好きで脅しているわけじゃないんだが
最近思うんだが。
「おい、こいつが紅沙花か」
「ああ、間違いねえ」
絡まれることが多くなった。
現に今も、乃亜を待っていたら二人の不良が俺に敵対心を抱きながら目の前で立ちはだかってきた。
「蒼髪に誰もが恐れる鋭い目。間違いないだろう」
「んじゃあ、こいつを倒してしまえばいいんだろ?」
何故だろう?俺は特にこれといった目立った行動はしていないはずなのに次から次へと出てくる。
「ああ、そうだ。それじゃあ、恨みは無いが俺達の為に倒れてくれ!」
「そんじゃあな!」
2人の不良は一斉に襲いかかって来た。
本当になんでだろう?
・・・・・五分後。
「レン、お待たせ」
乃亜がやっと来た。
「そんじゃあ、行くか」
「うん」
俺は体をほぐしなら歩きだす。その足元にはさっきの不良達がボロ雑巾のように倒れていた。
「という、ことが合ったんだけど我が親友はどう思う?」
「どう思うって言われてもね」
次の日の昼休み、俺と大地は一緒に屋上で、購買で買ったパンを食べていた。
なぜか、その場には乃亜がいない。真衣はクラスの友達と一緒に食べると言っていた。大地可哀想に。
「もともと、レン君は中学の頃からケンカばっかりしていたから、どうと言われても僕が困るよ」
「まあ、それを言われたら何も言えないが。でもな、ここに入学して。まだ2週間経つか経たないかくらいだけど。まだ、俺はそんな目立ったことはしてないぞ」
「いや、目立ったことはしなくてもいいから」
あ、そうなの?
「でも、そう考えれば変だよね。レン君の場合、目立った行動をしてから絡まれていく筈なのに。さすがに早すぎるよ。何か思い当たる原因とかはないの?」
「原因ね~」
俺はパンを口に含みながら考えた。
始めに絡まれたのは確か。
「Aを倒した頃から、だんだんと絡まれ始めたな」
「Aって確か、佐々木さんのことだよね。じゃあ、その人に聞けばいいんじゃないの?」
「無理無理。今あの人全治半年で病院に入院中」
やった本人が言うのもなんだか、あれはやり過ぎたな。
「そっか、それじゃあ他には?」
「他か」
俺、考えんの苦手なんだよな。
「ここにいましたか。探すのに苦労しましたよ。紅沙花君」
そしたら、扉の音と共に眼鏡をした優しそうな青年が現れた。
「あんたは?」
もしかして、またあのパターンか?
「僕は一年の鱸と言います」
「ふ~ん、それでその鱸が俺に何の用?」
鱸ねえ、もうこいつは眼鏡でいいだろう。
「要件は単純ですよ。僕に倒されてください」
眼鏡はそう言って、拳を構えた。
やっぱり。また、俺を倒しにきた奴か。
「まあ、こっちにすりゃあ好都合だな」
俺はゆっくり立ち上がり、最後のパンの一かけらを飲み込んだ。
「だね。これで、原因がわかるみたいだよ」
大地はおもむろに楽しんでいた。
「何を言っているかは解りませんがいきますよ」
眼鏡はそう言って俺に襲いかかって来た。
・・・・・勝負はすぐに着いた。
「それで、なんで俺に襲いかかってくるんだ?」
勝敗はもちろん俺の圧勝で、今はメガネを正座させ尋問中である。
「そ、それは言えない」
メガネは俺から顔を逸らした。
なんか、癪に障るな。だんだんとムカついてきた。
「人と話す時は、人の目を見ろって教えられなかったか?」
相手の両頬を鷲掴みに無理やりこっちを見させた。もう、これじゃあ、どっちが悪者かわからない。・・・・・いや、十中八九、俺が悪者になるだろう。
「い、いひゃい、や、やみぇてくれ」
メガネは涙目になってきた。たぶん、今、メガネの心の中では俺に絡んだことを後悔しているのだろう。
「駄目だよ。レン君。それだと逆にレン君が悪者になっちゃうよ」
大地が笑いを堪えながら俺の行為を止めてきた。
「ちっ、大地。後は任せた」
俺だと、こうゆう聞き込みだと逆に相手を怯えさせてしまう。だから、いつもこうゆう役目は大地に任せる。大地だと、誰もが怯えず逆に話しやすいからである。・・・・・なんか虚しくなってきたな。
「うん。わかったよ。でも、その代わり」
「わかってる。いつものだろ」
俺はそう言って後ろに下がり座った。
「ありがとう。それじゃあ、快く引き受けよう」
大地は俺と入れ替わり、メガネに話しかけた。
「鱸君だっけ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど。いいかな?」
「な、なんだよ?」
メガネは大地を怪訝そうに見ていた。
「なんでレン君に絡んできたのか教えてほしいんだ」
「い、言えない」
メガネはまたもや顔をそらす。
「そう、なら質問を変えよう。君はここ一週間で面白い噂を聞かなかった?」
「面白い噂だと?その噂ってどんな噂だよ」
「そうだね。例えば先輩が後輩に負けたとか、強い人を倒せば注目できるとか、後そうだな、この学園一の美少女の好きな人とかね」
メガネがそれを聞いて一瞬だけ、震えだした。
「し、知らない。僕はそんな噂なんて知らない」
メガネが動揺しているのは明らかだった。
「だから、例え話だってば。本気にしないでよ。所で、僕達の友達に透咲乃亜っていう人がいるんだけど、君は知っているかな?」
「当たり前だ。透咲乃亜はこの学園で一番の美少女だからな」
メガネがそれを聞いた瞬間、大地はにっこりと微笑んだ。
「じゃあ、乃亜さんが好きな人はわかる?」
「そんなの、そこの紅沙花蓮斗だろ。透咲さんが言っていたんだから間違いない」
「へえー、そうなんだ」
「でもそれは、透咲さんは仕方がなく言っているんだよ」
メガネは興奮してきたせいか、口数が増えてきた。
「どうせ、紅沙花が無理やり自分の彼女になれとか言って暴力を振って脅したに違いない。だから、僕は透咲さんを助けようと紅沙花を倒すのに立ち上がったんだ。他の奴らだってそうだよ。紅沙花を倒せば透咲さんが自由の身になり、自分の彼女にできると思っているんだから」
それで俺に絡んできたのか。なるほどな。
「って、言ってるけど、どうする?」
「んー、どうしよっか?」
俺は立ち上がりメガネを見下ろした。
「あ、いや、今の話は冗談で」
メガネはそこでようやく自分した過ちに気がつき焦りだした。
「冗談で?」
「本当は、紅沙花を倒せば自分の名が広まるし、透咲さんという彼女もできるって周りのみんなが話していたからって、あ、やばい」
メガネはまた自分の過ちに気がついた。しかし、もう遅い。
「どっちにしろ、性質が悪い」
本人にしてみればただの迷惑にならない。
「それで、鱸君はその話を聞いて、名声と彼女が欲しいままにレン君に絡んで来たということになるのかな?」
「ああ。そうだ」
メガネはもう開き直っているようだ。
「んじゃあ、鱸君はもう昼休みが終わりそうだし行っていいよ」
「え、行っていいのか?」
メガネは驚きを隠せないようだ。
「レン君もそれでいいよね」
「勝手にしろ。ただし、次、絡んで来てみろ。容赦しねからな」
「だってさ、今度からは気を付けてね」
「あ、ありがとう」
メガネはそう言って、すぐに屋上からいなくなった。
「さて、原因もわかったことだし」
「わかったことだし?」
大地が期待しながら聞いてきた。
キーンコーンカーンコーン。
授業が始まる五分前の予鈴が鳴り響いた。
「・・・・・教室に戻るか」
「・・・・・そうだね」
俺と大地は屋上を後にし、教室に戻った。
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