携帯の待ち受け画面
すいません。遅くなりました
「ねえねえ、アッちゃん。携帯の待ち受け画面って何にしている?」
昼休み、屋上はまだ夏の日差しで暑いのでクーラーの効いた生徒会室でいつものメンバーで昼食を食べていたらいきなり真衣が質問してきた。
「てっ、君達。生徒会メンバーでもないのに何くつろいでいるのだ?」
俺達全校生徒の生徒会長、シオンが俺達を睨んでくる。
「まあまあ、いいじゃない。いつもこちらの仕事を手伝って貰っているんですから」
水姫はそう言ってシオンを抑えた。
「ぐー」
その水姫の後ろのソファーには龍次が横になって眠っていた。
「でも、その代わりにきちんと報酬をだしているんだけど」
「なら、生徒会長。こうしましょうよ」
そう言って乃亜が話に入って来た。
「ボク達が生徒会室を使わせてもらう代わりに、仕事を引き受けますよ」
「ああ、それはいいアイディアだな」
シオンは乃亜の提案にすぐに賛成の意を示した。
「すみません。俺、気分が悪いので帰らせても貰います」
そう言って俺はそそくさと生徒会室から出て行こうとした。
「逃がすと思う?」
乃亜は俺の襟首を掴んだ。
「あ、すいませんでした」
俺は逃亡に失敗した。
「もう、レンは自分が不利になるとすぐ逃げる癖を直した方がいいよ」
「俺は逃げていない面倒事に巻き込まれるのが嫌なだけだ」
「はいはい。レンはおとなしくしていてね」
そう言って乃亜は俺をそのまま自分の隣に座らせた。
「まるで忠犬だね」
大地は俺を見て笑っている。
「うるせー。もう、いい寝る」
俺は文句を言いながら乃亜の太股を枕代わりにし寝ころんだ。
「もう、レンは甘えん坊だな。・・・・・ところで、真衣ちゃん。さっきなんか聞いてきたけどなに?」
乃亜は俺の頭を撫でながら真衣の方をむいた。
「え?・・・えっと、アッちゃんの携帯の待ち受け何かなと気になったから聞いたんだよ」
「ボクの待ち受け?」
「うん」
「ボクはこれだよ」
そういって、乃亜は携帯を取り出し真衣に待ち受けを見せた。
「え?ちょっと、待って。え?」
真衣はその画面と俺らを見比べながら戸惑っていた。
乃亜?お前は何を待ち受けにしたんだ?
「悪い。俺にも見せてくれ」
俺は嫌な予感がし、乃亜から携帯を奪い待ち受けを見た。
「なんだこれ?」
そこに、映っていたのは俺の頭を優しく抱きしめている乃亜の姿があった。しかも、何故か俺の顔面が乃亜の胸の中に隠れている。
「なんだこれ」
いつ撮った?
「珍しいね。蓮斗が甘えているなんて」
大地は画面を見ながら感心していた。
「おい、そんなのいつとった」
俺は乃亜に聞いた。
「レンが寝ている時」
「あ~、それなら納得だね」
真衣は画面を見ながら納得していた。
「真衣。携帯を貸せそのデータを消すから」
「ちなみに、この携帯のデータはバックアップ済みだから壊しても意味ないからね」
乃亜は俺がデータを消す前に手を打っていたみたいだ。
「ぐっ」
「だから、携帯返して」
俺は乃亜の手に携帯を返した。
「ちなみに、真衣ちゃんの画面って何?」
「前にも見せたけど大地君のウエディングドレス姿だよ」
「はい?」
大地は真衣の一言で微笑みながら固まってしまった。
「ほら、これ」
真衣は自分の携帯の画面を見せた。
「どれどれ」
画面には大地のウエディングドレス姿が写し出されていた。
「真衣さん。お願いだから画面を変えてください」
大地は真衣に向かって土下座をした。
「やだ」
真衣は大地の願いをすぐに断った。
「どんまい。大地」
俺は優しく大地の肩に手を乗せた。
「ちなみに、この写真をあたしがやっているブログにアップしたら、ものすごいヒット数になったよ」
その時、真衣はそっけなく大地に止めの一言を言った。
「真衣さんなんて大っ嫌いだあああああ」
大地はその一言によって涙を流しながら生徒会室を出ていった。
「ご愁傷様」
俺は大地の背中を見ながら心の底から思ってしまった。