姉妹のお茶会と赤いナイフ
久々の投稿です。
色欲の部屋
「ん?」
影切は何かを感じたのか。周りを見回した。
「どうしましたか姉さん?」
夢は影切の向かいにあるテーブルの前にティーカップを置いた。
「ああ、ありがとう」
影切はティーカップを持ち、一口紅茶を口に含んだ。
「ん、相変わらずおいしいなあ。お前の紅茶は」
「ありがとうございます。それで何があったんですか?」
夢は影切の前に自分の分のティーカップを置き、一息ついた。
「ああ、こっちのメンバーがあたい以外全員負けたみたいだなと思ってね」
「ではこちらのメンバーが全員勝ったんですね」
「まあ、そういうことだよ。しかし、お前の方のメンバーは一体なんなんだ?煉獄館の七つの罪を倒しちまうなんて本当に高校生か?」
「ええ、全員高校生ですよ。ところで姉さん。私からも一ついいですか?」
「ん?なんだい?」
「私たちは戦わなくていいんですか?」
そう、影切は試合が始まった瞬間、この部屋にあるすべてのビデオカメラを壊し、そのまま夢が淹れたお茶を飲みながら休憩をしていたのである。しかも、家具はすべて夢の影法師の中に入っていた物。
「なんであたいが久々に会った妹と戦わないといけないんだよ」
影切は当然のように言ってきた。
「え、でも、私に向かって敵だとか言ったじゃないですか」
「ああ、あれ。嘘」
影切は言葉を聞いて固まってしまった。
「だって、そうでしょ。ああ、でもしなきゃ雪崩の監視から逃れないじゃん」
そして、そのまま話を続ける。
「しかも、相手が妹となるとそりゃあやる気が起きないよ」
「ようするに姉さんは、雪崩さんの監視から逃れる為に一芝居をしたというわけですね」
「まあそういうこと。どうだった久々に受けたあたいの殺気は?」
「まあ、60点といったところでしょ」
「おや厳しいね」
「私だからよかった良いものの。もし、これが別の人だったら逆にやられちゃいますよ」
「うん。今度から気をつけるよ」
影切はそう言って、一気に紅茶を飲みほした。
「さて、あたいもそろそろ行くとするかな」
「もう行くんですか?」
「ああ、どうせ残っている者はあたいだけだしな。あたい一人がどう頑張って。もう、こっちの負けは確定だ。それに、あたいの目的は一応達しているしな」
「目的?」
「ああ、大切な妹の元気な姿を確認することだ。だから、もういいんだ」
「そうですか。私的にはもう少し話したかったですけど、残念ですね」
夢は寂しそうな顔をした。
「そんな寂しそうな顔をするなよ。どうせ、また会えるんだから」
「・・・・・どうゆう意味ですか?」
「えっと、ほら、あれだ。お前が生きているのがわかったんだし。これで何度も会えるということだよ」
なんだかうまくごまかされた感じがするけどよしとする夢がいた。
「まあ、いいでしょ。姉さんのことだから何か企んでいると考えておきますよ」
「ん、そうしてくれ。それじゃあ、あたいは行くよ」
影切はそう言って、エレベーターに向かった。
「夢、元気でな」
「姉さんこそお元気で」
そして、影切はエレベーターにこの部屋から去って行った。
色欲の部屋
勝者 夢(影切の辞退により不戦勝)
「どうやら、全員負けたみたいですね」
豊はテレビ画面を見ながら呟いた。
「そうみたいですね。いや~、最近の高校生って強いですね」
雪崩はテレビ画面を見ながら笑っていた。
「さて、戦いも終わったことですし、うちは今度こそ帰りますかね」
「紅沙花蓮斗が殺されるシーンを見ていかないんですか?」
豊が平然とした態度で雪崩に言う。
「それもいいんですけど。後始末が残っていますし、なにより裏切り者に罰を与えないといけませんからね。遠くに行く前に捕まえないと逃げられるんですよ」
雪崩は微笑みながら答える。
「そうですか。わかりました。それでは、また何かあったら連絡をしますのでよろしくお願いします」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。その時は格安で請けさせてもらいますから。それではさいなら」
そして雪崩はこの場から去って行った。
「・・・・・さて、では、ご褒美として。この部屋に招待しないといけませんね」
豊は雪崩を見送った後、ポケットから小型の機械を取り出し、ボタンを押した。
そしたら、近くにあったエレベーターから音が聞こえてくる。
「さて、私を楽しませてくださいよ。紅沙花君」
そして、エレベーターが止まり、扉が開いた。
そして、エレベーターの中には紅沙花蓮斗が豊を睨みつけるように立っていた。
「乃亜はどこだ?」
蓮斗は殺気を含めながら聞いてきた。
これがさっきまでエレベーターの中で寝ていた者なのか疑問に思うほどだ。
「あそこで寝てますよ」
豊は指で場所を示すとベットの上で乃亜が寝息を立てて眠っていた。
「乃亜っ!」
蓮斗は愛しき人の側にすぐに駆け寄った。豊はそれをただ黙って見ているだけだった。
「乃亜っ!大丈夫か!」
蓮斗は乃亜の顔を覗き込みながら声をかけるが、起きる気配がない。
「乃亜っ!」
「んっ、レ・・・・・・ン?」
でも、蓮斗が何回も声をかけると乃亜は意識を取り戻した。
「ああ、そうだ。俺だ。蓮斗だ」
「れ・・ん・・・と・・・・。蓮斗っ!」
乃亜は意識が覚醒すると蓮斗に抱きついた。
「おい、乃亜まだ終わっちゃいない」
そう言って蓮斗は乃亜を離そうと気を抜いていた。
「ボクの為に死んで」
その瞬間、乃亜から驚きの言葉が聞かされた。
「え?乃亜?」
その時に蓮斗は気がついた。いや、気がつくのが遅かった。乃亜の目は虚ろで光が籠っていなかった。そして、乃亜の右手にはナイフが握られていて、そのナイフが蓮斗自身の左胸に深く刺さっていた。ナイフの刃の部分からは蓮斗の血が流れてきて乃亜の手を赤くしていく。
「ごめんね」
そして、乃亜はそのナイフをゆっくりと引き抜く。
「くそったれ」
蓮斗は愚痴りながらそのまま倒れた。そして、蓮斗の胸元からは赤い液体がどんどん流れてきた。
ボクの手がいきなり赤くなった。
何故そうなったのかは知らない。
しかし、外の方で何が起こったのは確かだ。
何故なら、この空間だ。だんだんと黒い何かに浸食していっているからである。
ボクは怖くなり少年の面影の方を見た。
自分を助けに来てくれるのを信じて。
しかし、その少年の面影に異変があった。
少年の胸から赤い液体が流れてきた。
そして、いつの間にか自分の赤く染まった手にはナイフが握られていた。
そこで、自分は理解した。
嫌。
自分がこのナイフを使い。
嫌。嫌。嫌。
この少年を殺してしまったんだと。
嫌あああああああああああああああああああ!!!!!!
「嫌あああああああああああああああああああ!!!!!!」
乃亜は叫んだ。
自分の愛しき人を自分の手で殺してしまったことに対しこれが夢だと思いながら叫んだ。
でも、夢ではない。
現に蓮斗の胸から血を流し、乃亜の足元で倒れている。
「レン、嘘だよね。死んでないよね」
「いや、死んだよ。君が殺したんだ」
豊はそんな乃亜に追い打ちをかけるよう言葉を投げかけていく。
「嘘だっ!」
「本当だよ。ほら、その証拠に君は持っているじゃないか。紅沙花蓮斗の血が付いてるナイフを」
「嫌」
「目を背けるな。君が殺したんだ」
「嫌。嫌っ」
「そのナイフで紅沙花蓮斗の心臓を貫いたんだ」
「嫌ああああああああああああああ!!!!!!!!!」
乃亜はまた叫んだ。そしたら、その瞬間、乃亜の全身から黒い光が溢れだした。
豊はそれを見てとても嬉しそうな顔をした。