第5話 朝
あれ、何か触れてる?変な体制になってるのかなぁ?
「ん、あぁ」
お腹と胸になにかあたって
「ん〜、すぅ…ふわぁ」
『あれ、なんで赤札さんが隣に!?てか触られて!?』
つい俺は今だせる全力で
「なに触ってるんですか!!この変態!!」
「おわっ!!」
肘と足を思いっきり決めた。そして高まった感情が抑えられずに追撃をきめた。
「変態!最低!女の敵!ロリコン!クズ男!」
とりあえず近くにあるものを所構わずぶん投げた。
「痛い!痛い!マジで痛い!あれ?俺リビングで寝てた筈じゃ?空き缶さん、ということは俺やらかした!?」
寝ぼけが治ってきたのか自分のやったことを自覚し始め彼は即座に
「すみませんでした!!この通りです!!」
土下座し始めた。
「はぁ、はぁ。本当に最低です!女の子の寝込みを襲うとか恥ずかしくないんですか!!それに勝手に…む、胸を触ったりして!本当に最低です!近づかないでください!!
早く出てけーー!!!!」
「はぁ、はぁ。何やってんのわたし。」
ベッドの上で体育座りをしてため息を吐きながら俺は後悔してた。自分は泊めてもらってる立場のくせに、昨日はあんな発言してたくせに、いざ実際に触られたらこれだ。本当になにしてるんだか。
「謝らないとなぁ。」
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俺が起きて、彼を部屋から追い出してから少しばかし時間が経ち俺も完全に落ち着いてきた頃。彼が部屋をノックしてきた。
「どうぞ。」
俺はそっけなく情けない声で応えた。
彼が凄い青い顔をして深刻な表情を浮かべながら入ってくる。俺にはそれがおかしく思えた。いや、彼が一般的な思考を持つのなら間違っているのは確かに彼の方になるだろうが今回に限っては状況が状況だ。俺にだって非はある。俺はそれを理解して、そう思っているからこそ彼のあの表情がおかしく思え
「ふふっ、あはは。もう、そんな深刻な表情をわざわざしないでください。おかしくて笑っちゃいます。」
つい、笑ってしまった。
笑った俺の顔を見ている彼の表情には困惑が見えるが深刻な様子はもうない。
「いえ、ごめんなさい。あっ、これは今笑ってしまってごめんなさいって意味のごめんなさいです。そして、今からいうごめんなさいはさっきはあんなことをしてごめんなさいって意味のごめんなさいです。」
「あらためて、ごめんなさい。さっきは寝起きで焦っていたとはいえ家に泊めてもらってご飯をいただいたにもかかわらずあんな事をしていまって。」
「いえ、どんな理由があれ女性の身体を無許可で触った時点で僕が悪いことには変わりありません。ですから、僕にできることならなんでも言ってください。これで許してもらえるとは当然思っていませんが、通報する前にでも好きにしてください。」
「そんな!通報なんてしませんよ。でも、そうですね〜。せっかくなんでもしてくれるんですよね?」
「はい。僕にできることなら。」
「ふふっ、ならゲーセンに行きましょう!私と組んでくれるんですよね?もちろんゲーム代は赤札さんの奢りですよ。」
「そんなのでいいんですか?」
「はい!ですけど、そんなのと甘く見てると痛い目見ますよ。じゃあ午後からゲーセンに出発ですよ。わかりました?」
「はい。僕には拒否権がありませんので。」
よーし。なんか楽しく遊べる下地も整ったし今日は楽しく遊べそう!
そんな能天気なことを考えていた俺だった。
「う〜ん。お腹も空きましたし、朝ごはん何か食べましょうか。冷蔵庫の中身勝手に使いますね〜。」
「え、いや、朝ごはんくらい何か頼みますが」
「いえいえ、この後奢ってもらうんですからご飯くらいはまぁテキトーにちゃちゃっと作りますよ。座っててください。」
「いえ、それくらいは僕が」
「ん、じゃあ朝のこと周りに言いふらしても良いんだ〜。わたしぃ襲われた〜ってさけんじゃいますよぉ。」
「……わかりました。待っています。」
「良い子ですね。私物分かりのいい子は好きですよ。」
「はぁ、そうですか。」
彼は俺にだいぶ呆れたようだった。