仲間と仕事とある計画
ドッポーン
「ぷはっ」
俺はプールにから顔をだし、酸素を補給し、呼吸を整えた。
助かった。このホテルにプールが備え付けられていて。
俺はそう思いながらもさっさとプールから上がった。
「くそ」
俺は乃亜を奪われたことに失態を思い、自分に腹がたった。
「すぐに助けにいかないと」
そして、ろくに乾いてない服を着ながらさっさとホテルの入り口に向かった。
「よお、蓮斗」
俺がホテルに突撃をしようとした瞬間、後ろから声をかけられた。俺が振り向くと、龍次を始め、スバル、楓太、夢と何故か海と花純が並んで立っていた。
「なんでここにいるんだよ?」
「どっかの誰かさんが、念の為、お前を助けに行ってほしいと連絡があったんだ」
龍次が説明をしてくれた。そして、俺はすぐにその人物がわかった。
大地だな。本当に、あいつは俺より一枚も二枚も上手だな。
「んで、俺達がここに集まったとたん、お前が上の方から落ちてきた訳」
「それで、蓮斗。俺達は何をすればいいんだ?」
海は面白そうな笑みを浮かべながら聞いてきた。
「そんなの決まっているだろう。乃亜を助けるのを手伝って欲しい。でも、無理意地はしない。今回の奴らはあの煉獄館が相手だ。前回のキメラ達よりも性質が悪い。俺と一緒に来てくれる奴らだけでいい」
「さて、みんな。この馬鹿はこう言っているけどどうする?」
龍次がみんなに聞いた。
「私は元から、乃亜様を助ける為にここに来ましたから。当然、ついていきます」
そう言って、夢が俺の隣に並んだ。
「蓮斗様。これに着替えてください。その濡れた服だと動きにくいでしょう」
そして、その後、俺に新しい服をも渡してくれた。
「ありがとう。夢」
俺は夢にお礼を言うと、目にも止まらぬ速さで着替えた。
「それで、他のみんなはどうする?」
「乃亜ちゃんはあたしの友達だから当然助けに行くよ」
そして、今度はスバルが夢の隣に並ぶ。
「蓮斗。これが終わったら、お前の作った料理を食べさせてくれ」
「久々に蓮斗と暴れられるなら、俺はどこにでも行くぞ」
「貸し一つ」
それから、楓太、海、花純が俺の横に並ぶ。
「龍次はどうする?」
俺は最後に残った。龍次に聞いた。
「そうだな、これが終わったら。また、生徒会を手伝ってもらうかな」
「それぐらい、お安い御用だ」
俺と龍次はハイタッチをし、笑い合った。
「さて、それじゃあ、行くか」
そして、俺達、七人はホテルの中に入って行った。
「でわ、改めて挨拶をさせていただきます。私は藍然豊と申します。以後、お見知り置きを」
豊はそう言って、ボクに自己紹介をしてきた。ボクは今、ホテルの最上階で豊と向かい合っている。
「そう睨まないでくださいよ。せっかくかわいい顔が台無しですよ。ほら、笑顔になってください」
「ボクの笑顔はレンだけの物だから無理」
「ははは、嫌われちゃいましたね」
豊はそう言って、立ち上がり冷蔵庫からワインを取りだし、グラスに注いだ。
「飲みますか?」
「いらない」
「つれませんね。せっかく将来の夫がこうやって誘っているのに」
豊は苦笑いをしながら、ワインを飲み始めた。
「だれか、将来の夫よ。ボクの将来の夫はレンだけだ。そんなことよりも、何故こんなことをしたのか説明してよ」
ボクは強気に言っているけど、本当は怖かった。レンとも離れ離れになり、見ず知らずの男と二人っっきりなのでいつ襲われてもおかしく無かったから。
「いいですよ。そうですね。まず、あなたの力について説明しましょう」
そう言って豊は机を挟んでまたボクの間っ正面に座った。
「ボクの力?」
「ええ、そうです。乃亜さんは精神干渉ってしますか?」
「えっと、他人の精神を自分の思うがままにすること?」
「ええ、まあ、簡単に言えばそうですね。それで、その精神干渉を使う能力者もいるってことはご存じですか?」
「それがボクって言うの?」
「理解が早くて助かります」
どうやら、この人はボクがその精神干渉を使えると思っているらしい。
「ボクにそんな力があるわけないでしょ」
「いえ、ありますよ。現にあなたは幼初期の頃にそれを使って他人と話をしているじゃないですか」
「でも、今はそれも使えないよ」
「使えないんではなく、使い方を知らないだけです。だから、私が教えてさしあげましょう」
ボクは嫌な予感がしたのですぐにこの場から逃げだした。
「逃がしませんよ」
そしたら、いつの間にか、豊がボクの前に立っていた。
「それではやりましょうか」
豊がボクの顔面に手を覆いかぶせた瞬間、ボクの意識はなくなった。
乃亜が意識をなくすとそのまま、豊に寄りかかった。
「ふう、これで準備は完了だな」
豊は乃亜を抱きそのままベッドに寝かせた。
「旦那。あんたも酷いですね」
そしたら、小さい女の子が後ろから話しかけてきた。
「酷い?なんのことだ、私は目的の為に行動しているだけだぞ」
「いやいや、それでも酷いですって。わざわざ、このお譲ちゃんの能力を発動させる為に何もかも壊させようとしているんだから」
「わかっているんなら、さっさとやりなさい」
「わかっていますって、貰った分の仕事はきちんとやります」
「なら、早く」
「・・・・・旦那もせっかちですね」
そして、女の子は乃亜の頭に触れ、何かをやり始めた。
「ところで、旦那」
「なんだい?」
「さきほど、連絡がありまして、先ほどの彼が仲間を引き連れてやってきたみたいですよ」
「やっぱり、来ましたか。この子を取り返しに」
「壊してもかまいませんよね?まあ、壊すなって言われてもうちの会社の連中には無理な話ですがね」
「ええ、もちろん。あ、でも、紅沙花さんだけは生け捕りでお願いします。他の者たちは壊してもかまいませんから」
「さすが、旦那そうこなくちゃ。あ、でも、生け捕りはできるかどうかわからないですよ。なんせ、こちらは全員殺人集団なんですから」
少女はどこか面白みを含んだ笑みを浮かべていた。
ボクは何もない空間の中を漂っていた。
いつから、ここにいるのかはわからない。
気が付いた時にはここに逃げていた。
自分が何者かさえわからず。
自分がどっからきたのにかもわからず。
ただ、覚えているのがある少年のことだけ。
名前がわからないが一番大切な人。
会いたい。
もう一度でいいから、その少年に会いたい。
でも、会えないだろう。
だって、ボクはここから出ることが出来ないんだから。
いや、違う。
出てしまえば、何者かによってボクが壊されてしまうから
ボクはその少年の面影といっしょにこの空間に逃げてきた。
だから今は待とう。少年が助けに来てくれるのを。
この空間で漂いながらいつまでも。
「旦那。終わりましたよ」
少女は自分の額を拭きながら豊に言った。
「首尾はどうですか?」
「すみませんね。最後らへんで、紅沙花蓮斗の面影と一緒に意識の奥底に逃げられました。でも、ゆうことを聞かせる分に何も問題はありませんよ」
「そうですか。ありがとうございます。後は仕上げだけですね」
「本当にやるんですか?」
「ええ、もちろん。これをやらないと計画は成功しませんからね」
「本当に旦那は恐ろしい方ですね」
「そうですか?」
「そうですよ。なんたってこのお譲ちゃんに愛している人を殺させるんですから恐ろしい人ですよ」
「褒め言葉として受取っておきましょう」
「それじゃ、うちは仕事も終わりましたしたし。帰りますよ」
「おや、あなたは参加しないんですか?」
「うちは頭脳屋なんで、後は全部、戦闘馬鹿共にまかせます。それじゃあ、お疲れさまでした」
そう言って少女は部屋から消えて行った。
「やれやれ、勝手な奴だ。でも、まあ、仕事をしてくれたからいいことにしましょう」
豊はそう言って乃亜の隣に腰かけた。
「もうすぐだ、もうすぐで私の夢の第一歩になる」
豊はそう言って、乃亜の髪をいじりながら怪しい笑みを浮かべていた。