林間学校だよ、全員集合 No,4
二日目の夜。
「という話を、甲から聞きました」
ボクはベッドの上で蓮斗からの報告を聞いていた。
「そうなんだ。だから、桜ちゃんは、自分は甲から離れないのとか言っていたんだ」
「まあ、そうなるな。まあ、とりあえず甲にはあまり気にするなと言っておいたけど、あとは2人の問題だな」
「だね。ありがとう、レン。変なことをやらせちゃって」
「あまり気にしないよ。それじゃあ、俺は風呂に入ってくるから」
ちなみに楓太と大地は先に行っている。
「あ、明日は帰るんだから荷物はまとめておけよ」
「うん。わかった」
蓮斗は風呂道具を持って、部屋から出て行った。ボクはその背中を見ながら見送った。
・・・・・そろそろ、お風呂も一緒に入ろうかな?
本当は一時も蓮斗と離れたくない。でも、それだと蓮斗を困らせてしまうので我慢をしなければいけない。でも、一緒にいられれる時、できるだけ離れたくない。
「アッちゃん!」
「きゃあっ!」
そんなことを考えていたらいきなり真衣に抱きつけられた。
「な~に、寂しそうな顔をしているのかな?」
「な、何のことかな?」
「しらばくれちゃ駄目だよ。蓮斗が出て行く時、寂しそうにあいつの背中を見ていたくせに」
さ、さすがボクの親友だけはある。すぐにボクが寂しそうのに気が付いた。
「白状します。蓮斗が出て行く時、少し寂しかったです」
「もう、本当にアッちゃんはレンの事が好きね」
「うん。大好き。この世で一番愛している」
「あはは、そこまで言うんだ。ねえ、前から思っていたけど。なんでアッちゃんは蓮斗のことが好きになったの?」
真衣はボクに離れながら聞いてきた。
「あ、それ、あたしも聞きたい」
漫画を読んでいたスバルも興味深々で会話に入ってきた。
「え、何知りたいの?」
「「知りたい!!」」
真衣とスバルは声を合わせて言ってきた。
「じ、じゃあ、教えてあげる。そうだね。あれはまだボクとレンが幼稚園のころだったな」
ボクは照れながら話し始めた。
ボクは幼稚園に行くのが嫌だった。
行ったら行ったで、周りの男の子がボクを苛めてくるし、女の子はボクのこの髪のせいか誰も近づいてはこなかった。親にこのことは言っていない、親は仕事で忙しいから、あんまり迷惑をかけたくない。だから、ボクは嫌だけど毎日幼稚園に通っていた。
早くお休みにならないかな?
そんな、ボクにも楽しみが出来た。毎週土日になると紅沙花蓮斗という男の子が遊びに来るからである。
ボクの初めての友達で、初めてボクの能力を怖がんなかった人物だ。
今週は何を話そうかな?
ボクはそんなことを考えた。
「はーい。みんな、今日はみんなにいいニュースがあるから集まって」
ボクのクラスの担当の先生が周りに言った。
周りの人達はその指示に従い、先生の周りに集まった。ボクもその集団から少し離れて近づいた。
「先生。いいニュースって何?」
一人の生徒が聞いた。
「実は今日、このクラスに転入生がきます」
「それって、男の子?女の子?」
「男の子です。みなさん仲良くしてね」
「「「「「はーい」」」」」
生徒達は元気に返事した。
「それじゃあ、入ってきて」
先生の指示通りに部屋に一人の男の子が入ってきた。
ボクはその男の子を見て、驚いた。だって、その男の子は
「紅沙花蓮斗です。よろしく。お願いします」
ボクの初めてのお友達、紅沙花蓮斗だった。
「じゃあ、みんな。紅沙花君と遊んであげてね」
「「「「「はーい」」」」」
みんなは元気に返事をし、すぐに蓮斗に近づいた。
「なあ、どこから来たんだ?」
「誕生日は?」
「何が好きなの?」
みんなはそれぞれ蓮斗に質問していく。
ボクも蓮斗に近づきたかったがみんなに近づくのが嫌だったので遠くから、それを眺めていた。
ボクもレンと話したいな。
そんなことを思っていると蓮斗と目が合った。そしたら、蓮斗はとても嬉しそうに笑った。
「ノンちゃん!」
そしたら、蓮斗が人ごみを分けてボクに近づいてきた。
「驚いた?」
「う、うん。驚いた」
ボクは周りに注目されて気まずいと思いながら頷いた。
「なあ、紅沙花」
そしたら、いつもボクを苛めてくる男子のリーダー的存在の少年が話しかけてきた。
「何?」
「そいつに近づかない方がいいぞ」
「なんで?」
「病原菌がうつるからだ」
少年は楽しそうに言ってくる。
それを聞いてその後ろにいる少年たちも楽しそうに微笑んでいる。
何を適当なことを言っているんだ?こいつは?
「のんちゃんの病原菌がうつるの?」
「そうだよ。話しかけたり触ったりするとうつるんだぞ」
「のんちゃんのならいいよ。うつっても」
「え?」
蓮斗はそう言ってボクに抱きついた。
「えっ?えっ?」
ボクは何が起こったのか解らなかった。
何?何が起こっているの?なんで、レンがボクに抱きついているの?
「おい、紅沙花に乃亜菌がうつったぞ」
少年は大きな声で言った。
「うわー、きたねー」
「こっちにくんな」
「俺達にうつるぞ」
周りがそれを聞いて騒ぎ出す。
「レン。離れて。レンも一人になっちゃうよ」
「大丈夫。俺は一人にならないよ。なんだって、ノンちゃんがいるからね」
蓮斗は周りで騒いでいるのに気にしていないようだ。
なんでこの子はこんなに強いんだろ?
ボクは純粋にそう思った。
「ところで、相談なんだけど。あの子達に仕返しをしてみたくない?」
「仕返し?」
「そう、仕返し。ノンちゃんは悔しくないの、ああ言われて?」
「・・・・・悔しい。あいつらのせいでボクはいつも一人。本当は、みんなと遊びたいしお喋りしたい。あいつらも同じ目にあわせたい」
「わかった」
蓮斗は頷いた。
「おい、病原菌ども、早く俺達から離れろよ。俺達にもうつったら大変だ」
少年は楽しそうに言ってくる。
「そう、ならお前にもうつしてやるよ」
「え?」
「はい。タッチ」
いつの間にか、蓮斗は少年の顔に触れていた。
「これでお前も病原菌がうつったよね!?」
蓮斗はわざとらしく大きな声でいった。
「おい、太郎も病原気になったぞ」
「え、違」
「おい、近寄ってくんなよ病原菌」
「そうだよ。俺達にもうつっちゃうだろ」
少年は否定しようとしたが次々に今まで従えたきた者たちにひはんをうけた。
「こ、この紅沙花。よくも、俺に病原菌をうつしやがったな。おかげでみんな離れていっちゃたじゃないか」
少年は悔しそうに蓮斗を睨みつける。
「だから、何?病原菌同士仲良くしようと言うの?言っとくけど、俺やノンちゃんはお前と仲良くするきはないから、これから一人で過ごしてね。つか、俺達に近づくな」
「う、うるせえええええ!」
少年はとうとうキレて蓮斗に殴りかかってきた。
「レン。危ない!」
「暴力反対」
しかし、蓮斗はボクの心配とはよそに、それを簡単に避け、少年のでこを思いっきり指で弾いた。いわるゆ、デコピンだ。でも、ただのデコピンではなかった。
何故なら、レンが少年にデコピンをした瞬間、少年が少し離れた壁際まで飛ばされたからである。少年は何が起こったかわからずそのまま気絶した。
「「「「「・・・・・」」」」」
それを見ていた周りのみんなは驚き誰も喋らなかった。
「さて、次は誰?」
蓮斗はそう言って、一歩ずつ少年たちに近づいて行く。
「「「「「ひっ」」」」」
少年たちは恐怖を感じていた。逃げればいいのに、恐怖のあまりに足がすくみ動くことができなかった。
「お前?それともお前?」
蓮斗は楽しそうに一人一人の顔を覗きこんでくる。
少年たちは涙目になっている。
「怖い?」
少年たちは頷く。
「じゃあ、やめてあげようか?ただし、条件付きだけど」
「え、えっと、その条件って何?」
蓮斗の近くにいた少年が代表して聞いた。
「ノンちゃんを苛めない。俺とノンちゃんも仲間にいれる。ただ、それだけだよ。ああ、ちなみにこれを破った瞬間、お前達もあそこで寝転がっている奴みたいになるから覚えといてね。大丈夫、俺は苛めがないなら、力でねじ伏せることはしないから」
「わ、わかった。みんなもいいよね」
少年は頷き、周りに同意を求めた。周りも頷いている。
・・・・・え、てっ、ことは?
「乃亜ちゃん。ごめんね」
「私達、太郎君に脅されて」
「とにかく、ごめんなさい」
みんなが次々にボクに謝ってくる。
「え、えっと」
ボクは何を言っていいのがわからず、思わず蓮斗を見た。
蓮斗は楽しそうにこちらを見ていた。
ボクはそれを見て何故か安心してしまった。そして、ある言葉をボクは思いついた。
「あ、謝らなくていいから。えっと、そのボクと友達になって」
「うん。いいよ」
「私も友達になる」
「じゃあ、これから何して遊ぶ?」
「みんなで外で鬼ごっこしようぜ」
「じゃあ、中庭に行こう」
そういって、みんなして先に中庭に向かった。
「ほら、ノンちゃんも行こう」
蓮斗はボクの側によって手を差し出してきた。
「うん」
ありがとう。レン。ボクに友達を作ってくれて。
ボクはそう思いながら蓮斗の手を掴み一緒に歩き出した。
「まあ、それがレンを好きになるようになったきっかけかな?」
まあ、本当は出会ったときから惹かれていたんでけどね。
「好きになったのはわかったけど、蓮斗って幼稚園の頃から凶暴だったんだね」
「しかも、同い年の子供達を脅しているし」
ボクが話終わると真衣とスバルは呆れていた。
「でも、そのおかげでボクの苛めがなくなったんだから、ボクは嬉しかったよ」
まあ、友達はレンだけで十分だったんだけどね。
「しかし、あの大河が幼稚園の頃は純粋だったなんて信じられない」
「強かったのは相変わらずみたいだけどね」
「そうなんだよ。幼稚園の頃は毎朝、ボクを抱きしめてくれたのに、今じゃあ、恥ずかしいとか言っちゃって逃げちゃうし」
どこで間違えちゃったかな?
「そりゃあ、人前でいちゃつくのは蓮斗も恥ずかしいんでしょ」
「ボクは気にしないのに」
「いや、少しは気にしてよ」
スバルがツッコミを入れてきた。
「無駄よ。スバル。アッちゃんにそれを言っても意味がない」
「さすが、真衣ちゃんよくわかっていらっしゃる」
「いや、褒められても嬉しくないし」
真衣は呆れていた。
「あ~、いい風呂だった」
「風呂上がりにはやっぱりコーヒー牛乳だね」
「いや、フルーツ牛乳でしょ」
「俺的には普通の牛乳がいいな」
そうしたら、蓮斗達が牛乳瓶を持ちながら部屋に戻ってきた。
「レン!!」
ボクはすぐに蓮斗に抱きついた。
あ~、落ち着く。それにお風呂上がりだからいい匂いする。
「どうした。いきなり?」
蓮斗は不思議ながらボクを見下ろしてくる。
「寂しかったの」
ボクは甘えるように蓮斗を見る。
たぶん大抵の男子ならこれを見たとたんに顔を赤くするだろう。
まあ、レンの前以外にこの顔をする気はないけどね。
「あっそ、つか離れろ、歩きにくい」
しかし、蓮斗は気にしない様子で部屋の奥にどんどん進んでくる。
やっぱり、レンに甘えながら見ても通じないか。
「嫌だ。レンエネルギー充電中なの!」
ボクは蓮斗に引きずられながら必死にしがみついた。
「はあ~、たく」
蓮斗は呆れながらさっさと風呂道具を片付けて、ボクが使っているベットに腰かけた。
「ほらこれで、抱きつきやすいだろ」
「ありがとう。蓮斗」
ボクはすぐに蓮斗の首に手を回し、蓮斗の太股に乗った。
「ねえねえ、真衣さん」
「なんでしょうか?スバルさん」
「あれっていちゃついていますよね」
「スバル、気にしたら負けだよ」
「そんなものなの?」
「そんなもんよ」
真衣とスバルは妙に何かを納得していた。
ボクはそんなことを気にしないで、蓮斗の温もりを感じていた。
レン、ボクはレンが好き。だから、これからもボクの側にいてちょうだいね。
そういえば、明日、帰るんだよね。さっそく、あれでもやってみるかな?