー?」


午後3時になり、お母さんが帰ってきたようだ。


「なゆた〜?」


何度か呼ぶが返事が無いことを不思議に思い、なゆたの部屋に向かう。


「なゆた〜?(コンコン)開けるよ」


爆睡する2人の姿があった。


「あらまぁ」


微笑ましいような光景に少し笑みがこぼれた。


「やだっこの部屋寒いわね」


そう言ってエアコンの設定温度を5℃上げた。


・・・



「(はっ!)」


2人ほぼ同時に目覚める。


「やば…寝てた〜、」

「私も寝てた、今何時だ〜」


寝ぼけるなゆたは時計を見る。


「(は〜っ…!)」


驚きのあまりあくびで吸った息が止まる。


「もう4時」

「早くね?」

「寝休日してしまった」


・・・


部屋からでて階段を降り、キッチンに向かうなゆた。長時間寝て喉が渇いたからである。


「あれ?母さんおかえり」

「なゆた〜おはよう」

「(げっ)」


第一声がおはようなのは確実にバレてる気がして気まづくなった。


「お友達も来てるのよね。いらっしゃい!」


なゆたの陰に隠れていたそねこの存在もすっかりバレていた。


「あ、お邪魔してます」


ぺこりと丁寧に挨拶をした。


「ケーキあるけど食べる?」

「食べるー!」

「お友達もどうぞ!」

「あ、ありがとうございます!」


帰り道に寄ったケーキ屋さんに入ったところ新作が沢山出ていたので、ついつい衝動的に買ってしまったのだと。


「美味し〜」

「最高だ…」


ケーキを堪能し、何だかんだ6時を回ろうとしていた。


「1日寝て過ごすって…なんか凄くもったいない感じがするよね」

「わかるよ」

「でもさ、1日寝た日って罪悪感もあるけど、最高に気持ちいよね」

「わかる、わかるよ」

「喪失感と罪悪感を犠牲に得られる快感は特別だな」

「間違いない」


なゆたの意見にひたすら共感してしまうそねこ。


罪悪感と満足感とケーキの甘さを味わった。


「あ、課題終わってね」

「あっ」


特別甘いケーキの後味は格別に苦かった。



••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••



〈9話〉【どこまで食べれるか問題】



今日はなゆた宅でBBQだ。


お友達もぜひ一緒に!と猛烈な歓迎を受け、そねことついでにこめこも着いてきた。


「こんにちは〜!」

「こんにちは」

「あら、いらっしゃい!」


なゆた宅に着くとBBQの準備の真っ最中で、火起こしをしている所だった。

ベランダのある庭は10人以上でパーティが出来そうな程広々しており、植えてある木々や花は決して激しく主張せず庭を華やかにしていた。


机には肉、野菜、串、飲み物が沢山並べられていた。見るだけで幸せな光景だ。


「なゆたお友達紹介しなさいっ」


一瞬怒ってるのかなとも思ったが、嬉しそうな表情とそわそわ感から、待ち遠しい!早く!といい意味で急かしているようだ。


「そねこ と こめこ テンション高い方がこめこ。そねこは同じクラスで前の席なんだー、こめこはそねこと仲良くて、そっから知り合ったんだ」

「そう〜!こめこちゃん、そねこちゃん、もうすぐ準備出来るからもうちょっとまっててね!」


「ゲームでもする?」


なゆたの提案で部屋にあがり、ゲームをして待つことにした。



・・・


20分程たち、いい匂いが漂ってきた。


「うわぁ…お腹空いてきたー!」

「いい匂いだね…」

「(ぐー)」


なゆたの腹の虫はいつもよくなっていた。


「できたよー!」


なゆた母さんの声を聞いてからその場を立ち上がり庭に行くまで、皆一瞬だった。


豚、鶏、牛、ネギが刺さった串、ブロッコリーにピーマンに椎茸……などなど、食べたいものは何でもある!状態であった。


「沢山あるから!みんな食べて食べて〜!」


あれもこれも!となゆた母さんは食べさせてくれ、お皿に次々と焼きあがったお肉と野菜たちが盛られて行く。そのおかげか皆は途中から遠慮がなくなり、沢山食べることにした。


「手羽先もあるよ」

「珍しい感じするら手羽先あるの」

「好物なんだよね」


手羽先はなゆたの好物のようだ。


「みんなの分もあるから食べていいよ」


なゆたは、自分の好きな物はみんなにも食べて欲しいタイプのようだ。と初めは思ったが、みんなの分を用意してくれた…と言うよりかは、恐らく全部自分で食べるつもりだったんじゃないかと思うそねこであった。なゆたの食べっぷりは勢いがよかった。


「じゃあ私も貰おっかな」


骨ごとかぶりつくそねこ。


「わぁ〜!なゆた、食べ方すっごい綺麗〜!」


特別でかい声が聞こえた。こめこだ。


何事かと思い見てみると、綺麗に骨だけになった手羽先が皿に乗っていた。


なゆたはいつものドヤ顔に胸を張り、小さい背を伸ばしていた。


「わっホントだ、身全部ないじゃん」


チラッと自分の皿に残った手羽先を見る。


なゆたは次から次に手羽先を口にほおりこんでいく。


直角になった角の部分をグリグリ捻りながらポキッとおり、まずは身がたっぶりとのった部分を両手で持ちガブッと口に加える。

身を口にくわえ骨を持った両手をすっと引くと、あら不思議、身がなくなり2本の骨だけがキレイに出てきた。

次は身が少なく、カラッとした部分を口に入れる。平たく広い部分を口でペリっと剥ぐ。次はその反対側の皮にかぶりつく。最後に中央に残った身にかぶりついた。


「すごい、そこまで食べれたんだ手羽先って」

「この身が沢山ついたところはみんな食べるんだけどね、皮の方は食べる人って少ないんだよね」

「なゆた天才ー!」


するとチラッとどこかをみるなゆた。

視線の先はそねこの皿の中だった。


「そこも食べれるよ」


そことは、皮の部分のことだ。

言われるがままそねこも食べてみることに。


「そこも、その中の所も、その端の方も」


なゆたの指示に従いながら身を食べ尽くした。


「もうちょい食べれる、あとここ」


まじかこんな所も食べれるんだ。ここまで来たら最後まで食べ尽くすしかない、その一心で身を剥いだ。


手羽先の小さい身を最後まで余すところなく食べ切るには、少し時間がかかった。だが、きれいスッキリ骨だけになった手羽先を見ると、何だか心がスッキリした。


「全部食べると気持ちいでしょ」

「うん、ちょっと食べるの大変だけど、ここまで食べれるの知らなかったや」

「でしょ?」


そう言って新たな手羽先を手に取り、再び身を剥ぎ軟骨を剥ぎ始めた。



••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••


〈10話〉【舐めたい辞めたいもったいない!】




今日は3人でなゆた宅で夏休みの宿題をしている。


「あぁーーー疲れた!」


叫び声を上げたなゆたは、バタンと後ろに両手を広げて倒れた。

これは、勉強会を初めて15分後の出来事である。


「なゆた可愛い〜!」


猛暑に輝く太陽のように、今日も明るいこめこは、室内も暑く感じさせる。


「そねこが集中してる…」

「知っダメだよ話しかけちゃ!」


こめこが注意するのは珍しい。

小声で後に続けて教えてくれた。


「今ゾーンに入ってるからっ!1回集中するとさ、集中力って続くじゃん?今そのモードに入ってるからっ」

「ゾーンに入るの簡単すぎね?」


床に倒れたなゆたの視線からはるか上の方にあるそねこの顔を眺めた。集中している顔だった。


「ふぅー」


その様子をしばらく眺めていると、何故か自然と、やらなきゃ、という気持ちになった。


体を起こし、机に向かう。


そのなゆたをみて、釣られたこめこも、筆を走らせた。もっともこめこは1番真面目な人なのだが。


1人の集中モードが集中を呼び、3人は真面目に机に向かった。


・・・


「あぁ…ダメだ集中なくなった」



最初に音を上げたのはそねこだっだ。最初に飛ばしすぎたようだ。

勉強会を初めて1時間後の出来事だった。


「あぁ〜ちょっと休憩!」


なゆたは再び床に倒れた。


「私もちょうど一区切り着いたー!」

「どこまで進んだ?」

「国語が終わって、今英語に入ったとこー!」

「もしかしてこめこちゃんって意外と頭いい?」

「こめこはクラスで1番成績いいよ」

「え?がち?」

「凄いでしょー!」


謙遜もない清々しい声だった。その声からは嫌味は一切感じず、シンプルに、凄いなと思うだけであった。


「私なんか集中したのに、テキスト半分しか進まなかったよ…」

「私は数学は終わったよん」

「相変わらず数学得意野郎め」

「褒められてるようにしか聞こえない」


皆の進行速度に圧倒的に置いていかれたなゆたは、自分の世界モードに入った。


「夏休みの宿題って、なんであるんだろう」

「悟りに入ったか」

「(悟り)」


「夏休みの宿題って無駄だと思うんだよね、無駄に多いんだよね。家族とか友達とかと思い出増やしたり、部活動に入れ込んだり、青春したり、もっと学生遊んでいいと思うんだよね」

「あんたは家でゲームしてるでしょ」

「まぁまぁ」

「(まぁまぁって…)」


「テキストの答えっ登校日に配られるじゃん?それまでに真面目に全部終わらせてる人っていないと思うんだよ」

「私終わらせるよ!」

「こめこちゃん…」

「こめこはああ見えて成績優秀だからね」

「そねこは?」

「私?絶対やらないね」

「結局さ、やる人はやるしやらない人はやらないってことだよね」


やれやれと首を横に振る。


「宿題って増えてもやる人は結局ちゃんとやるし、減ってもやらない人は絶対やらないんだよね、それよりか、自由研究とか絵とかの宿題を増やした方がいいと思うんだよ」

「えぇ〜こめこは絵苦手…あっでも!自由研究は好きだよ!」

「私は自由研究あんまかな…毎回題材考えるのがな…」

「でもさ2人とも、やり始めるまではめんどくさい〜て思うけど、やり始めたらちょっと楽しくなってこない?私なんか習字に力入れすぎてさ、最初やだなとか思ってたんだけど、〈勝〉は1枚目がいい!〈利〉は3枚目がいい!とかってこだわりが出てきて、結局ひと袋習字の紙なくなっちゃったりしたよ」

「あぁ〜!あるある!私も絵描き始めたら、ここはこの色で塗って〜グラデーションにして〜とかってこだわり始めちゃう!」

「でしょ?」


その内容に妙に納得してしまった。


「テキストなんかさ…結局答え写しちゃうんだよね…適度に間違えていかにも、ちゃんと解きましたよ!感出すために工夫する方に力入れちゃうんだよね」

「(うわぁなゆたと一緒だ)」


そねこはわざと口に出さなかった。


「それだっだら、自由研究とか、作品出典に力入れさせた方がみんなのやる気もでるし、才能開花に繋がると思うんだよ」

「その格好で言われると宿題から逃げてるようにしか見えんな」

「えっ…」


見つめあったなゆたとそねこの間に少しの沈黙が走った。


「糖分補給でもするか〜」


そう言ってのそのそと重い体を起こし立ち上がった。


「母さんがケーキ買ってきてくれてるんだよね、こめこちゃん食べる?」

「食べるー!」

「私は?」

「そねこもいるの?」

「食べたい」


怒ったような悟っているよな諭されているような目を向けられた。


「勉強から逃げてるなんで言ってすみませんでしたなゆたさま」


ははぁと腕をのばし、正座の姿勢で上下に体を動かした。


「よろし」

「ありがたき幸せ〜」


しっかり3人分のケーキを持ってきてくれた。


・・・


・・じーーー


「どしたのなゆた〜?」


じっとみているなゆたに声をかけるこめこ。


・・じーー


「そうやって食べるんだ」


ケーキの周りに付いているフィルムを剥いだそねこは、フィルムについたクリームをフォークで食べていた。


「だってもったいないじゃん…」

「こめこちゃんは食べないタイプか」

「えっ、へへ」


恥ずかしそうに頭をかくこめこ。その表情は何かを隠している風に見える。


「正直にさ、手を挙げて欲しいんだ、これ(フィルム)についたクリーム舐める派の人!」


ビシッと手を挙げたなゆたの後を続いてそねこも少しあげ、続いて以外にもこめこも手を挙げた。


「だよね〜」


皆はホッとしたような表情をみせた。


「家じゃさ舐めれるけど、人前じゃ舐めれないじゃん?」

「わんちゃんみたいになっちゃうもんね」

「このクリームをみながら、舐めたいー!と思いながら我慢するよねー…」

「お行儀悪いけどさ、舐めちゃうよね〜、!」

「あああ」


シュンとして悲しい表情を見せたなゆたは、自分のケーキのフィルムを取り、ケーキを食べ始めた。


「い、いまならさ!私らしかいないからいいんじゃない!」

「「えっ」」


こめこの意外な提案に2人は驚く。


「みんなで渡ればなんとやらだよ!」


じっとフィルムについたクリームを見る。舐めたい、舐めたい…でも流石に恥ずかしい、でもせっかくの提案この波にのるしか…


「大丈夫?引かない?」

「大丈夫だよ!!」


もう一押しだと言わんばかりにこめこの声に力がこもる。


3人はチラチラとみんなの様子を伺いながら、本当に舐めるのか?舐めるのか?この雰囲気絶対舐めるよね?誰もやらなかったら恥ずかしいけど、流石にこの雰囲気は行けるよね?

タイミングをはかって3人同時にクリームを舐めた。



「「「(最高…)」」」



ケーキとクリームは跡形もなくキレイに食べ尽くされた。



••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••


【番外ワンコマ・手洗い】


・・ジャーー(手を洗うそねこ)


(ジャーー)


・・プシュップシュッ(石鹸をだすそねこ)


(ジャーーー)


・・ワシャワシャ(石鹸で手を洗うそねこ)


(ジャーーーー)


・・キュッ(出しっぱなしの水を止めるこめこ)


「あっありがとう」

「どういたしまして」


(そろそろいっか、流そ)


その意図を察して水を出してあげるなゆた


「ありがとう」

「どういたしまして」


・・ジャーー(泡を流すそねこ)


そねこの手の下に重なる位置に手を置き、流れてくる水で手を洗うなゆた。


(・・・)


「…それは流石に…汚い…んじゃないか?」

「やっぱり?」

「うん」

「どんな反応するかなと思って」


えへへと笑い手を洗い直すなゆた。



••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••















もったいなと思った瞬間、出来事、節約術募集!

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