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強制連行

 ジュディはこちらの返答など聞かずに私の予定を立ててしまった。

 彼女の館に滞在するようにと。

「まあ、高名な学者様なんですの?」

 高名かどうかは知らない、本を数冊出しただけだ。

「それではどうぞ我が家にお越しください。そのような客人は大歓迎ですわ」

 美しい彼女はとてもあけっぴろげな笑顔で私を自宅に誘った。

 いや、この女警戒心という言葉を知らないのか? この女は結構な資産家だ。詐欺師から見れば垂涎的だ。

 しかし、そのまま勝手に私の予定を決められてしまった。

 私は結局押し切られてしまった。

 私は来週彼女の家に向かうことになった。そして数日後、私の家に迎えの馬車がやってきた。

 私は住所を教えた記憶はなかった。

 朝食を食べて身支度をしているときに唐突に来た。

 私は自力であちらに向かうつもりだったのだが。

 私は一応まとめておいた荷物を持って戸締りをして馬車に乗り込んだ。

 馬車の中はマホガニーの重厚な壁と真っ赤なビロードの座席があった。

 そして、なぜかその中にジュディがいた。

「あなたがわざわざ迎えに来たのか?」

「だって、どうしても来ていただきたかったんですもの」

 ジュディはすがるように私を見た。私はため息をついた。鉄道予約、してあったんだが。

「私も強引とはいえ約束が成立した以上破るつもりはなかったんだが」

 そう言って旅行用にまとめておいた荷物を指示した。

「ありがとうございます」

 馬車が走り始める。流れていく見慣れた景色を眺めながら私は目を閉じた。

 これからどうやら厄介ごとしかなく気疲れすることが決定だ。旅行の経験は多いので寝ようとすればすぐ眠れる特技は身に着けていた。

 目を開ければ風景はいつの間にか見知らぬものになっていた。

「まさか、丸一日寝続けるとは」

 ジュディが呆然とした顔で私を見ていた。

「ついたのか?」

 馬車は瀟洒な邸宅の前に止まっていた。

「まさか、彼女の館に着くのは明日ですよ、ここは別邸です」

 つまりこれは別宅ということなのか。しかし別宅とは思えないほど立派な家だ。

 そして、ジュディが馬車から降りて、馬車の後ろ部分から私の荷物が引き出されてきた。

「ここで一泊して明日の昼頃着くと思いますよ」

 これが別邸なら本邸はどのレベルなのだろうか。

 州を二つ離れているならたどり着くのに一泊くらいはあるだろう。ジュディが来たのは早朝だったがすでに夕焼けがきれいに見えた。

「鉄道で行ったらどっちが早かったんだろうな」

 結局キャンセルになった切符を手に呟く。


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