表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/62

第47話 壊れかけのレイディオ 前編



 そしてやり方を変えた。


 わかりやすく言うと、日本の芸能事務所のやり方は『競馬ウマ育成方式』だ。

 競馬のおウマさんってのは、才能あるウマをどっかの草原から拾ってくるわけではない。

 血統の優れたおウマさんの精子を買うところから始まる。

 そして子馬から育てて訓練して選抜してその一部が見事G1優勝馬とかになってようやく大金を稼げるようになるわけだ。


 昨今世間を騒がせた男性アイドル専門事務所などはモロにこのタイプの事務所といえるだろう。

 小学生から所属させて、一人前のアイドルへとじっくり育てるスタイル。

 そう、日本のような小っちゃいシェアの特殊な商売では


『スタータレントは探すより作る方が効率がいい』


 という事に日本人が、というか一部のギラギラした鼻が利く連中が気づいたのだ。

 まぁ、ここまでは一応、問題ないよね。……ここまでなら。


 おウマさんもそうだ。

 おウマさんならその方式で何も問題がない。おウマさんは稼げるようになったからって、勝手に出ていったりしないから。


 ところが人間のタレントはそうはいかない。芸能事務所が手塩にかけてスターへと育て上げたのに、売れっ子になったらワガママ言うわ、へそ曲げるわ、ヘッドハントされて出て行くわで。投資が回収できなくなるどころか、他の芸能事務所と血で血を洗う抗争へと発展しかねない状況が生まれちゃったりしちゃったりする。


 そりゃそうよ。シャレにならん額のカネをかけて育てて宣伝して、やっと実ったところを横取りされたんじゃ。

 『野郎! ぶっ殺ッシャー!!(ぶっころっしゃー)』ってなるわ。

 そりゃそうなる。


 全部が全部、プロダクションがそうなのではない。凛子の事務所『宗則企画』みたいに、元々が一人のスーパースターを支えるために作られて、そのついでに社長の勘で新人タレントを個別にスカウトしているような、のんびりしているところもあることにはある。


 だがまぁ、基本。大金が動くギャンブル要素の強い世界。ガラも悪くなる。

 事務所同士の抗争に発展しかねないバチバチとした空気を収めるべく横の繋がりが作られた。

『日本視覚産業協会』なんていうそれっぽい名前で。


 要はタレントの引き抜きによる事務所間のトラブルの防止の為の組織であったが

 これはつまり、もうタレントの自由意志で契約を行えなくしてしまったわけだ。


 上手いね。


 そして『日本視覚産業協会』は政治家を抱え込みみるみる巨大化、芸能やら興行やらで誰も逆らえない、というかとりあえず所属してないとヤバい組織へと成長。

 やがて芸能界の七大名とよばれる者たちが取り仕切る恐ろしい仕組みが出来上がって行った。


 実はコレね、初めてじゃないんだな。この手の独占的・排他的な慣行は。


 戦後10年も経ってない、日本の映画産業が黄金時代を迎えし頃にも

『五社協定』というまったく同じコンセプトの憲法違反、人権蹂躙と非難を集めた俳優や監督の他社への出演や移籍を厳しく制限する取り決めが作られて、逆らうものには執拗かつ徹底的な制裁を加えて、自殺者まで出している。


 もっともこちらはあっという間にテレビが台頭、映画業界そのものが激しく衰退して自然消滅。

 良くないから無くなったのではなく、金がなくなったから無くなったというオチ。

 なわけで、世間も業界も一ミリも反省などしていない。


『七大名』ってネーミング(笑)JRPG,(ドラクエ等のコテコテの日本製ロールプレイングゲームをあまり良くない意味も含めてそう呼ぶ)かよと思われるだろうが、事実なんだから仕方がない。


 七大名は、それぞれが有力プロダクションの社長たちである。

 7人のジジイが芸能関係者すべての殺生与奪を握っている状態である。


 それにしても芸能界なんていう、この世でもっとも、注目やら脚光やらを浴びたり集めたりする業界。


 テレビなどのいわゆる『公共性の高い報道機関』ってやつ。


 常に多くの人の目に触れていて、一見不正や犯罪などとは程遠いような明るい世界をイメージしちゃいそうになるが。やっぱり違うんだねぇ……。実態はとんでもない。公然と行われるパワハラ・セクハラの常態空間。


 公正な競争だの、ビジネスだの、契約だのでは無いっつーのがすごいよね。

 むしろそういう闇を覆い隠せるように政治と癒着する方向へ進化するのがなんというか、人のごうというか。迷路に入れられたアメーバ状の粘菌が、なぜか最初から知ってるように最短距離で出口を見つけるに似た不気味な波動を感じるね。倫理もクソも無く、ろくでもない出口を見つける粘菌、それが人間。


 影響力やら財力やらが集まる場所なんだから、人間の生存本能がむき出しになって当然と言えば当然なのか。


 されども、みんなが見てても何の抑止力にもならないというのは悲しいね。

 人が見てて抑止力となるのは、不正を正す力のあるものが存在する場合、言いつけられて困る場合においてのみ有効なのであって、それらが機能しない強い暴力を持った存在には何の効力にもならない。


 どこぞの大国が堂々と世界が見ている中で小国を侵略したり、バリバリ虐殺しはじめても、積極的に止めようとする者なんていない。どこにもだ。普段「反戦!反戦!」言ってる連中の中からすらも現れない。あれと同じだね。昼休みの中学校の教室みたいに、やんちゃな連中がやりたい放題の自由空間だ。むしろ正義と掲げられているものは、やんちゃしてる側にあるとされちゃうくらいだ。


 恐ろしいね。


 凛子たちはその恐ろしいジジイら全員、特に一番ヤバい大ボスの逆鱗に触れた。

 もうその一番の大ボスなんてのはそりゃヤクザと呼ばれるわな振る舞いをなさってる人間なワケだけども。こともあろうにそれを、その人物を、その某大手プロダクション社長を、ラジオ放送中に名指しで『ヤクザ』と言っちゃったのだ。

「◯◯◯はヤクザだからね」と。


 しかもラジオが有名になってたもんだから、運悪く御本人がどんなラジオかと聞いてる真っ最中に言ったのだ。

 言っちゃならん本当のことを田沼が言っちゃったのだ。


 荒◯飛◯彦先生のマンガならここですかさずババーンと衝撃的な書き文字の効果音が入るだろう。

 いや、ズキューンかな。

 ドドーンかな。

 まあいいや。


『日本の芸能界を牛耳る人物の逆鱗に触れた』

 やっちまったのだ。


 で、突然の終了と。 一巻の終わりと。 相成ったのでございます。



 とは言え、田沼オッキツグ,(42歳)でさえ困惑する事態であった。

 そう、スタッフも含め誰もその類の権力が、ここまで横暴な力を振るう事が出来るとは認識していなかったのだ。青天の霹靂,(せいてんのへきれき:まったく予期しなかった突然の出来事)以外の何者でもない。


 しかしながら、現実にそれは行われた。アホ外人が作る『歴史に忠実,(笑)な時代劇映画』で、サムラーイの機嫌を損ねた無礼者よろしくいきなり首をはねられたのだ。理不尽過ぎる。(実際には、その辺のサムラーイなんていう、今で言うところの木っ端公務員的立ち位置の人間が町人を気軽に斬ったり出来ない、当然である。念のため。)

 仕事関係の上役でもなんでもない奴に勝手に断罪されたのだ。そんなやつの一声でクビを切られたのだ。


 ただならぬ不審な事態に一応然るべきところのインタビューも来たりはしたが、大きな流れにはならなかった。

 真相はテレビ局などでは絶対報道できなかった。できるはずもなかった。


 東京のひとりのジジイの力で、大阪の放送局の大人気番組を一撃で終わらせることが出来る。そういう芸能界の理不尽なリアルを。圧倒的独裁者が存在することを。

 その事実を表に出せるわけがなかった…………。



 事の顛末はだいたい業界の内々にこんな感じで伝わっている。

 だが、関係者しか知らないエピローグがまだ続いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ