行動ターゲッティング広告は頭が悪い
前回の雑誌の広告は、「この雑誌の読者なら、こんな商品・サービスなら購入されるんじゃないかな」とターゲットを仮定して出稿される、旧来のターゲッティング広告である。これに対して現在のweb広告では、ユーザーの検索などの「行動」を参考に選択・表示される行動ターゲッティング広告が使われ、旧来の広告より効果があるとされている。
本当なのかな。かなり疑わしい。
『日銀が政策金利(従前の公定歩合)を高めに誘導する、というニュースが流れた。銀行の預金金利が上がると予想される。使っているネット銀行の金利はどうなっているのかな?と「S銀行+預金金利」を検索してみた。その後、ニュースサイトを見ていたら、検索したスマホにS銀行の「新規口座開設キャンペーンで〇〇円プレゼント」みたいなバナーが1画面に3個出てきた。』
上記のようなことはよく起こる。広告代理店は、「ユーザーの行動をトリガーにした行動ターゲッティング広告だから効果あります」と言い張るけど、私は既にS銀行の口座を持っているから新規に作ることはまず考えられない。クリックされることがありえない広告をスマホの狭い画面に3個も表示されて、S銀行に対する心証はかなり悪くなった。また、見ていたニュースサイトの閲覧を取りやめた(コンテンツを広告バナーで覆い尽くすようなサイトは見る価値がない)。広告出稿元(S銀行)も広告出稿先 (ニュースサイト)もユーザー(私)も損をし、儲かっているのは広告代理店だけである。
なぜこのようなことが起こるのか。雑誌や新聞など旧来のメディアに対してweb広告は広告を表示するスペースが限られるため、ユーザーにとって「当たり」の広告が求められる。また、ユーザーがコンテンツ(および広告)を流し見することが多いメディアであるため、即時で反応されるような広告が求められる。これらに対してユーザーがその時興味を持つ情報を広告として提供できれば見られるクリックされるはず、という「仮説」で直前の検索や閲覧などの行動をトリガーにした「行動ターゲッティング広告」が名目上、利用されている。
しかし実際には直前の行動からのみ予測しても精度が低すぎて成立しない。広告主や掲載メディアは自称「専門家」である広告代理店の口先に騙されているだけである。こうして予測が成り立たなかった結果、名目の「行動」を放棄してユーザー属性を集団として決め打ちした広告、コンテンツとは相容れない刺激の強い広告(性的な匂わせがある広告や色調などがドギツイ広告)、同じ広告を複数掲載しての強調、コンテンツを覆い隠して広告をいやでも目に入るようにする、更には広告の閉じるボタンを押しづらくして誤クリックを誘う、などが氾濫しているのが、今のwebメディアであり、小説家になろうサイトである(実はカクヨムも同レベルであり、全年齢サイトであるのに18禁ゲームへの誘導バナーを掲載しているのも同じであった)。
試しに検証環境でS銀行の金利を検索しwebページを表示する「行動」を取ったが、小説家になろうサイト内にS銀行のバナーは表示されなかった(行動ターゲッティング広告を誘発できなかった)。
現状、小説家になろう全年齢サイトでは、運営会社は広告内容をコントロール出来ていないと考える。関与している広告代理店17社(昨年の同時期には21社だったはずだが)に1ページあたり3〜6箇所のバナースペースは特定の数社(ジーニーとアイモバイルとZucksが多い)に偏っている。これを割り振っているのは運営ではなくどこかの広告代理店なのだろう。
奇しくも本日(2025年2月20日)、ヒナプロジェクトより「【求人情報】WEB広告運用職募集のお知らせ」がユーザーホームページに掲載された。運営が広告をコントロールできず、18禁バナーがサイト内にベタベタと貼られている現状では、小説家になろう全年齢サイトはアダルト扱いされ、ユーザーの拡大も課金導入のためのクレジット会社との契約も出来なくなる。WEB広告運用職の採用で、運営会社が主体的にサイト内の広告をコントロールし、全年齢サイトに見合った健全化とサイト価値の向上につながることを切に望む。
(2025年2月22日 22:45追記)
昨年同時期(2024年2月29日)も広告代理店は17であった。「(昨年の同時期には21社だったはずだが)」を削除する。