「どこにでもあるニュース」
――さつきは、ニュース映像を何度も繰り返し見ていた。
画面の中では、いつも通りの街。
信号が青になり、人々が横断歩道を渡りはじめる。
そのとき、交差点に差しかかった自動運転の車が――突然、歩行者の列に突っ込んだ。
「またAIが人を殺した」とテレビは言った。
「人間を信用しないから、こうなるんだ」と大人たちは言った。
SNSは騒ぎ、怒り、非難し、炎のように燃え広がっていた。
でも、さつきだけは違和感を感じていた。
なんとなく…おかしい。
そんな直感が、ずっと胸の奥に残っていた。
だから、動画を再生した。巻き戻して、もう一度見た。
そして、見つけた。
事故のほんの少し前――
反対側から、一人の大人の男性が、赤信号を無視して斜めに飛び出してきた。
手にはなにかカードのようなものを持っていて、それを胸元に掲げながら、車道に踏み込んでくる。
その瞬間、車はごくわずかに方向を変えた。
まるで、そっちの人を優先したように。
「……守ろうとしたの?」
小さく、さつきは呟いた。
自分の言葉に、自分で驚いた。
でも、そうとしか見えなかった。
その人はニュースにも出てこない。名前も、顔も、誰も話題にしない。
まるで最初からいなかったかのように。
じゃあ、もし…その人が何か“特別な存在”だったら?
たとえば――「守られなければならない誰か」だったとしたら?
なのに、みんなはAIの誤作動だったことにしている。
考えないようにしてる。
見て見ぬふりをしている。
「ほんとうに、そうなのかな……」
疑うのが怖い。
でも、何も感じないふりの方が、もっと怖い。
さつきは、自分の小さな手の中にある端末をぎゅっと握った。
知らなくてもいいことかもしれない。けど、知ろうとしないことにはなりたくない。
そのとき、彼女の中に静かに決まったものがあった。
――わたし、大きくなったら、このことを調べる。
――ほんとうのことを、見つける。
それが、彼女が将来を選ぶ“はじめての決心”だった。
政府、AI運用の大幅見直しを発表
「AI自動運転車事故を受け、“人間の判断を超える存在は不要”との声明。国家管理のもとで新AI指針を制定へ」
――202X年5月12日 国家報道機構
さつきと同じような疑問をもち独自に調査を行っていた元記者・稲田耕平氏は、事故から3週間後に遺体で発見される。ある証言から酒を飲んで、海に転落とアルコール検出で事件性なしと判断
・・・これを、別話でやってもおもしろそうかな・・・
AIで起きそうな事故集と世の中がどういう反応を予測として・・・