巻き込むな
スティーブンに聞きだした情報にやはり私は利用されただけだと気が付いた。
まったくくだらないことに巻き込まれたものだ。
やはり、本人に文句を言ってさっさと帰ることにした。
「ジュディ、私の仕事はないようだね」
私は呼び出した相手を睨む。まったくずいぶんな茶番に巻き込んでくれたものだ。
私はジュディに向かって呟く。
「彼女が呪われていようと君はどうでもよかったんだろう?」
私がジュディにそう言ってもジュディは心外だといい表情を崩さない。
「ひどい、私は心底彼女のことを案じていたのに」
ジュディはそう言っていたが、私がスティーブンから聞いた話を考えると彼女に対して好意的な理由がない。
「君は本当のこの地の後継者だね」
ここの地所の本当の所有者である老人。その実子は早世しているが、孫が一人それがジュディ。
「本来君がすべてを得るはずなのに、赤の他人がこの場所でわが物顔にふるまっている状況がうれしいわけがないな」
私が尋ねたのはスティーブンにあの老人の身内がここにいるのかどうかだ。あっさりとジュディの名前が出た。
予想していたのでそれほど驚かなかったが。
「ああ、別のところにいるあの夫婦とずいぶん親しいようだね。まさかあの人たちは共犯者かい?」
「あなたは一体」
「まさかと思うけど、本気で物騒なことを考えていたわけじゃないよね」
ジュディは目を大きく見開いた。
「まるで私はアリバイ工作に利用されたような気がするんだ。あの犬を殺したのは共犯者で、猫を殺したのは君なんじゃないかな」
ジュディが唇をかんだ。
「私たちが単なる嫌がらせをしたと思っているのかしら」
「まあ、何とか追い出したいんじゃないのかね。それでもだめなら究極の手段をとるつもりだったとか?」
「あら、証拠はある?」
ジュディの目が瞬いている。その手は握りしめられて小刻みに震えていた。まったく関係ないのに巻き込まれた私は意地悪く微笑んでいたはずだ。
「犬は一匹だけは青酸で殺されたけれど、もう一匹は違うとか? 犬は玉葱や葱であるいはチョコレートのほうが簡単かね。そんなもので死ぬのだ。もちろん人間にはまったく害がないから持ち込みも簡単だ」
そして私は動物の墓を指さした。
「死体はまだある。今でも青酸は発見できるだろう、そしてもう一匹から青酸は発見されない、あれだけの犬を殺せるほどの青酸を君は秘密裏に手に入れたわけだ」
ジュディはもう何も言わなかった。
「君が何をしようが関係ない、私を巻き込まないでくれ。それと私に彼女を保護する義務もない」
それで終わり、さて、駅までは結構な距離がある。さっさと出発しないと。




