「もしも、もしもだけどさ…」
初投稿!読んでいておかしいところがあるかもしれません。ご指摘はコメントでお願いします
春の朝日が教室を優しく照らす。
新学期からはとうに二週間が過ぎ、中学二年生という事もあって、クラスは幾らかのグループに分かれていた。
そのどのグループにも属さない―――所謂「ボッチ」である僕、景久 凪は
クラスの中央よりの席で周りの会話に耳を傾けていた。
黒髪をマッシュにして黒淵メガネをかけている見た目は、お世辞にもかっこいいとは言えない。
しかし僕からすれば、そんなことはどうでもいいのである。
ボッチで過ごすのは小学三年生で慣れた。一人で過ごすのは中々気楽で、良いものである。
最近の趣味はこうしてクラスの話題に静かに耳を傾けること。
周りの人間を見ていると、中々面白い話題が見つかるものである。
「ねえ、もしも、もしもだけどさ」
周りの音を拾うのに集中している耳に、一人の女子生徒の声が入る。
開いているのかも分からない糸目。肩までの長さの少々明るいこげ茶の髪は、後ろで簡単にまとめられている。
名は森井 宮。クラスでのカーストは決して高くないが、存在感の強い女子である。
「私たち全員が結婚するとして。イツメンの中で最初に結婚するの、誰だと思う」
(なんだその絶対に誰かが傷つく話題は)
そんなことを特に気にすることもなく、宮の前の席の女子は「えー?」と言って考えだす。
明るい茶髪(地毛らしいが)をざっくりと一つにまとめ、顔の半分以上はマスクで覆われている。
名は下橋 愛花。殆ど話したことはないものの、問題行為を起こしているという噂が
どこからともなく漂ってくるような女子生徒である。
「うぅん…奈々かな」
「私?」
高峰 奈々。このグループに交じっていることが不思議なほどの天才。
宮の隣の席である。
テストでは常に好成績を取得しており、周りから見ても一段上に立っている。
天然パーマの髪を一つにまとめた彼女は、おっとりとした表情のまま首をかしげる。
「なんで私?」
「なんとなく。奈々は割といい人みつけて、結婚してそう」
「あー、確かに」
愛果の隣の席の女子生徒、戸沢 南は相槌をうつ。
周りに比べて少々小柄な彼女は、他の女子生徒との会話に交じるべく
愛花の膝にのって会話を続けている。
「私は愛花ちゃんだけどなぁ」
奈々の言葉に愛花は「えっ?」と嬉しそうな声をあげる。
「ほ、ほんと?なんで?」
「うーん、なんとなく?」
愛花はマスク越しでも分かる満面の笑みで「そっかー!」と言った。
「でもさ、ちょっと核心に迫るけど」
南の一言に、三人は一斉に黙り込む。
「俺ら、だれも結婚しなくね?」
戸沢 南が俺っ子だということには誰も突っ込まず、愛花はポンと、南の肩に手を置いた。
「…戸沢さん、それは言ったらだめだわ」
他二人もうんうんと頷く。
(…否定はしないんだな)
結局、この話題は「奈々が一番早く結婚しそう」ということで結論付けられた。
一時間目の授業が終わり、僕が再びクラスの話題に耳を傾けていると、またしても前の席の方から声が届いた。
「さっき、何話してたの?」
(開口一番ヤンデレ彼女のセリフ言ってる…)
長い黒髪を一つにまとめた、少し肌色の黒い小柄な女子生徒は、まるで宮を攻めるかのような立ち位置に立っていた。
「あ、Aさん!」
(Aさん)
事件の被害者か?という感想が第一に浮かんでくるあだ名である。
「また僕を置いて楽しそうなこと話しやがって!このっ!」
Aさんと呼ばれた女子生徒は、手をギュっと握りポコポコと宮を殴る。
「いや、イツメンの中だと誰が最初に結婚しそうかなぁって」
「なんで僕を呼ばないんだよ!!!」
愛花は責められている宮を冷たい目で一瞥した後、Aさんに微笑みかけた。
「まあまあ、杏。落ち着いて」
佐藤 杏。通称Aさんである。
「確かに姐さんが悪いよ?杏を呼ばなかったし」
「え?悪いの私?」
どうやら姐さんとは宮のことらしい。極道のようなあだ名である。
「杏は誰が最初に結婚しそう?」
「奈々」
「だよね~」
杏と愛花は笑みを浮かべ、熱い握手を交わした。
いかがだったでしょうか?感想はコメントでおねがいします!