飽きたから終わらせよう
遅れてすみませんでした。
強欲の部屋。
「あらよっと」
オレは鞭を大鎌で切断し、吸妖に一気に近づき縦に一刀両断した。
「何度やっても意味ないぞ」
吸妖は一刀両断されたのにも関わらず。すぐに切断された所からくっついていく。
さっきからこの繰り返しで
「今度はこっちの番じゃ」
そして、オレが近いのをいいことに体全体をアメーバ化し取り込もうとしてくる。
「気持ち悪いから近づくな」
オレは、空気を使って吸妖を吹っ飛ばし距離をとった。
しかし、困ったもんだな。物理攻撃をするのはいいけど。体全体がアメーバー状のおかげで再生しやがる。やっかいな敵に当たったもんだ。
「ほほほ、そろそろ諦めてワシに吸収されたらどうじゃ?」
「冗談じゃない。さっきも言ったが男に触られる趣味はないんでね」
「惜しいの。貴様を吸収すればワシはもっと元気になれるはずなのじゃがな」
「絶対にお断りだ」
オレは離れた所から鎌鼬を放つ。
「しかし、不思議だのう」
吸妖は首を切られたのにも関わらず、すぐに再生した。
「何が?」
「普通の者ならワシの再生能力を見ていると段々、絶望していくというのに。貴様だけは諦めようとしないんじゃ?」
「残念ながら。それだけが取り柄なもんだでね。オレの辞書には絶望や諦めという文字はないんだよ。つか、オレからも一言いいか?」
「なんじゃ?」
「この戦いも飽きたから、そろそろ終わらせない?」
「なんじゃ、ワシに吸収される気にもなったか?」
「まさか、寝言は寝てから言ってよ」
「それじゃあ、どうゆう意味だ?」
「こうゆう意味だよ」
オレは何も無い所で鎌を一振りした。その途端、部屋中の空気が流れだし風を生み、部屋中に回り始める。
「なんだ?何をしたんだ?」
どうやら、部屋中の風には気がついてないみたいだ。でもそっちの方が都合がいい。
「今にわかるよ。それじゃあ、まず、腕から」
オレはまた鎌を一振りする。その瞬間、吸妖の腕が弾き飛ばされた。
「なんだ?またさっきと同じか。何度言ったらわかるんじゃ?ワシの能力に貴様の力じゃ足元にも及ばん」
「それはどうかな?」
「何っ?」
オレの言葉でようやく吸妖も気がついた。切断された筈の腕が再生していない。
「・・・・・貴様、何をした?」
「別に何も?」
「それでは、何故、ワシの腕は再生しないのじゃ?」
「まだ気がつかないの?」
「何がだ?」
そしたら、今度は吸妖の右肩に穴が開いた。そして、当然のごとくその部分は再生しない。
「貴様、一体何をしたああああああああああっ!!!!」
吸妖は左手を鞭に襲ってきた。しかし、オレは避けようともしなかった。
「なっ」
それもその筈、鞭はオレに届く前、破裂したんだから。
さて、そろそろネタ晴らしをするか。
「いいこと、教えてあげる。オレの能力って空気を自由自在に操るんだよね」
オレが説明をすると同時に吸妖の左肩が切断された。
「だから、少しばかりあんたの周りの空気をいじらせてもらった」
「まさか、貴様」
吸妖はオレの話を聞いてようやく気がついた。
「うん。そのまさか。ちょっとばかり、傷口に空気の塊を置かせてもらった。まあ、簡単に言っちゃえば遮断物だな。しかもだ、あんたは再生と言っているが少し不思議な所があるんだよね」
だから、この風はカモフラージュなんだよね。
「不思議な所だと?」
「うん。あんたの再生仕方は何故か傷口からではなく、遮断された部分がそのままくっついているんだよ。まるで、攻撃が当たる寸前にだけ分離して、攻撃が通り過ぎたとたんにくっついている風にね。現にあんたの右腕はもちろん、肩の傷口、左腕が再生していないのがその証拠。つまり、あんたの再生能力はまったくの嘘で本当は自ら分離し、またくっついているだけのまがい物だ」
「・・・・・・それがどうした?現にそうだとしても、ワシとお前じゃあ、お前の方が降り過ぎるだろう」
「ああ、そうだね。攻撃が当たる瞬間に分離されちゃ確かにオレの方が不利だ。でも、もし、当たる瞬間に分離できなければどうなるのかな?」
「そんなことできるわけがない」
「それができちゃうんだよこんな風に」
オレは指を鳴らし、吸妖の周りに空気の層を集める。その瞬間、吸妖は身動きが取れなくなる。
「きさま、空気を操りワシが避けれないようにしたな」
「正解。それじゃあ、そろそろ終わりにしようか」
オレは吸妖に手を向けて握りつぶした。
「やめろ。やめてくれええええ」
その瞬間、吸妖はだんだんと丸くなり圧縮されていく。
「まあ、ここまで分裂することはないでしょ。それじゃ、ばいばい」
そう言って、オレは吸妖を一刀両断する。
「命が。ワシの命が無くなって逝く」
「滅」
後ろからそんなつぶやきが聞こえてきたが、オレは止めとばかりにさらに圧縮させた。
「ぎゃああああああ」
その瞬間、丸く圧縮された吸妖は爆発し、跡形もなく消えてしまった。
「・・・・・さて、時間がかかっちゃたし急ぐかな」
楓太は急いでこの場から去った。
強欲の部屋
勝者 楓太 29分29秒