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エピローグ

 結論から申し上げるとわたくし、日比谷湊仁は幼馴染の相田ルロさんと仲直りできました。普通に話すようになりましたし、迷惑をかけた佐藤さんにも謝ってこの前のことはよく分からないが一件落着ということです。

 ……一件落着。そうだ。一件落着。雨降って字固まる。正確には落着する一軒などなく、ルロは俺と佐藤さんに慣れない気遣いをしただけなのだが。その誤解を解いただけど……。


「~~~~~~っっっっ!!!!!!!!!!」

 

 恥っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっず!!!!!恥ず、恥ず!恥じゃん、人生の汚点じゃん。黒歴史じゃん。何が「ルロのこと女の子として考えようと思う」だよ。キモ杉謙信、キモ田信玄。ルロが俺のこと好き?そんなことなかったじゃん。自惚れじゃん。くっそーーーーーー。恥かいた。しかも、しかもだ。


「湊仁」

「……なんだよ」

「別に、呼んでみただけ」


 っく……、しかもルロがちょっと可愛い。なんか、意識したとたん少し恥ずかしくなる。俺が好きなのは佐藤さんだろ、あほか。ああくそ。やってしまった感と整理できない気持ち。仲直りできたことは喜ばしいが、俺は絶賛自己嫌悪中だった。


「湊仁、湊仁!」

「はいはい、なんだよ」

「見て、尻尾綺麗でしょ。手入れしてきた、湊仁にしてもらった方が綺麗かもしれないけど……」

「綺麗にできてるよ、初めてやったとは思えないくらいに」

「ほんと?自分でやるの初めてだったけど、湊仁が褒めてくれてよかった」


 はぁ……、でも、ルロの機嫌が戻ったのならいいか。俺は満足をして机に突っ伏する。ルロは俺の横に座って腰まである尻尾で俺の背中をぺしぺしと叩く。こうやって雑に扱うから乱れるんだと気づけよ。


「なんで、寝るの。かまえー。」

「うるへー、俺は寝る。あと、ルロ。女の子がそんな尻尾を振り回してはしたないぞ」

「下にショートパンツはいてるから大丈夫だもーん、かーまーえー。」


 ルロの雑がらみを無視し続けていると、教室の向こうから透き通るようなエンジェルボイスで俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


「ルロさん、日比谷くん!一緒にお弁当食べませんか?」

「佐藤さん?お昼いく!いきまーーす」

「学食でいいですか?一番空いてるので」

「もちろん、もちろん。佐藤さんが言うならどこでも大丈夫」

 

 俺は助け舟とばかりに机から立ち上がり、佐藤さんと同行する旨を伝えた。するとルロが恨めしそうな顔でこちらをじっと見つめる。


「どうした、ルロ」

「なんか、あたしに呼ばれても反応薄いくせに、佐藤さんには犬みたいに尻尾振ってるなーって。」

「なんだよ、別に普通だろ?」

「湊仁のバカ……、学食でアイスおごれ」

 

 その時、ぴーーん、ぽーーん、ぱーーんと放送のチャイムが鳴り響く。

『来週から生徒会選挙が始まります、立候補者もしくは推薦者は用紙をもって選挙管理委員まで届け出てください』

 ぴーーん、ぽーーん、ぱーーん。それを聞いて俺はちょうどいいとばかりに話を変えた。


「そ……そういえば。そろそろ、生徒会選挙だな」

「話逸らした……ま、いいけど」

「日比谷くんは立候補しないんですか?」

「俺はそういうリアル強者が跋扈するイベントではゴミカスだからな。馬の糞みたいな匂いだしてんじゃねーぞって言われかねない。それに俺は……いや、いいか」


 言いかけて止める。どちらかといえば言わない方がいいことだし、別に後で分かることだ。


「そういえば大路瑞樹という方が立候補するんですよね。イケメンの」


 大路先輩というのは学校一のイケメンで勉強もできてスポーツもできて、挙句に芸能活動までやっている、みんなの嫉妬の対象だ。

 

「ぐ、そう、らしいね……佐藤さんもやっぱりイケメンに投票するの?」

「私は演説を聞いて決めますよ、でも。やっぱり頼りがいのある男性がいいかなーとも思います」


 佐藤さんの言葉に俺はひそかにショックを受けると、ルロがにやりと笑った。純粋な男心をバカにしやがって。


「でもさ、大路先輩って湊仁とおんなじ生物部の先輩だったよね」

「まあな……、だけど、話したことなんてほとんどない。去年から生徒会副会長やってて幽霊部員だし」

「ふ~ん、そんなもんなんだ」


 ルロの機嫌も治ったみたいだ、うまく話を逸らせて良かった。俺は安心した丁度その時のことだった。俺のポケットの携帯が震える。俺だけではない、ヴヴヴ……。ヴヴヴ……。ルロと佐藤さんの持つ携帯も震えていた。三人同時に着信。


「あ、メッセ来た。誰だろ?」

「え、今のルロさんですか。私のが鳴った気がしたんですが。……いや私にも来てました」

「俺にも丁度来てる」


 三人はそれぞれメッセを確認すると同時に声を上げた。


「ふぇ!!?」「ええ!?」「っな!?」

「ちょちょちょ……ちょっと待て、二人は誰からメールが来たんだ」

「わ、わたしはその。そんなことよりも日比谷くんに聞きたいことがあります」

「いいや、その質問には答えられない可能性が高い、やめて聞かないで」

「だめ、湊仁。ちゃんと答えて」


 そこには大路先輩の写真が添付されていた。大路先輩、正確には大路先輩と半裸の俺が布団の中で抱き合ってる写真だ。そしてメッセージには『拡散されたくなかったら、大路の生徒会長の立候補を辞退させろ』のみ記載がなされている。


「み、湊仁、こ、こ、これ、何?脅しのメールじゃないの、それに決定的な写真まで」

「し、知らない。い、いたずらだろ。加工写真じゃないのか。全く」

「そのわりには首筋の赤い跡が見覚えあるんだけど……、加工だとしてもこの跡はあたし達しか知らないよね」


 冷や汗がだらだらと垂れていく。たしかにこれは俺の写真だ。しかし、全く身に覚えがない。

 

「よ、湊仁……、そ、そういう趣味だったんだ。そ、そうなんだ。あ、あたし理解ある方だから……今時珍しくもないよね」

「ちがう!!!……俺は女の子がタイプだ!!」


 俺の受難は続く。

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