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第17話 カミナギル 無双



 白昼堂々、重大事件が発生した。 いや大惨事と言うべきか。

 国際的、というより地球レベル。 歴史的大事件。


 …………本来はそのはずなのだが。人々が見聞きするのは事実ではなく『報道』であり。『報道』関係者が事件をどう捉えるか、というのに国民性というか、その国のマスコミのレベルというか、姿勢というか、そういうのが浮き彫りになるワケで。 




 ────やられたのは『在日アメリカ軍』であって、日本国の自衛隊ではないということが事態をややこしくした。


『原子力空母』が破壊されて原子炉がどうなってるのかわからない、というのがさらに事態をややこしくした。




 ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆





 電光石火の早業はやわざでそれは行われた。


 ナゾの巨大ロボットが高速道路を疾走してやってきて現れ、その日のうちに東京都心近郊に隣接している複数の在日アメリカ軍基地を次々と襲ったのだ。


『米海軍横須賀基地』と『米空軍横田基地』がやられた。

 ついでに海上自衛隊と米海軍が共同使用している『厚木基地』、そこにある米海軍厚木航空施設司令部のほか、第72任務部隊司令部、西太平洋艦隊航空司令部、第7艦隊ヘリコプター部隊、第5空母航空団ヘリコプター部隊、それらがまとめて殲滅された。


 つまり合計3ヶ所にある米軍基地が。

 一方的にボッコボコに破壊された。


 日頃、軍隊とか戦争状態に馴染みのない日本人には、なにが起こってるのかサッパリわからない。やけにあっさりアメリカ軍がやられたのに面食らうばかりだ。

 ホントかどうかもいまいち飲み込めない。


 なんかロボットがどうだかいう変な情報も中途半端に混じってるからよけいに信ぴょう性が無いし、その辺の詳しい説明もされなかった。


 そりゃ日本人はニュースで見かける、世界各地で全力戦闘体勢で猛威を振るうアメリカ軍しか見ていないので。

 ──当然アメリカ軍は、日本国内であろうがどこであろうが、敵が現れれば、いつでもどこでもすぐにドッカンバッコンそういう戦いを展開し、迎撃できると思っていた。


 だが違った。


 ドッカンバッコンどころか、

 親鳥の居ない小鳥の巣がヤマヘビに襲われて、ヒナがみんな丸呑みに食べられちゃったぐらいの。親鳥が帰ってきて「あるぇ~~?」ってなる感じの一方的な破壊、残された瓦礫の山。


 現実のアメリカ軍基地が日本国内で一日のうちに三つもあっけなく蹴散らされてしまった。そりゃ信じろというほうが無理である。


 いや、信じる信じない以前に、


「へ~、そんなところにアメリカ軍が居たの? なんでー??」

 って感想の方が圧倒的に多いかもしれないが、それはこの際、除外する。


 マスコミの報道もめちゃくちゃである。


 特に横須賀基地にたまたま停泊中だったゆえに、ロボットに襲われた原子力空母。

 ロナルド・レーガン (USS Ronald Reagan, CVN-76)にマスコミが食いついた。


 「なんとこの空母が! 巨大な船体を!

 船首から船尾まで縦にパックリと切断され、左舷と右舷が泣き別れ、爆発炎上。大破着底(ぶっ壊れて沈んで港の底についた)した挙げ句、未だ火災が収まる気配が無い状態にあると言うのです!」


 「なんだとぉ~~ッ!?」


 あれだけ地域住民(かどうかよく分からん人達)が反対運動してたのに強引にやってきて、安全だの大丈夫だの言ってたあの! あの原子力空母が、派手に破壊されて燃えている! 日本の横須賀港で燃えている! 日本の! 横須賀で! 壊れて! 大火災! 原子力! 原子力! 


 もうめちゃくちゃ食いついた。

 特にワイドショーのノリでハッスルするテレビ局が酷かった。


 これだ!

 放射能だ!

 放射能関連で押すぞ!

 押し切るぞ!

 一点突破。

 一所懸命。

 ひとつところに命を賭ける!

 これぞ!

 まさしく!

『一所懸命!』


 という信念である。


 どうせ難しいことを報道しても視聴者は分からないというテレビ局の舐めきった伝統である。というか、テレビ局に勤めている人間の殆どが難しい話がわからない。マジでわからない。嫌いだから分かる必要がない。


 学生の頃から難しい話をするやつなんて大嫌いだ。


 っていうか、つい先日のことだが。

 おとなになっても選挙に行ったことすらないのがバレた。スタッフも出演タレントも、解説役の女子アナですらも選挙に行ったこともないのがバレた。


 視聴者には偉そうに『選挙に行きましょう!』『投票のやり方を教えます!』などと上から目線で言ってたのに。その辺のおっさんでも誰でも知ってる投票のやり方をおもっくそ間違えて放送。

 番組名が『ラッコにおまかせ』だか『マックででまかせ』だかそんな番組でやらかしちゃって、ネットで『選挙妨害だ!』って炎上した。


 だが、じつはガチでただのアホしかテレビ局に居らず、だーれも間違いに気が付かなかっただけという、凄まじいオチがついた。マジすごいぞ。


 わかりやすくてノリの良い話が大好きな、楽しいメンバーが集まって、世の中を動かす大勢力を大学のくそったれサークル感覚で作り上げました。


 そういうノリに付いてこれない面倒なやつは自然と現場から遠ざけられた。

 どんどん自然淘汰。

 ノリの良い話し以外はどうでもいい。自分に降りかからなければ。


 いや、もし自分に降り掛かってこようとも、

 無敵の世論操作力でなんとでもして見せる!

 たとえ相手が現役の総理大臣でもテレビに余分な電波使用量なんて取ろうとしやがったら、漢字が読めないとか高い昼飯食ったとか、しょーもない報道しまくって交代に追いやってやるぞ。


 この大影響力テレビパワーを振り回すぞ!

 このノリノリ馬鹿パワーをなめんじゃねえぞ。

 俺たちは『内閣総理大臣』のさらに上を行くんだ。


 高度成長期よりうん十年、俺たちはこのノリでやってきて負けたことがねえーッ!

 弁護士一家映像を敵対してたカルト宗教に見せたら、弁護士一家が赤ちゃん含めて全員殺害されちゃった、なんて事もあったが、喉元過ぎればなんともないぜぇーッ!


 といった感じで、一番肝心な『謎の巨大ロボット』による犯行である。という部分が

 いまいちニュースでは追求されていなかった。

 勝手にトリミング、つまり報道関係者が「不要」と思った部分を削除しての報道である。


『未知の新兵器が大暴れした』海外だったらまずここに注目が集まる。

 ヤバイ国と地続きで、武力や麻薬や移民問題でいつ衝突するか、いつもっともらしい理由で侵攻されるか分からないという状況なら、神経を尖らせるのは常識。

 むしろほとんどの国の常識だ。


 日本で例えると『ストーカーが猟銃を購入した』ぐらいの逼迫した大ニュースとなる。注目が集まるのは当たり前といえば当たり前である。


 ところが日本人は、東西冷戦が、大国同士がバチバチやってて、日本に目もくれなかった数十年間の『奇跡の平和期間』を『日本国民の平和を愛する心で築き上げた平和』だと思っクソ勘違いしている。


 ちょうどヤンキー同士のケンカが激しすぎて、イジメをしているヒマが無かっただけなのを、自分がしっかりしてるからイジメられなかったと勘違いしているチビガリ少年のようにだ。


 なのでこの日本には、「兵器とか軍隊とかなんとなく嫌い・代々先輩方が嫌ってたから嫌っておくのが正解」とする『おまえ先輩に反対する度胸も無いのに世間には物申しちゃうの?』的なマスコミしか存在しない。

 なが~~い間、平和だった日本社会では『新兵器』が自分らの日常にどれだけ直接的影響を与えるか考える人間がほとんど居ない、正確にはそういうことを考える人間が報道機関等に居ない。


 そういうわけで、マスコミがぞんざいな扱いをすると、世間もおのずとその程度の重要度であると誤解し認識してしまう。

 犯罪を犯したアイドルを、そのヤクザまがいのアイドル事務所のチカラを恐れて一斉に容疑者ではなく「◯◯メンバー」というワケのわからん新語を編み出してまで、犯罪者ではないかのように装う、普段のそういう、いかがわしい報道姿勢のツケがこういうところにも自然に現れていた。


 そして今日もテレビは感情論で生きている明日の心配の無いジイさんバアさんを喜ばせる為だけに。

 彼らが最も反応するキーワード『原子力』が付いた事柄だけを執拗に報道し続けるのであった。



 ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


 ええい、原子力空母はもういい!


 カミナギルを映せ!

 カミナギルの戦いぶりを……!! (怒れるオジサン視聴者)




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