新生徒会長 登場
夕日の光が窓から入ってくる教室で、あるメガネをした女子生徒が書類に目を通していた。
「ふむ、これはやばいな。そく手を打たねばならない」
書類には他校からの被害届と書かれていた。
「でも、誰がいいだろう?護衛科の連中を使うもいいが。それはそれでなんだか信頼できなさそうだし。魔法科の連中は勉強で忙しいと断られるだろうな。なら、体育科は?いや、未来ある選手達に怪我をさせてはいけないしな。ましてや、特殊科、普通科、嬢育科、従育科は確実に論外。ふむ、どうしよう」
「失礼しますわ」
女子生徒が考え事をしていると、水姫とやたら分厚いファイルを何冊も重ねて持っている龍次が部屋に入ってきた。
「頼まれた資料を持ってきましたわ」
「お、ちょうどいい所に来てくれた。龍次、ファイルはそこらへんの適当な机に置いていてくれ」
女子生徒はとても嬉しそうな顔をしながら、龍次に指示をだす。
「はいよ」
龍次はただ黙って従った。
「どうしましたか?」
水姫は不思議そうに女子生徒に話しかけた。
「実はちょっと困っている案件があるんだよ」
女子生徒はそう言って、水姫に先ほど見ていた書類を手渡した。
「これは、ちょっとひどいですわね」
「だろ?私的にそろそろそれを解決し、別の仕事をやりたいんだ」
「護衛科などに頼めばいいじゃないですか?」
水姫はその書類を龍次に渡す。
「そうなんだけど、私は護衛科をあまり信頼していないんだよね」
「ただ、単に男嫌いなだけでしょ」
「別に男が嫌いなわけではないよ。ただ、私より弱いつうのが納得いかないだけだ。あ、別に龍次が私より弱いって言ってないよ」
「俺はそう言われてもあんまり気にしないよ」
龍次は呆れながら書類に目を通している。
「話がずれたね。とりあえず、さっきも言ったけど、私はそろそろ新しい仕事をやりたいんだ。だから、誰でもいいから、私が信頼できそうな奴紹介してくれないか?」
女子生徒はメガネを上げながら水姫を見た。
「そうですわね。龍次、あなただったらどうしますか?」
「何故俺に聞く?」
「私よりあなたの方がこうゆうのは向いているでしょ?」
「それもそうか、でも、俺が信頼するつったら一人ぐらいしかいないぞ」
「ほう、お前が信頼を置く人物がいるとは初耳だな。それで、誰なんだい?」
女子生徒は興味深々な顔をしながら聞いた。
「そいつの名は紅沙花蓮斗。俺が信頼を置く奴で、もっとも敵に回したくない人物だ」
それを聞いたのは、昼休みの放送だった。
『えー、えー、マイク、テスト。テスト。ふむ、良いみたいだな。私は生徒会長の坂神紫苑だ。今日の放課後、今呼ばれた生徒は生徒会室に来てくれ』
俺達は林間学校も終わり、久々の学校で昼食を食べていた。
「また、アッちゃんが呼ばれたりしてね」
「まさか、それはないと思うよ」
「わかりませんよ。また前回みたいに告白するかもしれませんし」
今の会話の順番は真衣、乃亜、大地の順番、ちなみに俺は乃亜の太股を枕にしてお昼寝中。
「しかし、相変わらず。蓮斗って、よく寝るよね」
「それほど、ボクの太股が気持ちいいんでしょ」
「いや、それは無いと思うよ」
「2人供静かに放送が聞こえません」
大地は2人に注意して、放送に耳を傾けた。
『では、発表する。一年G組 紅沙花蓮斗、透咲乃亜、円堂大地、月魅真衣。もう一度繰り返す。一年G組 紅沙花蓮斗、透咲乃亜、円堂大地、月魅真衣。今、呼ばれた物は今日の放課後必生徒会室に来るように』
「呼ばれたね」
「呼ばれましたね」
乃亜と大地は平然としていた。
「え、なんで呼ばれてそんなに平然としてられるの?」
逆に真衣は何故自分が呼ばれたのか驚いていた。
「面倒だしレンと一緒に逃げようかな?」
『なお、来なかった場合はそうとうの罰を与えるので必ず来てくれ』
乃亜がそんなことを考えていると、先に釘を刺された。
「アッちゃん。行くしかないみたいだね」
「だね」
乃亜はがっかりしていた。
「んで、なんで呼ばれたんだ?」
「それはまだわからない」
「くそ、せっかく、蓮斗と買い物に行く予定だったのに。邪魔して許さない」
「アッちゃんとりあえず今出している殺気を消そうか。怖いから」
俺達は放課後、言われたとおりに生徒会室前まで来ていた。
「とりあえず、入ろうか」
俺は扉をノックした。
「どうぞ」
「失礼します」
俺達は扉を開け、中に入った。
中にはメガネをかけた女子生徒と何故か水姫と龍次がいた。
「ようこそ。生徒会室へ。私は生徒会長の坂神紫苑だ。以後よろしく。君たちを呼んだのは彼らに君たちのことを紹介してもらったからだよ」
シオンは簡単に挨拶し、何故、俺達か教えてくれた。
おし、後で龍次を殴ろう。
「あれ?生徒会長って四月頃にアッちゃんに告白してきた優男じゃなかったっけ?」
そういえば、そんな奴いたな。
「ああ、あいつは公私混同をしたから止めてもらったよ。告白したいんなら、私達を巻き込まないでほしいよな。しかも、自分の力量を認めてから挑んでほしいもんだ。だいたい、あいつはいつもそうだ。自分はかっこよくて頭がいいと思っていて、自分は確実にもてると思っている節がある。まったく、迷惑極まりない。なあ、君達もそう思うだろ」
シオンは不機嫌そうに俺達に同意を求めてきた。
「シオン。いいからさっさと彼らを読んだ理由を話してください」
水姫はどこか呆れながらシオンを促した。
「お、そういえばそうだったな。すまない。私はどうも段々と別の方向に話が進んでいく傾向があるみたいだ。ところで、前から思っていたけど円堂君って本当に男性なのか私から見てみればどうも女の子にしか見えないんだが?」
また、この人。話がそれ始めてるよ。
「シオン!」
とうとう、水姫がイラつき始めた。
「ああ、すまん。またやってしまった。それで、なんだ君達を読んだ理由は他でもない。ちょっと頼まれて欲しい仕事があるんだか。引き受けてくれないか?」
「それって、どんな仕事なんですか?」
大地が理由を聞きだした。
「何、簡単なことだ。これを見てくれ」
そう言って、シオンは一枚の書類を机の上に取り出した。
「失礼します」
大地はそれを受け取り、書類の内容を確認した。俺達も後ろからそれを確認する。
「え~と何々。風華学園他校被害報告書?なんですか、これ?」
「その書類に書かれている通りだよ。ここ最近、まあ六月に入った頃からだな。風華の生徒が他校の生徒に対し、暴力行為を働いていると報告が来ている。今の所でも100件、いくかいかないかだな」
「なるほど。用件はこういうことですね。早くどうにかしないと、学園のメンツに関わってくるから。僕達がその他校に被害を及ぼしている生徒を見つけ出し、懲らしめてほしいんですね」
「理解が早くて助かるよ。それで、頼まれてくれるかな?」
「それはレン君が決めることなので、僕からはどうにも言えません」
大地はそう言って俺の方を見てきた。
「紅沙花蓮斗君。君はどうなんだい?」
「俺か?んー、そうだな「駄目だよ」乃亜。だから、勝手に人のセリフの上に自分のセリフを「レンは黙っていて」はい」
俺は乃亜に命令されて黙るしかなかった。
「透咲さん、何故断るんだい?」
シオンはメガネの奥の瞳から乃亜を覗いてくる。
「それは何故、ボク達がそのようなことをしなければいけないのかですよ。この学園には護衛科というものがあります。それに風紀委員会も。その人達に頼めばボク達は必要ないと思ったからです」
へー、乃亜にしてはいいこと言うな。
「本心は?」
「レンといちゃつく時間が無くなっちゃう」
・・・・・褒めた俺が馬鹿だった。
「透咲さん。私は何もただでやってくれとは言ってないよ」
「どういうこと?」
「もし、この仕事を無事解決してくれたあかつきには」
「あかつきには?」
「紅沙花蓮斗君を君専用の護衛にしてもいい」
「え?レンは元々、ボク専用の護衛でしょ?」
乃亜は不思議そうにしていた。
「あ、やっぱり勘違いしているみだいな。龍次説明してくれ」
「へいへい、えっとだな。つまり、今、一年の護衛科は訓練期間にあたるんだ。だから、まだ専用とかはないんだよ。蓮斗が乃亜を護衛しているのはパートナーカードを交換しただけであって、まだきちんとした主人と従者って関係になっていないんだ」
「じゃあ、どうなればレンと主従関係を結べるの?」
「二年になり、主側が指名をすればいいんだよ。ただ、これは早い者勝ちだから護衛側は拒否ができない。そして、護衛になったら学校にいる間は主にずっと付きっきりだ」
「早い者勝ちで拒否権なしか。それじゃあ、レン君も乃亜さん以外の護衛に付くかもしれないってことですね。また、その逆も然り」
「まあそうなるな」
「え、嫌だよ。ボク以外を護衛しているレンを見るのは。もし、そんな光景をみたら、その人を殺すかもしれないよ」
なに、殺人宣言しているんだよ?
「だから、今回のお礼だよ」
シオンは話を継いだ。
「実はこの決まりにも予約制があってね。生徒会長を通し、護衛科の先生に言えば。二年になった途端、その人をすぐ自分の護衛にすることができるんだよ。まあ、このことを知っているのはごくわずかだけどね」
「そんなことができるんですか?」
「現に水姫はこの方法をやって龍次を護衛にしたんだからね」
「え?そうなのか」
どうやら、龍次は初耳だったらしい。
「シオン!今はそんなこと関係ありませんよ!!」
水姫は顔を赤くしていた。
「まあ、そういうことだ。それで、本題に戻るがこの仕事を受けてくれるかい。言っとくけど、今の方法を取りたいなら生徒会長に信頼を持たせた方がいいと思うよ」
うわ、この人交渉上手だわ。
「わかったよ」
「交渉成立だな」
「でも、もし、レンをボク専用護衛にしなかった場合はわかっているよね?」
乃亜から禍々しいものがでている。
「ああ、自分の命が危ないのがよくわかるよ」
シオンはこの時、必ず約束を守ろうと思った。
「さて、それじゃあ、本題に入ろうか。実の所、犯人はわかっている。紅沙花蓮斗君にはそいつらを懲らしめてほしい」
「はあ、わかりましたよ」
面倒だけど仕方がない。
こうして、俺達の予定が決まった。